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佐久間裕美子のMyLittleNewYorkTimes

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書籍化したMy Little New York Timesから1年前の今日の日記と今年の日記を対にして不定期にお届けします。
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#あっち行ったりこっち行ったり

6月3日 革命が起きている

スクリーンに釘付けになりながら、各地のデモの様子を見ているときに、「革命が起きてるんだ」と思う瞬間があった。 そう思っていたら、タイムラインに、ニューヨーク・タイムスのチャールズ・ブロウのツイートが流れてきた。 革命はテレビ中継されない、とうたったギル・スコット・ヘロンは、この様子を空から見ているだろうか。そして何を思うだろうか。 ギル・スコット・ヘロンを知らない人は、ぜひ聴いてみてください。 どうやら革命は、日本には伝わっていないらしい。 #blacklivesm

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6月2日 #blacklivesmatter 2

昨晩、トランプのスピーチがあるというのは知っていたが、安らかな気持ちで眠るために、先送りにしたら、朝一番に見る結果になってしまい、一日の始まりが台無しになった。どっちにしても負けな展開だ。 ホワイトハウスの近くの教会の前で、聖書を片手にしたトランプの写真を撮るために、デモ隊に催涙ガスをかまして排除したのだという。アホすぎて涙が出る。教会の司祭がブチギレている。 片目で見るところ、日本のこの事件についての関心は高そうに見える一方で、報道の内容を見るとどこかとんちんかんである

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6月1日 #blacklivesmatter

大変な週末だった。 警察によるジョージ・フロイドさんの殺人事件への抗議運動が、昼間、平和に行われる模様を、デモが起きると必ず飛び出していくフォトグラファーたちのインスタ・ストーリーで追った。 最初は、デモに参加している人たちの間隔やマスクをしているかを気にかけていたのだが、だんだん不穏な空気が漂い始めるのがわかった。日が落ちるのが近づく時間帯から、状況が急激に悪化して、パンデミックが起きていることを忘れさせるインパクトの事態に発展した。見る写真が平和なデモ隊から、警察とデ

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5月29日 警察による暴力

ミネアポリスのジョージ・フロイドさんという人が、警察に殺された。「息ができない」と悲痛な声を上げているのに警官が首を膝で抑えられ続ける映像が拡散された。 ミネアポリスから始まった抗議運動はかなりの規模に発展し、衝突や逮捕も起きている。昨晩は警察署が燃える事態に発展した。そして今日はアメリカ各地で抗議運動が行われた。 ジョージ・フロイドさんを殺した警官には、これまでもたびたび市民からの苦情が出ていた。過去に、丸腰の市民を脅したり、撃ったこともある。今日、逮捕されて起訴された

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5月27日 誹謗中傷のこと

SNSの誹謗中傷に追い詰められた木村花さんという人が自ら死を選んだという痛ましい事件のことをずっと考えているが、うまく言葉が紡げない。 オンラインのコメント欄が荒れること、相手を傷つけるために言葉が選ばれること、酷い酷いとは思ってきたが、自分ですら「しょうがないこと」と片付けて来た気がする。コメント欄が荒れる媒体には書かない、SNSにコミットしすぎない、自分が防御策を張るしかないのだと、思ってきた気がする。理不尽なことや明らかに事実と違うこと、たまには「野垂れ死ね」などの罵

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5月27日 郵政公社を救え

誰とも会わない生活をしているが、一人だけ毎日顔を見る人がいる。それは山の深いところまで郵便を届けてくれる配達の女性である。こういう生活をしていると、彼女の顔を見るだけでもほっとする。ところがうちに届くのは、何度やめる手続きをしてもやってくるバルクのジャンク・メールがほとんどである。ビジネスとして非常に効率が悪いことはよくわかる。 アメリカの郵政公社USPSがヤバいことになっている。このままいけば、秋には資金が枯渇して営業を続けていけなくなるという。 初めてアメリカに来たと

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5月26日 明るい未来を想像する

未来、という言葉がこんなに心もとないことがあっただろうか。 これまで、私の活動の中に、「未来」という言葉はわりと当たり前に存在してきた。ポッドキャストのタイトルは「こんにちは未来」だし、Wiredでは「はじまりの小さな場所」というタイトルで、未来につながるアイディアを柱にしたスタートアップや団体の取材をしている。そして、未来のことばかりを考えている。旅の未来、学校の未来、経済の未来、小売の未来、ファッションの未来、恋愛の未来・・・ 未来のことばかりを考えている、というわり

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5月25日

メモリアル・デー。戦没者追悼記念日である。普段は、休日がほぼ関係のない生活をしているので気に留めないことも多いのだが、スーパーで愛国グッズが売られている様子や、ビーチが開くかどうかが大きな関心ごとになっているのを見て、そうだった、メモリアル・デーは、夏の始まりとして大きな意味を持つ休日なのだったと思い出した。 ニューヨークは1日あたりの死者の数が100人を減ったことで(それでもとても多いけれど)、金曜日から10人以下の集まりがソーシャル・ディスタンスを保つことを条件に許可さ

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5月23日 利便性の裏にあるもの

先日、ロックダウンになってから初めて、ピザが食べたいと思い、Doordashというデリバリーサービスから夕食を取ろうとした結果、1時間半待って、注文が届かない、ということがあった。カスタマーサービスによると、システム障害で、レストランが注文を受けられなかったということだった。それでも「ダッシャー」と呼ばれるデリバリー担当がレストランまで行き、ピザの準備ができていないということがわかった。私は払ったお金を回収したが、デリバリーに向かった人は無駄足になったのだろうか。Doorda

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5月22日 未来の仕事場

WFH(ワーク・フロム・ホーム)が始まって約2ヶ月が経った。個人的には、仕事のやり取りのメールの返信がいつもよりスローな気がするが、世の中の生産性は、下がるどころかむしろ上がっているという。 Twitter、ナスダックのように、WFH(ワーク・フロム・ホーム)を恒常的なオプションとして従業員に提案することをすでに発表している会社もある。フェイスブックは、自宅勤務は取り入れるが、それにあわせて給料を調整するかもしれない。そこまで長期的な自宅勤務にコミットしていない会社も、年内

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5月21日 ロックダウンによる空気汚染削減は本当か

ロックダウンの初期の頃に、こんなに空気がきれいになって山が見えるようになったよ、とか、動物たちがのびのびしてるよ、というレポートが多々出ていて、資本主義が強制的にブレーキをかけられているのだな、などとほっこりしていたのもつかの間、科学的なデータが出てくると、やっぱりことはそこまで単純ではないのだということがよくわかる。 数日前に出たNPRの記事のデータを見ると、これだけ大幅に経済活動が縮小しても、実際、オゾンのレベルがそこまで削減していないのである。このコロナによって偶発的

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5月20日 食のサプライチェーン

コロナウィルスのロックダウンが始まった頃、食糧業界から「食材は大丈夫です」というメッセージが発信されていたが、あれから2ヶ月、状況は劇的に変わった。外食産業に食材を提供していた業者は、商品の買い手を失い、たくさんの食糧が廃棄処分された。食肉工場でクラスターが発生し、工場が営業を続けることができなくなったために、大量の動物が屠殺されることになった。一方、失業者が増え、貧困が深刻化する中で、子供の5人に1人が食べられない状態に陥っている。食関係の非営利団体が、外食業界に供給するた

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5月20日 コロナ時代の良い会社

ロックダウンの初期の頃、道の反対側に住んでいるご近所さんが道の向こうから「あそこのスーパーがおすすめよ、働いている人たちも全員マスクと手袋をしているし、カートの消毒もちゃんとしているから」と教えてくれた。働く人の安全をきちんと確保している場所で物を買うことが、自分たちの安全にもつながるのだ、とわかった瞬間であった。 逆にいえば、これは、働く人たちの安全確保のために万策を尽くしている企業ばかりでないということであって、Amazonのウェアハウスとか、クラスタ化して閉鎖になった

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日記:5月19日 コロナ時代の抵抗運動

コロナ禍は、社会全体が変わる最大のチャンスで、逆に言えば、こんなことが起きているのに変われなかったらよっぽど終わっている、と思うのだが、それでもそういう展開になりかねない火種をいろんなところで見るにつけやきもきしている。相変わらず株式市場が活発なこともそうだし、ブルックリンの不動産売買がスーパーリッチ同士の取引によって史上最高高を記録したこともそうだ。OxfamがWHOの加盟国に呼びかけている世界共通のワクチン開発に、アメリカが参加しない意向を示しているという話もある。気がつ

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