ばあちゃんとこけしちゃんと犬 2023/10/6
祖母に会いに行った。
なんやかんやでしばらくばあちゃんに会っておらず、最近は手紙も書いていなくて気になっていた。
慌てて敬老の日の翌週に、手紙と鳥のポーチに入ったクッキーをわたしてもらったら、その次の日が誕生日だった。96歳。
「誕生日のことを忘れてたから、手紙には普通に『こんにちは 元気ですか?』と書いたよ」と母と妹に言ったら笑っていた。
9月は誕生日の人が多い。
従姉妹の子ども(高校生の男の子)が一人で老人ホームに会いに来たらしい、と母から聞いた。
祖母にとってはひ孫ということになる。
それほど深い関わりがあるわけではないと思う。それなのに一人で! 高校生が!
私たちはたまげて、その後すごく感激した。
彼のことは赤ちゃん時代~小学校低学年までしか知らないが、そういうことをしそうな人ではあった。
今年の4月から、西の地方にて離島留学しているらしい。
家の中のことはだいたい一通りできて、誰にでもおそれず話しかけることができるのだという。
すでに私よりも立派だ。
ひ孫が一人で行ったなら、私も一人で行こうじゃないか!
と勇んで、私も祖母に会いに行った。
誰にでも話しかけられるわけじゃない私は、何度も誰かと一緒に行ったことのある建物の前で立ち止まり、一瞬躊躇したのだが、彼のことを思って何ぞ私も! と、インターホンを押した。
💺
祖母は自室でベッドの上に腰掛けていて、私が入っていくと「誰だった?」と聞いた。
「めぐちゃんだよ!」とツッコミの人の調子で言うと、「めぐちゃんか」と繰り返す。
服装と見た目やスタイルを一通り褒めてもらい、祖母の髪型や服のかわいいところを見つけて褒める。恒例のやり取りをする。
「また背が伸びた?」と子ども時代以来のことを言われた。まだらに記憶が戻るのだろうか。
どこに住んでいるか?
何をしているのか?
何時に寝て起きるのか?
いつもの問いを打ち返しながら、持ってきたこけしを取り出した。
祖母は「かわいいねえ!」と喜んでくれた。色を私が塗ったことにも気が付いて、「あんたは器用だわ」と何度も感心してくれる。
のっぺらぼうのまま持ってきたので、「目を描きたい」と言うと、スッと名前ペンを差し出してくれた。
「かわいく描いてね」と言われ、とても緊張する。
途中で、こけしについて、この色合や模様は何かをお手本にしたのか? と何度も聞かれるので、何かをお手本にして目を描くべきだろうかと心が揺れる。
黒豆みたいな目ができて、祖母に見せたら「かわいい」と言われ、「ここは耳?」と聞かれるからうなずくと、「耳も描いて」。
それから、「鼻も」。「口も」。
できた!
なんか……顔文字みたいな顔になってる!(・ω・)
何も見ずに描いたから、自分の中を掘り下げるしかなく、不器用で単純な顔になった。
キティちゃんやミッフィーみたいに、口がないパターンにも憧れたけど、わかりにくいかもしれないから笑っていることにした。
祖母は喜んで、テレビの前に置いて、と言った。
テレビの前にはすでに去年の誕生日に妹と一緒にプレゼントした柴犬のぬいぐるみが置いてある。
「これもかわいいよ。1個あるだけで全然違うわ~」と、犬についても言っていたが、誰にもらったのかは忘れてしまったようだったので、ちゃんと教えておいた。
目を描いている時、「この犬とこけしを棺桶にいれてほしい」と言うから、「そんなに簡単に決めていいの?」と聞くと、「大事なものだからいい」と言う。本当は形見にもらおうと思っていたことは伏せて、あいわかったと返事した。
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