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『僕と私の殺人日記』 その24

※ホラー系です。
※欝・死などの表現が含まれます。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
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ユイカちゃんの許しも得たところで、次の家に到着した。 その家は三人家族だった。歳のとった夫婦と成人した息子が暮らしていた。

わたしたちは客人をよそおって家に上がった。要件はトンネルがなぜ塞がったのか。

この家もトンネ ルに近かった。夜の騒ぎに気づいた家の一つだ。 あの出来事を思い返す。ユイカちゃんとトンネルを崩落させ、懐中電灯を照らさず走っ た。そのそばで周囲の民家の窓から明かりが灯る。外に出て様子を確かめようとする者もいた。

ここの住人がまさにそれだった。

ユイカちゃんの作戦は、トンネル騒ぎに気づいた人から殺していく、というやり方だった。自分たちの仕業だと、悟られないようにするためだ。

あの時、わたしはだれかに懐中電灯を照らされた。わたしだとはわかっていないと思う。

ただ、人の手でトンネルが壊されたと村に広がれば、警戒されて行動しづらくなる。なんとしても、それは解決しなければならない問題だった。

「それがわからないんだよ。いきなり大きな音がして、目が覚めたんだ。それでトンネルの方からしたみたいだから行ってみると、崩れて塞がっていた」

若い男の人が答えた。来客用のソファーに座らせてもらって、向かい合わせに家の人が 座っている。

「だいぶ古いトンネルだから、工事する前に壊れたのかもしれないな。人間と同じで年を食ったもんじゃわい」

男の人のとなりにいるおじいさんが言った。

「それは違うよ。父さん。あれは人為的なものだった。工事に使うダイナマイトがなくっていたんだ。間違いなくあれはだれかがやったものだよ」

おじいさんの言葉に男の人が否定した。その考えは当たっている。 わたしは不安になった。もう、人の手でトンネルが崩されたと広まっているのだろうか。

「そのことは、みんな知っているんですか?」

ユイカちゃんがわたしの不安を代弁するように聞いた。

「いや、まだだ。物証がないし、そんなことをする意味がわからない。とりあえず、トンネルが崩れたことだけは村全体に伝えてある。警察に電話して、通れるようにしてもらってるけど、早くても一週間はかかると言われたよ」

「そうなんですか・・・すいません。トイレを借りてもいいですか?」

わたしは相槌を打ちつつ、打ち合わせした通りのセリフを言った。

「いいとも、ここから出て右の通路の突き当りだ」

「ありがとうございます」

通路に出たわたしは、左の通路へ曲がり、人の気配がする台所へ向かった。物陰から隠れて様子を窺うと、おばあさんがお茶を汲んでいた。

「わたしも手伝います」

「あらそう? お利口さんね」

ナイフを持った手を背中に隠して、おばあさんに近づいた。お茶の乗ったお盆を受け取る瞬間、わたしはおばあさんのおなかの辺りへナイフを突き立てた。

突然の激痛におばあ さんはお盆を落とす。コップが音を立てて割れ、緑のお茶が床にこぼれた。声を上げようとしたので、すぐに喉を切り裂く。

心が入れ替わる。ユウくんはまた、動揺していた。殺すたびに入れ替わるのが不便で仕方ない。

身体が震えて動かなかった。早くしないと、音に駆けつけておじいさんたちが来てしまう。

「どうしたんじゃ、ばあさん!」

おじいさんの声が聞こえる。この声で我に返ったユウくんは、ポケットから折り畳んだ折り紙を取り出し、思い切り潰した。昨日と同じく、その中に蟻が入っている。これもユイカちゃんが立ててくれた作戦だ。

その時、ユウくんは心の中にいたけど、聞いていたはずだ。怖くなって逃げ出すのが、簡単に想像できた。

案の定、すぐに入れ替わった。

「ばあさん! どうした!」

血を流すおばあさんにおじいさんが寄り添った。おばあさんは死んでいる。わたしは入れ替わることで、見なくても死んだと知ることができるのだ。

「ああ、なんということじゃ……これは五年前と同じ・・・」

何かわけのわからない言葉をおじいさんはしゃがんだまま、つぶやいている。そういえば、前に殺したおじいさんも似たようなことを言っていた。

考えてもわからないわたしは、 とにかくおじいさんの首を切った。何度も切って、切断した。骨を切るのが大変だったけど、体重を使って切ったら、頭がボウリングみたいに転がって身体から離れた。

またまたユウくんと入れ替わる。心が割かれて、血が噴き出しそうになっていた。わた しはあきれた。もう何回も見た光景なんだから、いい加減、慣れてほしかった。

「どうしたんだい。ずいぶん遅いじゃないか?」

男の人までこっちに来た。ユウくんは震える手でまた、ポケットに入っていた蟻を押し潰した。


続く…


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