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見知らぬ同居人と言葉を交わしてから【夢日記】

 それはまるで偶然新幹線で隣同士になったくらいの距離感で、私は見知らぬ男性と六畳一間に同居していた。年の頃も同じくらいだったと思う。どのくらい一緒に暮らしていたかはわからないが、一度も口をきいたことがなかった。その人は私の目の前で堂々と横になっている。私も別にそれを気にしていない。

 ある時、キッチンに私の持ち物のブルーのカバーがかかった布団が折り畳まれて縦に置かれていた。なんでこれがこんなところに。私はあれ? と思って、あの人が使ったのかなぁと思って、初めて同居人の男性に声を掛けた。
 それをきっかけに私たちは部屋のあちこちをお互いが使いやすいように些細なところを治し始めた。交流が生まれて部屋も少し使いやすくなった。
 
 少し親しくなった頃、彼が大通りまで何かを取りに行くか用があって外に出ていった。私も手伝うつもりで遅れて後を追った。私が目的地までついたころには、彼はもうその場を去っていて、私はどこだろう? とキョロキョロ探していると遠くの方に彼の後ろ姿が見えた。その後ろに知り合いと思われる男性の姿もあった。方向は家に向かう方向だけれど、今まで通ったこともない知らない道を彼は歩いていた。舗装されていなく、少し黒い砂利道だった。私もその後を続くと行き止まったところにきれいな川が流れていた。薄いエメラルドグリーンの色をした澄んだ水。こんなきれいな川が近くにあったなんて。川幅もあり、その色の美しさや軽やかな流れに反してどっしりしている川だった。彼はその川瀬にある飛び出た石に足を乗せて、すぐ右側の陸地に上がった。そこを経由しないとそこには行けなかった。

 私は川に足をつけてしまったが、彼の後を追った先には、古い寺院のような大きな円形状の建物があった。私は思わず声をあげた。その建物自体は見る感じ古くて活気などは感じなかったが、その先にある道にはたくさんの神社のような寺院のような建物が並んでいて、そこは大盛況だった。そして、そこに芸をする人や店を盛り上げる人など子供から老人までたくさんの雇われている人々がいた。稽古や訓練を受けている子供たちもいて、そこのシステムが垣間見えた。私は白い狐のお面をつけた人たちや黄色い帯を巻いた人たちに呼びかけられながらも、道を進んだ。

 そこを通り過ぎると一変してモダンな白い建物があった。そこは開放された絵画のギャラリーのようになっていて、そこを通った方が早いと思って私はその建物の中を走って通っていた。すると、右側のスペースにテーブルについた見知った顔を見つけた。のりちゃんだった。私は急ブレーキをかけて「なんで、いるの!?」と笑いながら驚いて声をかけた。のりちゃんも驚いて笑っていた。のりちゃんはこれから何か絵画関係の講座を受けるようだった。

 数種類の青色の絵の具で描かれた川の流れのような、風の流れのような大きめの絵を手に、のりちゃんは「〇〇ちゃんが××っていうからさ〜」と言って、誰か友達か親類のために絵をどうにかしようとしているようだった。誰か人のために何かしてあげようというのりちゃんの気持ちに温かくもなり、どこか寂しさも感じた。
 いつのまにか私もそこに居続けており、その建物の地下に行ったり来たり。彼の後を追っていたことなどすっかり忘れてしまっていた。

//夢ここまで
at 20240208

~筆者雑記~
 よくも言葉を交わさず見知らぬ男性と狭い部屋で暮らしていたな、と目覚めてみると思わずにいられない夢。
 でも、その人と言葉を交わしてからいろんなことが変化していった。部屋も快適になったし、通ったことのない道がそこにあったことを知り、美しい川が近くに流れていることも知れた。ずっとずっとそこにあったのに、見えてなかったものが見えるようになった。出現した感覚と同じかもしれない。
 最後には彼を追っていたことは頭から去ってしまっていたが、ここまでたどり着いたのも自分による彼の「出現」によってだった。

 

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