霜月このは

百合小説を書いて、百合ソングを作曲&歌っています。たまにイラストとか漫画とかも。

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【三角関係百合】ひとり見上げる虹の色は(2−2)

 その人に初めて出会ったのは、深青の出演するライブイベントでのことだった。  その日深青と一緒に演奏をしていた、惟さんというギタリストの女性だった。 「初めまして。惟です」  小さなライブバーのカウンターに座り、ボンベイサファイアの青いボトルを開けて。ただタバコを吸っているだけでも、なんとなく絵になるミュージシャン。痩せ型で背が高くて、ボーイッシュなショートカットが似合う、見るからに女の子からモテそうな人だ。  簡単な挨拶と世間話を交わしたあとで、私は彼女の演奏を聴い

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    • 【三角関係百合】ひとり見上げる虹の色は(2−1)

       深夜のアパートで、電子ピアノにヘッドホンをつないで。私は密かに恋の歌をうたう。 『恋人になれなくてもいい、親友でいられるなら』  そのフレーズは、学生時代の友人への片想いのエピソードを思い出して、自然と出てきたフレーズだった。  今からもう10年以上前の大学生の頃、私は1人の女性に恋をした。

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      • 【三角関係百合】ひとり見上げる虹の色は(1−5)

         それでも懲りずに、わたしは葉瑠さんのライブに行った。相変わらずわたしは、葉瑠さんの小説のファンだったし、葉瑠さんの演奏が好きだったから。  葉瑠さんだけじゃなくて、惟さんのライブにも時々顔を出すことにした。なんとなく葉瑠さんがいるんじゃないかと思って行くと、案の定、彼女はそこにいて。  なんだか悔しいから、葉瑠さんになかなか気づかなかったフリをしたこともあった。ああ、わたしは本当に素直じゃない。  そして2人のライブに何度か通ううちに、結局わたしは確信を得ることになっ

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        • 推しに出禁にされて自殺未遂をした女の話

          推し活の記事が話題だからって便乗して書いておく。 ちょうど3ヶ月経つから記念に、覚書の意味も込めて。 ここから記すのは、推し兼片思い相手にライブを出禁にされ、それを苦に自殺未遂をした女の物語である。 笑い話と思って聞いてほしい。だけど、決して誰も私のような過ちを繰り返さないように、願っている。 概要2024年1月10日早朝3時頃、私は過量服薬による自殺未遂をおこなった。 飲んだ薬などの詳細は伏せるが、元々精神科で処方されていた薬の一日分の40倍ほどの量を一気に服用した。

        【三角関係百合】ひとり見上げる虹の色は(2−2)

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          【三角関係百合】ひとり見上げる虹の色は(2−2)

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           その人に初めて出会ったのは、深青の出演するライブイベントでのことだった。  その日深青と一緒に演奏をしていた、惟さんというギタリストの女性だった。 「初めまして。惟です」  小さなライブバーのカウンターに座り、ボンベイサファイアの青いボトルを開けて。ただタバコを吸っているだけでも、なんとなく絵になるミュージシャン。痩せ型で背が高くて、ボーイッシュなショートカットが似合う、見るからに女の子からモテそうな人だ。  簡単な挨拶と世間話を交わしたあとで、私は彼女の演奏を聴い

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          【三角関係百合】ひとり見上げる虹の色は(2−2)

          【三角関係百合】ひとり見上げる虹の色は(2−1)

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           深夜のアパートで、電子ピアノにヘッドホンをつないで。私は密かに恋の歌をうたう。 『恋人になれなくてもいい、親友でいられるなら』  そのフレーズは、学生時代の友人への片想いのエピソードを思い出して、自然と出てきたフレーズだった。  今からもう10年以上前の大学生の頃、私は1人の女性に恋をした。

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          【三角関係百合】ひとり見上げる虹の色は(2−1)

          【三角関係百合】ひとり見上げる虹の色は(1−5)

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           それでも懲りずに、わたしは葉瑠さんのライブに行った。相変わらずわたしは、葉瑠さんの小説のファンだったし、葉瑠さんの演奏が好きだったから。  葉瑠さんだけじゃなくて、惟さんのライブにも時々顔を出すことにした。なんとなく葉瑠さんがいるんじゃないかと思って行くと、案の定、彼女はそこにいて。  なんだか悔しいから、葉瑠さんになかなか気づかなかったフリをしたこともあった。ああ、わたしは本当に素直じゃない。  そして2人のライブに何度か通ううちに、結局わたしは確信を得ることになっ

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          【三角関係百合】ひとり見上げる虹の色は(1−5)

          【三角関係百合】ひとり見上げる虹の色は(1−4)

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           出番が終わると、葉瑠さんは顔見知りらしいお客さんのところへ行って話し始めた。しばらくしてこちらの視線に近づくと、葉瑠さんはわたしの隣にやってきて、話しかけてくれた。 「初めまして、葉瑠です。ええっと……お名前聞いてもいい?」 「……愛里です」

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          【三角関係百合】ひとり見上げる虹の色は(1−4)

          【三角関係百合】ひとり見上げる虹の色は(1−3)

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           東京の西、都心からは少し離れたとある駅の最寄りに、そのライブバーはあった。  6月ももうまもなく終わるというその日はじめじめとしていて。もう日も暮れていたけれど、ライブバーへの道のりを歩いているだけでじんわりと汗がにじむ。  だけどわたしの心はワクワクでいっぱいだった。だってこの日は、待ちに待った葉瑠さんのライブの日だったから。

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          【三角関係百合】ひとり見上げる虹の色は(1−3)

          【三角関係百合】ひとり見上げる虹の色は(1−2)

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           毎日楽しみに読んでいたシガーキス姉妹百合の連載が終わったのは、まだ少し肌寒い、春になったばかりの頃だった。  『最終話』と書かれたその次にもまだページがあって、開くとそこには動画サイトへのリンクと、歌詞らしきものが書かれていた。葉瑠さんのお知らせページによると、それはシガーキス姉妹百合のイメージソングというもので、作詞・作曲共に葉瑠さんがおこなっているらしかった。

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          【三角関係百合】ひとり見上げる虹の色は(1−4)

           出番が終わると、葉瑠さんは顔見知りらしいお客さんのところへ行って話し始めた。しばらくしてこちらの視線に近づくと、葉瑠さんはわたしの隣にやってきて、話しかけてくれた。 「初めまして、葉瑠です。ええっと……お名前聞いてもいい?」 「……愛里です」

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           東京の西、都心からは少し離れたとある駅の最寄りに、そのライブバーはあった。  6月ももうまもなく終わるというその日はじめじめとしていて。もう日も暮れていたけれど、ライブバーへの道のりを歩いているだけでじんわりと汗がにじむ。  だけどわたしの心はワクワクでいっぱいだった。だってこの日は、待ちに待った葉瑠さんのライブの日だったから。

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           毎日楽しみに読んでいたシガーキス姉妹百合の連載が終わったのは、まだ少し肌寒い、春になったばかりの頃だった。  『最終話』と書かれたその次にもまだページがあって、開くとそこには動画サイトへのリンクと、歌詞らしきものが書かれていた。葉瑠さんのお知らせページによると、それはシガーキス姉妹百合のイメージソングというもので、作詞・作曲共に葉瑠さんがおこなっているらしかった。

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          【三角関係百合】ひとり見上げる虹の色は(1−2)

          【三角関係百合】ひとり見上げる虹の色は(1−1)

           その言葉は、その透き通る声は、ただわたしを赦してくれた。  取り返しのつかない罪を犯したわたしを。ただ包み込んで、抱きしめて。そして、それがわたしにとっては一生の罰だった。  *  ベッドの上に寝転ぶ。スマホを手に取ると、いつものWebサイトがすぐに開く。そろそろ、いつも読んでいるWeb小説の更新の時間だった。  1話あたり、たったの2000文字強だから、ほんの一瞬で読み終わってしまうのだけど。その瞬間のワクワクといったら、ほかの何物にも替え難くて。わたしは毎日のその

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          あったまるの、大事(2024/02/21)

          こんばんは。 ホットアイマスク中にまだ今日のぶんのnoteを書いてないことを思い出して慌てて書いてる、霜月このはです。 今日はライティングの仕事を1日やってたんですけど、1つはうまくいかないことがあってちょっと落ち込んでたんですが、 もう1つのほうのお仕事で褒めていただけて、とっても嬉しいのでした。 今日はとても寒いので、あたたまる、をキーワードに。 大体Twitterに書いてたことですけども。 冷凍の天下一品を開けてみました。 500Wで大体10分くらいでいい感

          あったまるの、大事(2024/02/21)

          手首にやさしくしなきゃねぇ(2024/02/20)

          こんばんにちは。霜月このはです。 小説以外でまともにライティング仕事をし始めて1週間弱くらいなんですが、さっそく左手首が痛いです。 もともとタイピングスピードはそんなに早くもなく遅くもない程度だと思ってますけど、自分の思考スピードに間に合わない程度の遅さだったりするんで、きっと手首がわちゃわちゃしがちなのでしょう。 それに加えて、最近では、 こんなのとか。 こんなのとかと遊んでばっかりなんで、そりゃやられるよっていう、左手首ちゃん。ごめん。 へたっぴいで、まだろく

          手首にやさしくしなきゃねぇ(2024/02/20)

          治外法権

           夜明け前、鼻腔を震わせながら雑音を立てる横顔を、眺めていた。  酔い潰れてアルコール臭のする呼気、一日中帽子の下にいた頭髪はボサボサで、かつてはイケメンだとか言われていたらしいそのお顔には、今は暗闇の中でもわかるほど皺が刻まれていて。  ほんの数時間前までカッコよくギターを弾いて歌っていた彼だけど、こうしてみれば、ただの中年のおじさんで。  睡眠不足と心労を抱えたその人は、わたしにとっては、ただの大事な友人だった。  昨夜、音楽仲間である彼と、ライブのあとの打ち上げ

          フリーランス(?)になったもので(2024/02/19)

          こんにちは。なんとか一人前の人間になりたい霜月このはです。 さて、年明けからいろいろあって入院とかしてたことは、Twitter(X)を追ってる皆様にはご存知のことかと思うのですが それに伴いまして、それまで勤めていた会社を辞めまして、というかクビになりw 無職……じゃない、『フリーランス』ということになりましたので、ここにお知らせします。 わずかばかりの小説の収入と、別名義でのライティング関係の収入で細々と生きていくことになります。 大丈夫、きっとなんとかなる。なんた

          フリーランス(?)になったもので(2024/02/19)

          君は恋だった

          ※百合ではないです。 「ハル」  伸ばしかけの彼女の髪に手を伸ばす。やわらかなはずの春の日射しは、僕の目にはほんの少しだけ眩しすぎて、僕は思わず目をつむってしまう。 「 」  何か言いながら、彼女が僕の方を振り向く。今にも儚く溶けてしまいそうな声は、まるで本物の雪のようで。  洗い立ての髪の甘い香りがふわっと広がり、僕の胸の奥にあの頃の記憶を蘇らせた。   *  西暦22XX年4月。第三東京コロニーは壊滅した。直接的なきっかけは、前世紀から続く大規模な気候変動の結果とし

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          【超短編】瞬間接着剤

           長い指が、わたしの左指に触れる。少しザラっとしていて、独特の固さのある指。

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          魔法少女に恋をして

          ※2023.9.3のCOMITIA145にて頒布したものです。 当日売り子さんをしてくれた、魔法少女アイドルシンガーの木ノ下ゆりさん(https://twitter.com/komomojam)とのコラボ作品です。 「魔法少女になりた~い~♪」  軽快な音楽に合わせて、高い声が響く。思わず身じろぐ。自分がここにいていいものか、もしかして場違いなんじゃないかとか、不安になっていた。  キョロキョロと周りをうかがえば、誰もが彼女に夢中だ。  『魔法少女アイドルシンガー』そんな肩

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          また、雨が降る

          ※2023.6.28国分寺クラスタショートライブにて頒布した短編集「また、雨が降る」に収録のものです。  雨の音が聴こえる。  顔を上げて窓のほうに目をやれば、無数の雨粒が、ひとつになって流れていくのが見える。  ……そうか、また雨、か。  私はまた視線を下に戻す。  淹れたばかりのコーヒーから立ち上る湯気を目の端にやりつつ、ページを捲る。  すっかり色の変わってしまった写真の中で、あのときの私が微笑んでいた。   *  灯花との出会いは、高校二年の五月だった。  まだ

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