見出し画像

日記12月8日−14日 沖縄・福岡・熊本・東京

*1週間分の日記をまとめてアップしています。初月は無料です。

12月8日

 今帰仁でのイベント「植物と人」の3日目。植物や自然を生業に取り入れている人たちが手作りで開催した小さなフェスである。
 肉を食べなくなって久しく、消化酵素がないために、肉を食べると翌日の倦怠感がすごいということがある。前夜、ヤギの肉を食べたので、寝覚めを心配していたが、驚くほどすっきり目覚めて、みんなが起きる前にシャワーを浴びた。肉が体質に合わないと思っていても、肉によって違うのだという当たり前のことにハッとなる。有機で栽培された草木を食べている動物を食べると、そこまで具合が悪くならない。
 2日間、沖縄らしくない雨模様だったのが、最終日はついに晴れた。朝食を食べに波羅蜜に行くと、子供たちが車にジュゴンの絵を描いている。辺野古でずっと基地建設の活動しているというおじさんが、ずっとジュゴンの絵のついた車に乗っていたのだが、車が変わったので、子供たちに絵を描いてもらっているのだという。子供たちが、譲り合ったり、助け合ったりしながら、どんどんジュゴンやサンゴ、亀の絵を描いていく。ときどきちょっぴり言い争いなどをしながら。

 波羅蜜では、2階のスペースで、木漆工渡慶次と植物染めのKittaさんが展示会をやっていて、Kittaさんのカバーオールを購入。「心に風」のブースでは、乾燥したホワイトセージとローズマリーのエッセンスを購入。ホワイトセージは、アメリカのサウスウェストで作ったものが売られているのを見ることがあるのだが、淡路島で育ったセージはもりもりと元気いっぱいな感じで印象がずいぶん違う。
 イベントは夕方からだったので、車何台かで、世界遺産である今帰仁城址に行った。伊東家の双子たち(7歳)は小人を探している。こういうところにいるはずだ、というのである。けれど「小人らしき生き物を見た」と言っても信じてくれない。
 城址でみんなはアイスクリームを食べたが、アイスクリームを食べるとすぐに腹痛を起こす自分は、コーヒーを呑んだ。35(さんご)コーヒーという屋台では、売上の3.5%をサンゴの再生に寄付しているという。
 その後、宮里千里さんにくっついて海辺に。リゾートではないビーチには私たちしかいない。大量のサンゴが浜に打ち上げられていて、子供たちは大興奮。サンゴを組み合わせて作品にしたり、お店やさんごっこを始めたり。羽理(ばり)が、ヤドカリを見つけて見せてくれた。少しずつ日が傾きかけたとき、少し離れて、海辺にいるみんなの姿を見た。沖縄のように海が近くに存在する場所で、みんなと一緒にいること。美しい4日間の沖縄滞在の中に、こうやって仲間たちと一緒に海を見る時間ができたこと、当たり前のように存在しているようで、実はこんなことはなかなか起きない。ふっと過ぎていってしまう時間を噛み締めて感謝。
 最終日のイベントには「胃袋」の関根麻子さんも来ていた。席が極端に少なく、ファンが極端に多いので、なかなか食べることができない店。去年、仕事で滞在していたときに、奇跡的なキャンセル待ちが出て訪れることができて、そのときに仲良くなった美しい人。今回も、もし「胃袋」でもう一度食べることができるのなら、一日沖縄入りを早めたいなどと思っていたのだが、あいにくその日が定休日で断念していたという経緯があった。
 先日、現美のミナ・ペルホネンの展示で見た藤井光さんのビデオ作品の中に、あさこさんの姿を見つけて、会いたいなと思ったけれど、今回の日程では無理だと思っていたら、あさこさんはここで会えると思っていてくれたらしい。今夜のご飯には、あさこさんも参加していた。なんて贅沢なんだろう。
 夜のイベントでは、リレートークをやるということだったのだが、結局、時間的な問題で、るいくん(島本塁)とKittaさんのトークになった。そして「一番遠くから来た」ということで、指名いただいてトークに参加した。今の日本がどう見えているか、という質問に、世の中の進み方に危機感を抱いていること、けれど同時に、その中でこういう催しが起きることに小さな希望を持っていること。そしてヤギの肉を食べたこと、そして自分の体が拒否反応をまったく示さなかったから、早くに目が覚めたことなどを話した。
 トークが終わると、双子のひとりである”りゅうりゅう”が待っていて、「ねーねは今日早く起きたんでしょう?」という。朝、自分たちの部屋の前に来たかというのだ。行ってない、というと変な顔をする。誰かが早朝通ったというのだ。子どもたちは妖怪が好きだ。だから「妖怪じゃないの?」と言ってみた。たまたまそこにいた山野くん(英之)が「島本って妖怪なんだぜ。あいつは影がないんだよ」と適当なことを言うので、私も話を合わせることにした。5歳の女児が「そんなわけない」というので、「確認してくればいいじゃん」というと、子供たちは、すぐにるいくんを探しに行った。後をついていくと、「やっぱり影がある」と騒いでいる。勘の良いるいくんは「今夜はお酒も呑んじゃったし、影が出ちゃったかな」と話を合わせる。さすがに子供たちは騙されない。その後、子どもたちに取り囲まれて「ねーねは話を合わせた」「嘘をついた」と散々責められた。大人が思うよりずっと賢いのだ。
 イベントの最後は、Olaibi Aiちゃんの演奏。思えば、ドラムなしの演奏を見るのは初めてだ。けれどこの地と、このイベントに、ドラムがないということがとてもふさわしいことのように思えた。静かな迫力にさっきまで好き勝手に騒いでいた子供たちもすっかり見入っている。私もあいちゃんの歌の一節「探さないで」が胸に迫って、ちょっと涙が出た。自分はいつも何かを探しているのだ。
 ところで私は、あいちゃんの「みみはわす」に文章を提供したのだが、そのCDが今も売られていることに恥ずかしさを禁じえない。あの文章は、あいちゃんが送ってくれた音源を、ハワイで聴き、書いたものだ。大山(だいせん)の森林に手作りで建てた家にあいちゃんを訪ねる前に。ああ、書き直したい。
 楽しい時間はいつも突然終わる。イベントが終わって、荷物を片付け、みんなにお別れを言い、車に乗り込んだ。明日仕事の人もいるし、子供たちは学校だ。自分も福岡に出発することになっている。バタバタしてお別れを言いそびれた人たちもいた。
 那覇の伊東家に戻り、車を運転してくれた伊東高志くん、綾羽、あやめん、るいくんで最後の一杯ーーーのつもりが高揚していたのか以外と呑み続けてしまい、結局、最後はベロベロだった。

ここから先は

7,805字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?