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ショート小説 : 月光鬼語

文学フリマ広島6用の新刊を準備してます! 


ゆにおです!

11月はぼーっと休んでいたけど(9月の一箱古本市、10月の燃え尽き、、、)、

12月に突入したけん、【文学フリマ広島6】に向けて
新しい本を作り始めようと思います〜。



文学フリマ広島6

2024/2/25(日) 広島県立広島産業会館(東展示館2・3)
※南区役所前バス停&電停すぐそば!

2種作る予定です!

まず、大好評だった日記本の【2023版】。

そして、
文フリ福岡&東京で完売した『SFSS〜すこし不思議なショート・ショート〜』の
姉妹本
です。

見事完売しました! 感謝!!

『SFSS』は稲垣足穂の『一千一秒物語』の【タイトル+書き出しの1行】の本歌取りだったんじゃけど、

次作る本はその逆回転版、

つまり【タイトル+書きおわりの1行】を本歌取りして
書くというもの!

それを70本、逆回転の収録順で収める予定です。

※ただ、書き終わりを一字一句違わず揃えるのはかなり難易度が高くて、少しアレンジしたり、そこから数行付け足したり……しております。許して!



第二稿の組版も無事終わり、さらなる推敲作業に移ります。

そこで、「同じ作品から本歌取りでして、内容がどう変わるの?」のサンプルとして
「月光鬼語」という作品をお見せします。


最初が「正回転版」、次に載っているのが「逆回転版(文フリ広島新刊用)」です。

違っていたり、共通点があったり……その対比をお楽しみくださいまし〜。




ショート小説 : 月光鬼語(げっこうきご)

photo by PAKUTASO


真夜中頃に目を覚ますと、裏庭にあたって只ならぬ人の声。

「たのもう、たのもう! 真剣勝負に参りました」

おでこにハチマキを巻いた女子生徒二名が日本刀を構え、切っ先を向かい合わせている。

「見届けお願い致しまする!」

片方の女子生徒がそう叫ぶと、両者は稲妻に姿を変え、斬り合いを始めた。

刀がぶつかり合う、カキン、カキンという音。そのたび、火花が飛び散り、イガイガの星がこちらへ飛んできた。
星がおでこにぶつかり、皮膚が裂けて血が出た。痛いったらない!

「きみたち、勝負なんかやめないか! 争いなんて、実にくだらない」

するとふたりは動きを止め、同時にこちらをパッと向いた。まるで般若の形相だった。
そして、刀を振りかぶると、こちらへ突進してきた。

「きええええええーーーーいッ!」

――斬られるッ!

しかし直前で、女子生徒たちが前のめりに倒れた。その頭に隕石が降ってきたからだ。

「うちの生徒たちが、ご迷惑をおかけしました。おてんばぞろいで困ったことです」

星空に裂け目ができて、けむくじゃらの真っ赤な手が降りてきた。
手は、気を失った女子生徒2名をむんずと掴んで回収した。

《fin》


ショート小説 : 【逆回転】月光鬼語

photo by PAKUTASO


私は、鬼に嫁入りしなければならない運命だった。それが村のしきたりだったのだ。
鬼はとにかく醜くて、岩のようにゴツゴツした身体を持っているという。

その胸板に激しく抱かれると、柔らかい肌は擦りむけてしまう。
鬼が満足いくまで動き終わる頃には、こちらの全身は傷だらけだ。
鬼と交わることは、とても人間の女に耐えられるものではない、と。

「しかしお前は、その鬼に肉体を捧げる必要がある。お前でないと、だめなのだ」

物心ついた頃には、村の存続のために耐えよと、母と祖母は毎日のように私を説得した。
恐ろしくてたまらなかったけど、私は嫁入りを決意した。
村人たちは、それを聞いてほっと胸を撫で下ろしたようだった。

満月の夜を嫁入りの日に選んだ。
特別にあつらえた白無垢を着せられた私はひとり、山の頂上で待つ。

鬼の見た目が醜いというのは嘘だった。
すっと面長に切れ長の瞳で、女のような顔つきだった。
身体が岩のようだというのも嘘だった。
引き締まり、しなやかで、腰つきは柳のように華奢だった。
絹のように滑らかな肌をしている。
まるで、白百合のような男。

性器は金棒のようだと聞いていた。それも嘘だった。
そんなものではすまなかった。杭(くい)のような持ち物だった。

鬼は私に、脚を開いて自分の上に跨るように命じた。
表面の凸凹につかえながらも、屹立した硬い棒にやっとこさ腰を沈め、私の身体は串刺しのようになった。

鬼は私の両太ももを押さえて離さなかった。
そのまま身勝手に下から動かれ、白無垢ははだけた。
揺れる動きに合わせて、衣ずれの音(ね)が野山に響いた。

白い布が私の身体を軸に、夜風に吹かれてばさばさとはためいた。
まるで、山の頂に掲げられた白旗のように。

鬼の腹の上には、私から滴り落ちた血が紅く溜まっていった。

これが、私の初夜。
ああ、今でも忘れはしない。まるで真昼のような月夜だった。

《fin》


■お読みくださり、ありがとうございます。挿絵のお写真は全て、ぱくたそさんからお借りしています! 日本刀のJKは、フリーモデルのなんこさん。なんこさんを表紙にあしらった詩集も、文フリ広島で販売するよ!

カメラマンさんから詩集のご感想もいただきました〜。あざっす!

by ゆにお



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