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『夜』星野源

通り行く 人の流れを見てる
出会う日々 いつまでも
遠き調べは 消えず心に鳴り響く
君が教えてくれた歌は
足元に 枯れぬ花を咲かす
ああ 夜が怖いなら
いつでも ここにいるよ
君の話を 聞くことが
ただ ただ 朝を焦がす

赤い秘密は 消えず我が身に鳴り響く
君が残してくれた歌が
足元に 枯れぬ花を咲かす
ああ 朝が怖いなら
いつでも そばにいるよ
君と話を することが
ただ ただ 夜更けを

ああ 夜が怖いなら
いつでも ここにいるよ
君の話を 聞くことが
ただ ただ 朝を焦がす


だらだらと特に何もせず、日は暮れた。ベランダから人の流れを眺めていただけだ。昨日会社を辞めた今の私には、社会を築く人間様が遠い存在に感じる。
美しい橙の夕焼けの反対では夜が開演間近だ。なにかが起こるわけではないのだろうが、夜の次には朝が来る。それだけは分かっている。
そんなの、なんでもないはずだ。自転と公転の物理に裏付けされた朝と呼ばれる現象の到来が確約されているに過ぎないはずだ。
でももし、夜が終わらずに黒い世界のままだったらどうしよう。一度黒くなってしまったら元の色には戻せない。美術の授業でそう学んだ。
そんなときは君の調べが私の深青の底に色をもたらす。君と話をするだけ。髪の毛が臭いとかふざけあったりして。君が笑えば、解決することばかりだ。
誰にも見せない。君に言えない赤い秘密。それを雲丹のように死守する私を君は優しく、そして君自身も傷つかないように、そっと抱えてくれる。暗い海の底から拾い上げて、うんうんって戯言を聞いてくれるんだ。
ただただ、君と話をする。それだけが東の空を焦がしてゆく。
「ねぇ。知ってた?白い物って、その物が僕らの目に見える光を反射することで初めて白くいられるんだよ。」
「じゃあさ、君の歯も暗い所だと白くないってこと?」
「見てみる?」
「どうやって笑」
朝日に照らされる君の歯は、白い。