ホルモンに逆らえない
数年前、心療内科にていろいろな検査を受けたところ、躁鬱傾向のある感情障害と診断された。
処方された薬はセロトニンを操作するというものらしく、幸運なことに私の体にも合っていたので、フルタイムで働いていた一年ほどはその薬にお世話になっていた。
少量のため、多少のプラシーボは否定できないが、その薬を摂取することで明らかに生活はしやすくなったし、何よりも当時の恋人と安定した関係を築けていたのは、明らかな変化だったと思う。
ドイツに来てからは、同じ薬の取り扱いがなかったため、泣く泣く中断せざるを得なくなった。それでも、やることがドイツ語の勉強だけに限られていたこと、友人に恵まれたこと、ドイツの自然環境に癒されていたこと、など日本、東京にいるよりゆったりとした生活のおかげで、しばらくひどい発作は出なくなっていた。
ところが、今月の半ば、数か月の無月経を経てやって来たサイクルに完全に打ちのめされてしまった。
大学生の時からドイツで生活を始めてからもピルの投与は続けていたのに、土地が変わって病院に行くのがおっくうになり、最後のシートを数錠残したままやめてしまっていた。そのせいか、生理はとまり、久々にやってきたとおもったら、PHDDだかPMSだかのひどい症状を伴って私の精神を結構な間蹂躙していった。
そんな中で実感したのが、私がどんなに理性的に、合理的に物事を考えて、受け入れて、昇華しようとしても、ホルモンだかなんだか、脳の中で生成される化学物質の威力には勝てないということだった。
上記に示したように、私が常用していた薬は、セロトニンを操作するいわゆる向精神薬と、女性ホルモンを操作する低用量ピルである。両方とも人工的にホルモン生成に働きかけているはずのものである。(素人見解です。詳しくは医療従事者に。)
その二つの恩恵によって、いかに私が「普通の」生活を送れていたのか、今回の出来事によって実感したし、なんとなく、いかに脳内の化学物質が私の心理状態に強く働きかけているのか、手に取るように分かった気がしたのだ。私はホルモンには逆らえない。
人の中に、本人では制御しきれない領域があることを認識する機会はあまりないと思う。だから、そういった場に直面した時、本人も周囲の人間も対応に戸惑ってしまう。
特に周囲には理解を示されない場合が多いだろう。どうやって向き合っていくべきか、私の中でも課題である。
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