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人種を超えた一対一の関係

今から2年前の2019年、私が高校2年生だったとき7ヶ月間のフランス留学を経験した。昨日ホストファミリーと久方ぶりのビデオチャットで思い出話に花を咲かせているうちに、いままで記憶の奥底に閉じ込められていた現地での気付きや発見の数々が、私の頭の中に波のように現れては引っ込んで、現れては引っ込んでを繰り返すので、今更ながらにここに私が体験したことを綴っておきたいと思う。

第一回目は、私の思う人種を超えた一対一の関係の築き方について、記憶が鮮明になっている内に書き残したいと思う。

フランスに行くまでの私は、日本人であるという自分のアイデンティティーに誇りを持っていた。それは、それまでこの小さな島国の中で自分と同じようなバックグラウンドを持ち、同じ言語を話す人としか関わったとこがなかったのだから当然のことなのだろう。しかし、フランスに着いてすぐに、高校2年生だった私は自分の世間知らずさ加減に絶望した。

フランスに着いて1番初めに触れ合ったのは、同じ留学団体で私と同じようにフランスに来ている他国からの留学生たちだ。その当初私は、ヨーロッパもアジアも関係なしに皆フランスへの新参者として対等に渡り合っていけるのだと思っていた。しかしそれは大きな間違いだった。ヨーロッパから来た学生たちはそこでコミュニティーを作り、こちらから幾ら話しかけようとも、アジアから来た学生たちとなかなか関わろうとはしてくれないのだった。

私の派遣された地域には私を含め6人の学生たちがいた。内訳はイタリア人の学生が2人と、アイルランドの学生が1人、中国の学生が1人に、日本からの私だった。同じ地域に派遣された仲間のはずなのに、私と中国からの女の子以外の4人で固まって行動し、こちらが話しかけない限りは向こうから全くこちらに興味を示してはくれないのだった。中国からの女の子と常にセットとして扱われることに嫌気がさし、4人の輪の中に入ろうと試みるも、あの中国の子はどうしたのだと聞かれる始末である。そんな彼らにとても腹が立ったし、自分自身の語学力、コミュニケーション力の低さを痛感し、やるせなさを感じた。結局、フランスで生活していく中で彼らと嫌でもコミュニケーショを取らなければならなくなったことと、私の語学力が向上したこともあって最終的には彼らとは人種を超えた一対一の付き合いができるまでになれた。今でもその6人でチャットを通じて近況報告をするくらいの付き合いである。

高校生のときの私は、全ての問題を私の語学力とコミュニケーション力のせいであったのだと決めつけて、問題の根幹にある部分に触れようとはしてこなかった。しかし、今は大学生になって時間にも心にも余裕ができたので、この問題の根本にある原因を考えてみた。たしかに、高校生だった私が考えたように、語学力の問題は少なかずあったと思う。言語が話せなければコミュニケーションを取ることも自分の良さを宣伝することもできないのだから。

しかし、ここにもう1つ原因があるとするならば、それは私の日本人である自分というアイデンティティーへの過大評価が原因だったのではないかと思う。前述した通り、フランスに住むまでまともに日本から出たことがなかった私は、日本人がメディアの中で作り上げた日本の姿イコール海外の人が見た日本のイメージなのだと考えていた。メディアでは日本の悪いところは滅多に取り上げられないのだから良いところばかりが目に入って、自分の出身国を過大評価していたのだ。その結果として、海外に行けば日本から来た私は、みんなから良いイメージを持たれて、興味を持って貰えるに違いないと奢り、ナショナリストになりかけていたのである。でも、ヨーロッパやアメリカの学生達にとっての日本のイメージなど、ただアジアの東端にある小さい国程度のもので、それ以上でも以下でもなかったのだった。だから、ヨーロッパから来た学生たちの結束力の高さを打ち破って、彼らの中に自分の居場所を作り出すためには、日本からきた自分などという傲慢な考えは捨てて、一対一で「私はこういう人間で、こんな魅力があります」と、訴えかけて行く必要があったのである。外の世界を知りたくて、自分の殻を破りたくて留学に行っているのに、自分の国籍というアイデンティティーに縋って友達を作ろうとしていたなんて、私の考えがいかに幼稚で浅はかだったかが分かる。

つまり、ここから私が学んだことは日本人がメディアの中で作り出した日本のイメージの多くは私たちを喜ばせて良い気持ちにさせるためのものであって、全く客観的でないということ、そしてそこから私たちは知らず知らずのうちにナショナリズム的感情を持ってしまっているかも知れないということ。最後に、初めは国や人種の壁を感じても人柄や性格がきちんと育っていればそんなことは大した問題ではないということである。

長くなった上に、言いたいことが頭の中で交錯してまとまりのない文章をここまで読んでくれて本当にありがとうございました!!




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