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みそについて知ろう


みその基本について紹介しています。
そもそも、みそは何でできているのでしょうか?
原材料をご存知でない方も、意外といらっしゃるかもしれません。

みその原材料

みそは、大豆麹(こうじ)食塩を混ぜ合わせ、発酵・熟成させた調味料です。
原材料はとてもシンプル。さらに発酵・熟成の過程を経ることで、美味しいおみそに育っていきます。

原材料の大豆や食塩はイメージできる方は多いかと思いますが、麹はどうでしょうか?

麹とは米、麦、大豆などに「麹菌」というカビを繁殖させたものです。
米、麦、大豆などの穀物を蒸して「麹菌」を付着させ、繁殖させると麹ができあがります。

例えば米に「麹菌」を付着させ、カビが生えれば米こうじができあがります。ノンアルコールの甘酒の素となる、米こうじです。

米こうじ
米こうじ

では「麹菌」とは何でしょうか?
「麹菌」とは麹をつくるために使用されるカビの総称です。正式には和名で「二ホンコウジカビ」といい、学名はAspergillus oryzae(アスペルギルス・オリゼー)といいます。

日本醸造学会は2006年に「麹菌」をわが国の国菌に認定する、と宣言しました。Aspergillus属の菌の中でも、二ホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)、ショウユコウジカビ(Aspergillus sojae アスペルギルス・ソーヤ)、黒麹菌(Aspergillus luchuensis)、白麹菌(Aspergillus luchuensis mut. kawachi)が国菌に指定されています。
※Aspergillus属の菌がすべて、「国菌」に認定されてはいません。

ー われわれの先達が長い間大切に育み、使ってきた貴重な財産「麴菌」をわが国の「国菌」に認定する。 ー

(日本醸造学会 2006年10月12日 麴菌をわが国の「国菌」に認定する-宣言- より)

黄麹菌
 学名:Aspergillus oryzae / アスペルギルス・オリゼー
 和名:二ホンコウジカビ(コウジキンあるいはコウジカビとも言う)
 主に日本酒(清酒)、みそ、甘酒、みりんなどの製造に用いられる。デンプンの分解に優れている。

黄麴菌(オリゼー群)に分類
 学名:Aspergillus sojae / アスペルギルス・ソーヤ
 和名:ショウユコウジカビ
 主にしょうゆの製造に用いられる。黄麹菌とは別で、タンパク質を分解する力が強い。

黒麹菌
 学名:Aspergillus luchuensis / アスペルギルス・ルチエンシス
 主に泡盛の製造に用いられる。

白麹菌
 学名:Aspergillus luchuensis mut. kawachi / アスペルギルスミュータントカワチ
 主に焼酎の製造に用いられる。

国花が桜で国技が相撲、国菌は「麹菌」。微生物を国菌として認定している国は、極めて稀とも言えるでしょう。温暖多湿な日本の気候風土は「麹菌」の生育に適した場所でもあり、日本人が食文化とともに麹菌を育て守ってきたとも言えるのかもしれません。

みその起源

みその起源は所説あるようですが、飛鳥時代の7世紀ごろに中国大陸や朝鮮半島を経由し、みその起源となる「醤 ひしお/しょう」や「鼓 し/くき」が日本に伝えられたと言われています。

その後、平安時代では官僚の給与としてみそが支給され、贈答品などとして扱われていました。そして鎌倉時代に仏教とともにすりばちが日本に伝わり、粒状であったみそをすりつぶせるようになりました。お湯にとかしやすくなったため「みそ汁」として広がり、鎌倉武士の食事の基本として、一汁一菜も確立されました。

当時、大豆でつくられたみそは貴重な品であったため、庶民はおかずとして少し食べる程度だったそうです。米ぬかからみそをつくる「じんだみそ」を食べたり、米が多く収穫できない地域ではふすま(小麦の皮)を麹の材料にしてみそを食べていた地域もありました。

一汁一菜
(※)みそ健康づくり委員会 提供

家庭で「手前みそ」を仕込むようになった室町時代

「手前みそ」は、室町時代より農民たちが仕込むようになったと言われています。背景として、大豆栽培の奨励策に伴い国内における大豆の生産量が増えたことがあります。

また自家製みそを2~3年分蓄えておくことで、干ばつや飢饉の際は支えにもなったそうです。農家だけでなく武士屋敷などでも毎年定期的にみそを仕込むようになっていきました。

そしてみそが庶民の生活に普及し家庭料理に使われはじめていき、現代に伝わるみその郷土料理の多くは、室町時代に作られたそうです。


小川町の青山在来大豆
(在来種の大豆は珍しいです)


一晩水に浸した、別の種類の大豆
(大きさが変わります)


郷土料理 山梨県 ほうとう
(※)みそ健康づくり委員会 提供

戦でも重宝されたみそ

その後の戦国時代では、みそは兵糧(ひょうろう)として必需品となりました。
武田信玄は上杉謙信との戦いに備え、農民に大豆増産を発令し、みそづくりを奨励しました。のちに「信州みそ」の基盤となっていきます。

また伊達正宗は兵糧用のみそをつくるために、仙台城の城内の一角に日本初のみそ工場「御塩噌蔵」(ごえんそぐら)を建設しました。これが「仙台みそ」のはじまりといわれています。
豊臣秀吉が朝鮮大陸に出兵した際は、他藩のみそは腐敗したにも関わらず、仙台藩のみそは少しも腐敗しなかったため、一躍「仙台みそ」の名を上げたと伝えられています。

みそは塩分もあり栄養豊富であったため、戦国時代ではみそが勝敗を決める大きな鍵でもあったそうです。

戦国時代のみその腰兵糧
(※)みそ健康づくり委員会 提供

みそ料理が庶民に広がっていった江戸時代

江戸時代になると大都市の江戸では人口が増え、「手前みそ」は自家消費だけでなく、販売用のみそとしても多く流通するようになりました。それに伴いみその商品化が進み、みそ屋はとても繁盛したそうです。

また江戸に住む人は男性の割合が多かったこともあり、外食の習慣ができ、みそ料理も発達していきました。このころに料理本も刊行されるなど、みそ料理も庶民に広がっていきました。

当時平均寿命 が40 歳前後であった中、75歳と長寿だった徳川家康。八丁味噌で有名な愛知県の岡崎城で生まれ、豆みそをとても好み、麦飯とみそ汁をかかさず飲んでいたそうです。

現代においても、1日1杯のみそ汁は、ぜひ心掛けたいところですね。

江戸時代のみそ料理
(※)みそ健康づくり委員会 提供
1杯のおみそ汁

参考文献

 飯田一太郎、飯田重次郎 「手前味噌の味噌づくり」 雄鶏社 1991年
 一島英治 「日本の国菌」 東北大学出版 2017年
 石村眞一 編 「自家製味噌のすすめ」 雄山閣 2009年
 川村渉 「日本の食文化大系 第十巻 味噌醤油の百科」 東京書房社
 1986年
 小泉武夫 「醤油・味噌・酢はすごい」 中公新書 2016年
 河野友美 「味のからくり」 光生館 1967年
 河野友美 「新版 おいしさの科学 味を良くする科学」 旭屋出版 2008年
 佐多正行 「週末手づくり入門 おばあちゃんの味」 総合科学出版 2012年
 全国味噌工業協同組合連合会、社団法人中央味噌研究所 「みそ文化誌」 2001年
 一般社団法人 東京味噌会館 「みそを学ぶ 世界に誇る伝統発酵食品」第三版 2016年
 辻嘉一 「味噌汁 三百六十五日」 婦人画報社 1976年
 辻田紀代志 「手づくりみそ自慢」 創森社 1996年
 永田十蔵 「誰でもできる 手づくり味噌」 農文協 2008年
 永山久夫 「武士のメシ」 宝島社 2012年
 永山久夫 「歴史ごはん」 くもん出版 2020年
 みそ健康づくり委員会 「新みそを知る」 2023年1月 第6版 
 山本泰、田中秀夫 共著 「改訂5版 味噌・醤油入門」 2013年 日本食糧新聞社
 吉田元 編 「日本の食文化5 酒と調味料、保存食」 吉川弘文館 2019年 
 渡邊敦光 監修 「味噌大全」 東京堂出版 2018年


(※)挿絵、郷土料理写真 みそ健康づくり委員会 提供


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