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本の奥付ってエンドロールなのか

単行本の編集者になってから、基本的に著者と編集者、二人で仕事をすることが多い。あとはデザイナーさん、営業の方、本によってはライターさん、イラストレーターさんにもかかわってもらったりするけれど、一冊の本を作るのに、わかりやすく多くの人が関わっているわけではない。
私にとって本づくりは、チームというより二人三脚というイメージだった。

今、初めてレシピ本を作っている。著者はcakesでスープ・レッスンという連載をされている有賀薫さん(スープの魔法使いだと思う)。

この本の奥付け(著者名や出版年月などが書いてある本の最後のページのことです)を作っていたとき、クレジットとして入れる名前の数が、今まで作ってきた文字がメインの本に比べると、ずっと多くて驚いた。

写真撮影をしたり、ページデザインを組んでもらう必要があるレシピのようなビジュアル本は、普通の本以上に、編集者一人では何もできないということを強く感じる。どんな本を作るときもそうだけど、編集者は作りたい本の形、届けたい人の姿は頭の中にあるけれど、その具体的な形を自分で生み出すことはできない。

奥付の名前を入れながら、撮影のときのことを思い出した。撮影前の準備から、デザイナーさん、スタイリストさんらカメラマンさんと話し合い、著者の有賀さんとは前日まで材料の買い出しに走り回り、文化祭の準備みたいだった。

撮影が終わったあと、撮影用に作ってくださった有賀さんのスープをみんなで食べたときの、同じ達成感を感じていた時間。2日目の撮影の終わりに、カメラマンさんと、スタイリストさんが、自分の仕事の機材やリースしてくださった道具を手早くまとめて、それぞれ車で帰っていくのを見送ったときの、ものすごくかっこいい女性の後ろ姿。

レシピの成り立ち自体、有賀さんが周りの人を巻き込んでくださったことが大きい。知り合いの方に実際に作っていただきながら、有賀さんが改良をしてくださった。私もたくさん有賀さんのレシピでスープを作ったし、友達にも作ってもらったり、友達と一緒に作ったり、スープの布教活動にいそしみながら、そこでの反応を本づくりに生かしたりもした。

こういう本づくりをしていると、「こんなに素敵なことがあるんだよ!」って周りに伝えたくなる思いが編集の原点である、ということを改めて感じる。

そんな本が来週校了になり、2月中旬に発売予定です。

このレシピ本は、今まで作った本の中でも多くの人がかかわってくれたこと、そして時間をかけられたこと、自分自身は新しい経験がたくさんあったことを考えると、本当に思うところがたくさんある。

スープの魅力と可能性にとりつかれたし、食べること、生活することについて考えた。

啓蒙するとか、最先端のことを一方的に伝えるとかより、普通の人に寄り添う本を作りたい。生活者としての本づくりが、自分がやりたいことだとはっきりわかった。

一度では書ききれないので、このレシピを作るときに考えたことについて、たぶんあと何回か書きます。エンドロールさながらの「チーム・スープ」の奥付を作ってちょっと感慨深くなったけれど、校了は来週だし、書店に出てからがまた本番なので、これからが楽しみです。


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