Yumo

教育のことなど。

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最近の記事

【読書】左巻健男『学校に入り込むニセ科学』(平凡社)

先日読んだ原田実『オカルト化する日本の教育』に続いて、オカルトまがいの教育実践に警鐘を鳴らす本書。(原田実氏の本に関してはnoteにまとめてあるのでそちらをご覧下さい。) (1)著者について 左巻健男氏といえば、最近だと『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』(ダイヤモンド社)が話題になっていたかと思います。私も書店で見かけ、社会科教員としてもぜひ読んでおきたいなと思っている一冊です。 左巻氏は中学・高校の教師から大学教員になり、数々の書籍を出版されています。

    • 【読書】原田実『オカルト化する日本の教育ー江戸しぐさと親学にひそむナショナリズム』(ちくま新書)

      教員になりたての頃、全校集会で校長が「江戸しぐさ」の話をしていました。「傘かしげ」を例に、「思いやりの心をもちましょう」とか、そんな話だったのを覚えています。 道徳でも「江戸しぐさ」が取り上げられるなど、当時は確実に「いい話」として教育現場で扱われていました。私は積極的に取り上げませんでしたが、かといって違和感を感じることもありませんでした。 しばらくして、「江戸しぐさ」は存在しなかったという話をテレビか何かで知りました。ああ、作り上げられた話だったのかと思うのと同時に、

      • 学校の掃除はだれがやる?

        田村淳さんのツイート(2021/9/27)2021年9月27日、ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんがこんなツイートをしました。 「学校の掃除を業者に任せて先生の負担を軽減しよう」という意見。これに対して様々なリプライが寄せられたのですが、そのほとんどが批判的なものでした。 私が人知れず研究してきた学校の掃除が話題になっている・・・。実は学校の掃除は古くて新しい問題です。これまでも様々な意見が出されて来ましたが、さほど盛り上がることもなくスルーされてきました。ということで私

        • モラル(moral)とモラール(morale)について

          教員の業務量が年々肥大化していると言われます。これは学校に十数年勤めている私の実感としてもあります。キャリアを重ねるとともに任される仕事が増えたのもありますが、学校全体として考えても確実に業務は増えています。食育、情報教育など、○○教育が次々に増えていき、学校はパンク寸前(いやすでにパンクしているのかも)です。 先日、このような話を聞きました。 「業務量は年々増えているのに、1つの業務を担当する教員数は減っている。例えば、昔は4人でやっていたことを今は2人でやるような感じ。

        【読書】左巻健男『学校に入り込むニセ科学』(平凡社)

        • 【読書】原田実『オカルト化する日本の教育ー江戸しぐさと親学にひそむナショナリズム』(ちくま新書)

        • 学校の掃除はだれがやる?

        • モラル(moral)とモラール(morale)について

          【読書】広田照幸『教育改革のやめ方』

          今回読んだのは広田照幸『教育改革のやめ方』(岩波書店、2019年)です。 目次 Ⅰ 中央の教育改革 1 近年の教育改革(論)をどうみるか 2 日本の公教育はダメになっているのか 3 【対談】新しい学習指導要領は子どもの学びに何を与えるか 4 なぜいま教育勅語? 5 「昔の家族は良かった」なんて大ウソ!自民党保守の無知と妄想 6 教育改革のやめ方 Ⅱ 教育行政と学校 7 地方の教育行政に期待するもの 8 学校教育のいまと未来 9 地方分権と教育 10 「学校ガバナンス」の光と

          【読書】広田照幸『教育改革のやめ方』

          【読書】田野大輔『ファシズムの教室―なぜ集団は暴走するのか―』

          前から気になっていた本。以前読んだ、杉原里美『掃除で心は磨けるのか』(筑摩書房、2019)に、「ファシズムの体験学習」として紹介されていました。中学校の歴史の授業でも扱う「ファシズム」についてどう生徒に体験させるのか、社会科教員としては興味深いところです。 目次 第1章 ヒトラーに従った家畜たち? 第2章 なぜ「体験学習」なのか? 第3章 ファシズムを体験する 第4章 受講生は何を学んだのか? 第5章 「体験学習」の舞台裏 第6章 ファシズムと現代 第1章はナチズムについ

          【読書】田野大輔『ファシズムの教室―なぜ集団は暴走するのか―』

          学校と掃除の不思議な関係

          タイトルのとおり「学校における清掃活動について」が私の研究テーマです。清掃については古くて新しいテーマと言われますが、コロナ禍において清掃活動の在り方が各自治体で(多少なりとも)見直されたと思います。これを機に、学校清掃の教育的妥当性(あるいは教育的意義)について検討してみようということです。 ところで、清掃活動って学習指導要領上はどうなっていると思いますか? 小学校学習指導要領(特別活動)では… (3)一人一人のキャリア形成と自己実現 イ 社会参画意識の醸成や働くことの

          学校と掃除の不思議な関係

          【読書】杉原里美『掃除で心は磨けるのか』

          杉原里美『掃除で心は磨けるのか~いま、学校で起きている奇妙なこと~』(筑摩書房、2019年)を読了。私の関心は「無言清掃」と「スタンダード」の流行についてだったが、教育現場で起きている「奇妙なこと」について、様々な問題を取り上げて書かれていた。 章の構成は以下の通り。 はじめに 第1章 心を磨く学校? 第2章 道徳の教科化 第3章 家庭と地域への介入 第4章 教科書を統制する 第5章 国のための子ども、経済のための子ども 「無言清掃」と「スタンダード」の流行については、

          【読書】杉原里美『掃除で心は磨けるのか』

          人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]補足資料を読んで

          人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]補足資料を読んだ。令和3年3月に出されたばかりの資料ということで、教育委員会や学校現場で活用されることが期待されている。 私なりに要点をまとめてみると、 1 [第三次とりまとめ]で言及されている理念や内容自体が変わるものではない。 2 [第三次とりまとめ]策定後、学校を取り巻く社会情勢が大きく変化した。人権教育のより一層の推進が不可欠である。 具体的には、 ・学習指導要領の改訂 ・生徒指導提要のとりまとめ ・学校に

          人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]補足資料を読んで