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息を吹き返すおもちゃ〜おもちゃの心臓はどこに?〜

1.Jターン犬・なつめの紹介

我が家には、犬がいる。雌の黒い柴犬、なつめだ。彼女は、昨年から私たち家族と地方で暮らしている。彼女は、北海道で生まれ、生後しばらくの間、ブリーダーに育てられ、東京に住んでいた私の叔父に引き取られた。2年間を東京で過ごした後、岐阜県にやってきたのだった。彼女は、今年4歳にして、都市と地方を行き来した経験を持つ、「Jターン犬」なのである。

Jターン:地方で生まれ育った者が、都市(三大都市圏)へ移住し、その後生まれ育った地域でない別の地方へ移住すること。ー『国土交通白書2015』より抜粋

なつめは、約2年間を東京という場所で、私の叔父と2人で暮らしていた。彼女の暮らしといえば、東京の街を散歩し、公園で開かれる「わんこの会」に出席したり、叔父と一緒に深夜にコンビニに行ったりと、まさに「シティ犬」として堂々とシティライフを送っていたようだった。彼女は、叔父が会社を設立してから、叔父と一緒に事務所にも通っていたこともあり、人間同様のライフサイクルを体感している。それゆえ、彼女は、犬のようで、人間(の子供)のような、そんな素振りや反応を見せる生き物である。

2.破壊魔ナツメのおもちゃ破壊劇

なつめが人間の子供のような反応を示す瞬間。それは、鳴らなくなってしまったおもちゃが命を吹き返すときである。彼女は、ピーピーと鳴るおもちゃが大好きだ。特に、ボールのような球状のおもちゃには、目が無い。彼女は、鋭い歯を持っているため、ピーピーと鳴るおもちゃの息の根を、すぐに止めてしまう。彼女は、おもちゃの息の根を止める方法を習得している。素早くおもちゃに飛びつき、それに施されたピーピーと鳴る硬い笛の芯を、ガジガジと噛む。しばらくすると、「プスー」と気の抜けた音がおもちゃから聞こえてくる。「破壊魔ナツメ」の手にかかれば、おもちゃの息の根を止めることなんて、5分でやってのける。

「破壊魔ナツメ」は、破壊することでストレスを発散させているし、破壊することそのものに楽しみを見出している。しかしながら、そんな彼女は、いつまでもおもちゃがピーピーと鳴ることを求めている。だから、彼女は自分でおもちゃを破壊しておいて、「おもちゃが鳴らないぞ」と持ってきたり、おもちゃ箱の中から鳴るおもちゃだけを厳選したりしている。一体誰に似たのか、本当に自分勝手でわがままな犬だ。

3.おもちゃの心臓・笛の抽出

私はなつめのために、100円ショップにあるお風呂で遊ぶアヒルのおもちゃを購入しておくことがある。様々なおもちゃを試した結果、なつめはすぐにおもちゃを破壊してしまうので、100円ショップにあるお風呂で遊ぶシリーズのコスパが最も良かった。いくら彼女のためとはいえ、おもちゃ代も馬鹿にならないのだ。彼女が家の中で暴れ狂い、どうしようもないときに、そのアヒルの出番がある。アヒルを与えると、アヒルが怪我をして帰ってくる。そのアヒルの笛の部分だけを取り除いて、とっておく。この笛を、彼女が笛を破壊する前に取り上げて使い回すのだ。

この「笛のリユース・使い回し」によって、古いおもちゃが命を吹き返し、再びピーピーとなるようになる。自分の目の前で鳴らなくなったはずのおもちゃが、息を吹き返すとき、彼女は尻尾をバタバタと振って大いに喜んでくれる。

「ほら、どうだ。人間の手にかかれば、おもちゃも息を吹き返すんだよ。」

普段、他人に威張ることのできない人間でも、犬の前では威張ることができる。この「笛のリユース」を思いつき、使い回しに成功した私は、思わず「どやっ」とガッツポーズをしてしまった。

4.息を吹き返すおもちゃに感動するなつめ

「笛のリユース」をはじめて、数週間が経つ。相変わらず「破壊魔ナツメ」は、おもちゃを破壊し、目の前でおもちゃが息を吹き返す度、感動の眼差しを向けている(ように見える)。そろそろ大人になる年齢になるのだから、なんでもかんでも息が吹き返すわけでは無いことを学習してほしいものだ。散歩していても、相手が何者であろうと、尻尾を激しくふって、興味を示す。これまで、蛇に噛まれたり、雨の日に雑草の中で休んでいたスズメを咥えてしまったりしたこともある。それゆえ、私は細心の注意を払っている。そんな飼い主を差し置いて、呆れる(疲れる)ほど、元気で好奇心旺盛ななつめ。ただ彼女が元気でいてくれるだけで、幸せだとも思ってしまう私だった。


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