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『僕と私の殺人日記』 その31

※ホラー系です。
※欝・死などの表現が含まれます。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
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外は雨が強く降っている。
雷が一瞬だけ暗い風景に挟まれて消えた。少し経って、電気の落ちる激しい音が聞こえた。その間が怖かった。

おとうさんは警察に連絡して真実を伝えてくれた。トンネルが通れるまで、ぼくは自宅で待機することになった。

雷がよく鳴っていた。梅雨のせいかもしれなかった。今頃、大量の雨粒が校庭に溜まった権太くんの血を、きれいさっぱり洗い流しているだろう。今も学校の中で血に濡れたまま、男子二名は雨宿りしているだろう。

ぼくはそんなことを思いながら、ベッドの上で眠った。

夢を見た。

そこにリナちゃんの姿はなかった。

代わりに見たのは悪夢だった。

この夜、おかあさんとおとうさんと良太は死んだ。



土曜日




朝になると、雨はウソのように止んでいた。

目が覚めたわたしは、血のついたナイフを 持って部屋を出た。居間にはだれもいない。冷蔵庫から牛乳を取り出す。乾いた喉を潤して、寝室に向かった。

そこではおかあさんとおとうさんが死んでいた。おかあさんはおなかから血を流してい て、その上にかかった布団が赤く染まっていた。おとうさんは布団から出て、何かを恐れるような目で首から血を噴き出していた。

良太の部屋に行った。布団の中に潜り込んでいたから引っぺがした。身体を丸めて眠っていた。頭は勉強机の上に置かれていた。

それらを確認したわたしは、昨夜の出来事が夢ではないとわかった。確かにわたしはこの手で家族を殺したのだ。頭の中に霧がかかっていて、記憶が薄れていた。曖昧になっていた部分が、段々と晴れて輪郭を持ち始めていく。

ユウくんが取った行動。それは窮地に立たされたわたしにとって、幸運だった。

あの夜、ユウくんは家族にすべてを話した。警察にも通報して、捕まることになった。

わたしは腹が立った。信じていたのに、友だちだと思ったのに、裏切られた。家族にも腹が立った。ユウくんの話を信じたばかりか、受け入れた。わたしには怒るくせに、ユウくんにはやさしかった。 許せなかった。

雷がよく鳴っていた。地面に電気が落ちる音で、ユウくんはなかなか寝付けなかった。 そんなユウくんの顔に蚊が止まった。人間の身体は、肌に蚊が止まると、ある動作をするようにインプットされている。

寝ぼけていたユウくんは、その動作をしてしまった。すべてを告白して安心したのだろう。意識をすれば止められていたにも関わらず、手が動いた。 完全に注意を、怠った。

バチン!

ユウくんは無意識に、入れ替わりスイッチを押した・・・。

わたしが顔から手を離すと、手に小さな血がついていた。ユウくんの方はまだ、それだけで入れ替わるみたいだった。

潰れた蚊をテッシュで拭き取って、ナイフを探しに出た。 ナイフはコタツだったテーブルの中にあった。テーブルの板は外れるようになっている。 その間にコタツ布団を入れるためだ。うちのコタツは板を外すと、テーブルの下半分に四角い穴が開いたスペースがある。コタツのコードを入れるスペースだ。その中に印鑑やへそくりと一緒にナイフが隠されていた。

おかあさんが密かに入れているのを、わたしは知っている。だからおかあさんはコタツ布団を取る時だけは、みんなを追い出すのだ。

最初の隠し場所の心当たりが見事、的中した。わたしはさっそく、寝室に向かった。

寝室では、おかあさんとおとうさんが寝ていた。おかあさんの寝息がかすかに聞こえる。 その横でおとうさんのいびきが部屋全体に轟いていた。よくこんなところでおかあさんは寝られるな、とわたしは感心した。

柄から刃を取り出して、本来のかたちに戻す。カーテンの隙間から雷の光が差し込み、 刃の側面がギラリと光った。

しばらくじっとして、暗闇に目を慣らす。ある程度、周りが見られるようになって、行 動を開始した。わたしに近い、おかあさんからにした。布団にかぶっているので、胸の場所がわからない。とりあえず、おなかだと思われるところを刺してみた。

「うっ!」という 声がして、そのまま静かになった。


続く…


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