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『僕と私の殺人日記』 その15

※ホラー系です。
※欝・死などの表現が含まれます。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
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朝は始まったばかりだ。恐らく捜査も始まったばかりだろう。
いつ家に来て事情聴取を してくるかわからない。 警察の人たちはプロだから、少しでも怪しいそぶりをしたら、疑ってくるに決まっている。

ぼくは恐ろしくてたまらなかった。捕まったら拷問されるかもしれない。二人も殺して罪が軽いわけがない。チャイムが鳴った時が人生の終わりだ。

「う~ん、どうすれば誤魔化せるだろう」

リナちゃんは全然、懲りていなかった。まだ、罪から逃げ切ろうとしていた。ぼくが悩んでいる間になぜか、リナちゃんの心にあった不安が消えていた。 嫌な予感がした。

「これはもう仕方ないな。うん! 仕方ない! 世の中は役割分担が大切!」

リナちゃんの考えていることが、ぼくにも伝わってきた。 それは考える限り、最悪の作戦だった。
ウソだよね? それだけは・・・。

「あとはよろしく!」

パン!
リナちゃんは目の前にいた蚊を手で叩き潰した。その瞬間、悪魔のような微笑みを残して、リナちゃんはぼくと交代した。

表に引っ張り出されたぼくの顔は、笑みから絶望に変わった。 罪は償わなければならない。けど正直に言うと、警察に捕まりたくなかった。未来の自 分が暗闇の中でうずくまっているところしか思い浮かばないのだ。 今更、自首なんてできなかった。

ぼくが殺したわけじゃないのに! なんでその尻拭いをぼくがしなきゃいけないんだ!

いつの間にか、ぼくの考えは警察の恐怖からリナちゃんへの怒りに変わっていた。入れ替わりをいいように利用したのだ。

わたしが捕まればあなたも捕まるわよ。

そう言われている気がした。開き直って、道連れを盾に脅している。 なんとかしなければ、ぼくがひどい目に遭う。思考を一生懸命、動かしてこの危機を脱する方法を考えた。

結局そんなことをしている時点で、リナちゃんの思惑通りだったが、 捕まりたくはなかった。 考えがまとまり、ぼくは立ち上がる。

この部屋は一階で窓がついている。そこから外に出ることにした。窓から慎重に降りる。 靴下が土で汚れたが、これからすることに比べたらどうでもよかった。靴は玄関の外に立て掛けてあった。

昨日、リナちゃんが身体についていた血を誤魔化すために田んぼへ飛び込んだ。その時、汚れた靴をおかあさんが洗って干してくれていたのだ。

靴を履いて、殺害現場に向かう。その周辺では何人かの警察官が家の辺りを調べていた。 ぼくは意を決して、近づく。 歩いてくる女の子に警察官の一人が気づいたようだった。権太くんの何倍もあるどっしりとした、こわもてのおじさんだった。

「どうしたのかな? お嬢ちゃん。ここは危険だから家に戻りなさい。そうしないと、こ わーい人に襲われちゃうよ」

冗談交じりに警官のおじさんが話しかけてきた。ここでひるんじゃダメだ。

「あ、あの、実は昨日、変な人を見て・・・」

その言葉でおじさんの目の色が変わった。

「それはどこで見たのかな? どんな格好をしていたか覚えている?」

興味を持ってくれたのか、早口で聞いてきた。よしっ、ここからが本番だ。

「えっと、大人の男の人で、この家から出てきた・・・」

「本当かね! それで服装は? どこに向かって行った?」

怒涛の質問攻めにおじさんの恐い顔が相まって、ぼくはたじろいだ。それでも怖気づく わけにはいかない。

「黒い服で・・・あっちの方に逃げて行った・・・」

指を差したのは、家と逆方向だった。それはちょうど、村から町に出るトンネルがある方角だった。

「ふむ、犯人は町に逃げたか。この村の人間ではない可能性も出てきたな。私はてっきり、 五年前の模倣犯だと思っていたのだが、考え過ぎだったか・・・」

こわもての警察官は何か、ぶつぶつ言って考え込んでいた。ぼくはどきどきしながらその様子を見守る。

「おい! 遺体を回収したら、一旦、引き上げるぞ。目撃証言が出た。犯人が町へ逃げたかもしれない。そこを重点的に捜査する!」

「「はい!」」

どうやら、こわもておじさんは偉い人のようだった。おじさんの指示に調査していた警察官たちが、声をそろえて返事をした。 村の調査がなくなり、ぼくはほっと胸を撫で下ろした。

「・・・ところで、君の名前はなんて言うのかな?」

「え? あ、その、ユウです・・・」

「そうか、ユウちゃんか。苗字は?」

「・・・武富です」

「武富ユウちゃんね。事件の参考にしたいから、また今度お話ししてもいいかな?」

「はい・・・」

「では、また」

そう言って、おじさんは村を出て行った。


続く…


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