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アドレナリン・ジャンキー

バンコク4日目。今回の仕事の「クライアント」であるアーティスト、Daboywayから夕方連絡があって呼ばれたのはスニーカーショップのオープニング。地図を見たら真っ赤っ赤である。車だと1時間近くかかりそうだけれど、オートバイ・タクシーだと20分くらいの場所だった。会場についてオートバイ・タクシーを降りて、支払いをしようとしたら財布がない。結局、3回、計1時間強、猛スピードで行ったり来たりすることになった。バイク・タクシーの運転手はめっちゃスピードを出すわりには、混んだエリアに入る手前に毎度、手で十字架を切っている。ひえー。ビビるから、やめてくれよ。

初めてバンコクに来たときに、オートバイ・タクシーに乗ってかなりびびったが、慣れたら楽しくなってしまった。私のようなアドレナリン・ジャンキーには、気持ちのいいレベルの刺激である。けれど友達のJPが「散々事故を目撃してモーターバイクに乗るのはやめた。お前もやめろ」と言ってたなあ。確かに命がけ感はある。しかし夕暮れ時に車で移動していたら、いつまで経ってもどこにもたどり着けない街である。

そういえば、子供の頃、スキーに夢中になったのは、顔に感じる風とそのスピード感だった。スキーは、生身の体で感じることのできる速度が一番早いのがいいのだと思っていた。が、バンコクのオートバイ・タクシーの後ろに乗って感じる速度のほうが格段に早い。

さすがにこの日はちょっとビビって、事故ったらどうなるだろうか、なんて想像し始めてしまった。今日、死んだら、自分は後悔するだろうか、とかね。もちろん、死にたくはない。なるべく長く生きたい。けれど、人生のモットーのひとつは、「明日死んでもいいように生きる」である。やりたいことはやる、行きたいところに行く、といつも呪文のように唱えているのはそのためだ。

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