アメリカの教育事情③~アメリカの高校の課外活動、大学進学準備どうしているの?

 上記テーマでClubhouseを開催。①、②(リンクは最下部に)に続き、私の友人でロサンゼルス在住のMakiさんに登壇いただき、色々お話を伺った。

アメリカの学校制度ー高校

アメリカはK(Kinder)-12thまで義務教育。そのうち高校は9th-12thまでの4年間。高校4年間は、それぞれ別称があり、グレード9を「フレッシュマン」、10を「ソフォモア」、11を「ジュニア」、12を「シニア」と呼ぶ。

部活動、どんな仕組み?

アメリカの課外活動(以下「部活動」とする。今回は主にスポーツについて説明する)は日本の「部活」とは少し違い、季節により選択肢にあるスポーツを選択する方法。そのため、同じ学生が秋にアメフト、冬はバスケというような選択をすることもある。

アメリカの部活動は希望者が全員入部できるわけではなく、入部のためのテスト(Tryout)がある。部員はこうしたテストを経て活動をするため、日本の部活にある「万年補欠」という存在はないそうだ。つまり基本的には「部員数=ベンチ入りまでの人数」となる。。

これらの運動部は「Versity(いわゆる1軍)」、「Junior Versity(2軍)」、「Frosh(3軍)」などのように2、3という2チームに分かれていることが多い。これらのチームはTryout時に行われるが、それぞれの活動内容、時間帯は異なる。

あるファミリーの場合~バスケ部

今回話をしてくれたMakiさん(米国生活通算約10年。今回のLA滞在は2017年~)は今回の渡米時は長男くんが12th(最終学年)、次男くんが9thというタイミング。

選んだ部活はバスケ部で、日本在住時から経験していたものの、渡米時は日米の体格差、練習環境の違い、そして実力差が歴然としていたそう。それでも何とかチームに入り、活動を開始したが、上述の通り、メンバーにキャッチアップするのは相当大変だったそう。英語についても、帰国子女として日本でそれなりに続けていたものの、特に最初はバスケットボールのコート内で交わされる、かなり癖のある英語(学校で習うことのない)にも悩まされたという。

地域、学校にもよるが、シーズン中の活動は結構忙しく、平日の夜20時、21時から遠方で試合、なんてことも少なくないとのこと(その送迎や食事の用意をする親たちも振り回される)。また、活動費は原則チームで賄うとのことで、練習がない時のアルバイト活動、また親たちは試合会場でホットドッグを売ったり、という地道なサポートが不可欠だという。


スポーツやるなら文武両道

ところで、アメリカの部活動、スポーツだけやっていれば良いというものではなく、学校の成績が悪いと続けることができない。基本的に「文武両道」が良しとされるため、学生たちは部活も勉強も手を抜くことができない。そんな中でもアメリカの高校、テスト期間中でも関係なく、試合の予定が普通に入ってくるとのこと。この点、テスト前1週間前くらいから休みになる日本の部活動とは大きく異なる。アメリカの学生たちはこうした活動に耐えうるだけのタイムマネジメント、体力管理の能力も鍛えられるという(逆にこれができないとドロップアウトしていく)。

大学進学は高校4年間の集大成


ここで大学進学について目を向ける。アメリカの大学入試制度は日本と異なり、いわゆる「入学試験」という一発勝負の筆記試験はない。その代わり、高校4年間の成績(全て)やこれまで従事してきた活動(学校活動、部活動、ボランティア活動など)、定められたテストのスコア、エッセイなどの結果が総合的に見られる。そのため、いわゆる「ガリ勉」で勉強さえしていれば良い、というものではないし、反対に「スポーツだけしていれば良い」というものでもない(上述の通り、勉強も最低限をクリアしないと部活も続けられない)。

そのため、アメリカの高校生の印象として「1年たりとも、いや、1日たりとも?気を抜けない」ということだ。「バーンアウト(燃え尽き)してしまう高校生」の存在も少なくないという。

さらに気が抜けない要因として、「単位の先取り」傾向がある。アメリカの学校制度の仕組みとして、中学生から一定の高校の単位が取れるという。高校生も大学の単位が取れるため、最近は「先取り」の傾向にあるという。理由として、大学進学の時に有利ということもあるが、もう一つの大きな理由として、学費がその分安くなるということだ(大学の学費は単位数で決まる)。ここまで学費を気にする理由は高騰し続ける学費に要因がある。

重くのしかかる学生ローン債務

アメリカの大学の学費は市民権、永住権の有無や州の内外かなどにより料金体系が異なるため、一概には言えないが、カリフォルニア州立大学の場合、年間約$15,000(州内、永住権アリの場合)だが、州外からの場合はその倍程度になる。また、私立の大学は「年間」で$60,000~$70,000もザラだというから負債額も想像がつく。そして、上記はあくまでも授業料であり、これ以外にも住居、食費等の費用がかかってくる。

アメリカの学生では、4300万人以上のアメリカ人(カリフォルニア州の人口より多い)が、連邦政府と民間の学生ローン債務を合わせて、合計1兆7500億ドルを負っている。驚いたことにこの金額はアメリカ全体のクレジットカード合計債務額を超えており、今や住宅ローンに次ぐ国内最大の消費者債務のカテゴリーになっているという。

もちろん、アプライする際は住む地域(州)も含め、全体のコストを見て検討する必要があり、利用できる奨学金(返済有無あり、なし両方あり)はできる限りアプライするのが鉄則とのこと。



大学を4年間で卒業する率は全体の30%程度

高校4年間気を抜かずに頑張り、大学に入学したとしても、そこでの授業は簡単なものではなく、一般的に授業について行き、単位を取得するのは日本よりも難しいという。それゆえか、アメリカでは大学を4年間で卒業する率は全体の30%に過ぎないとのこと。

また、アメリカでは「ギャップイヤー(gap year)」といって、学生が入学前、在学中、卒業後などに、(大学側が認めた)留学やインターンシップ、ボランティアなどの社会体験活動を行うための猶予期間がある。実際にこれを利用する学生も多く、働きながら5年以上かけて学業を終える人もいる。

日本も追随なるか?

私はこれまで、日本の大学受験システムについて、貴重な高校生活の1,2年を勉強漬けにしなければいけない点、塾・予備校に多額の費用がかるという点、またその方式が数十年も大きく変わっていない、という点で疑問を感じていた。

一方、今回「アメリカの大学進学準備は高校4年間の集大成、文武両道で1年目から気が抜けない」、という実情を聞いて、「学生にとっては決して楽ではないな」、と感じた。学生を取る側にとっては、アメリカ式のやり方はバランスの取れた優秀な人材が取れるというメリットはあるだろうが。

今後日本の教育界でもDX化が進み、受験制度にメスが入った場合、アメリカ式に高校生活の活動実績が可視化され、そのまま大学受験に代わるようなことになるかも?という議論を以前Clubhouseで聞いた。本当にそれが実現するまであと何年、何十年かかるかわからないが、そうなれば日本の高校生の過ごし方自体にも大きな影響があるのではないかと思う。

<過去の関連ブログ>

アメリカの教育事情①

アメリカの教育事情②


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