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パンってどうやって作るの?【パン1年生のための、ちょうどいいイラストと程よく専門的なパンノート】

専門書はモノクロ文章多めで分かりにくい、でも本屋さんの本より突っ込んだ内容を知りたいという、パンの初心者、専門学生、パン屋1年生のために、程よく専門的だけど、イラスト多めで読みやすい・分かりやすい、ちょうどいい情報を発信をしてます。本記事はパンの作り方の概要版となります。

0.工程の全体像

具体的な作り方の説明に入る前に、パン作りの工程の全体像を見ていきましょう。

1.計量
 (材料を正確に計る)
2.ミキシング
 (生地をこねる)
3.1次発酵/フロアタイム【 60分~】
 (こねた生地を発酵させる)
4.パンチ
 (1次発酵の途中で行う生地のガス抜き)
5.分割・丸め
 (生地をカットしてまとめる)
6.ベンチタイム【10~20分】
 (生地を休ませる)
7.成形
 (パンの形を作る)
8.最終発酵/ホイロ【60~120分】
 (成形した生地を発酵させる)
9.焼成 
 (生地を焼いてパンにする)

作業の合計時間は、仕込み量やパンの種類によって違いがでます。シンプルな食事ロールをストレート法で作る場合、5時間ほどかかります。  

ストレート法:一日で、生地を捏ねて焼き上げる、基本の製法

ストレート法以外にも、パン生地を一晩寝かせる、オーバーナイト法や、生地の一部だけを先に仕込む、中種法など、パンの製法は様々あります。製法によっても、パン作りにかかる時間が違ってきます。

それでは、それぞれの工程の詳細を見ていきましょう↓↓

1.計量

パン作り最初のステップが、正確な計量です。

パン作りの材料にはイーストや塩など、粉の量に対してわずか2%ほどしか配合されていない材料もあります。なので、正確に、0.1g単位で計量できる、デジタルの計りを利用しましょう!

★ワンポイントアドバイス
①分量の多いものから計る
②パン酵母(イースト)は捏ねる直前まで、砂糖と塩とは絶対に触れないようにする
適正な捏ね上げ温度になるよう、水や牛乳などの材料をレンチンしたり、冷蔵庫で冷やしたり、調整をする。

捏ね上げ温度:パン生地が捏ねあがったときの温度。この温度はパンの種類によって異なり、例えば食パンの場合、26~28℃、バゲットは20℃前後が適正。捏ね上げ温度によって、発酵時間やパンの出来が変わってくる

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2.ミキシング(生地をこねる)

ミキシングとは、材料を混ぜて、捏ねる(こねる)工程のことです。本記事では、正しい手捏ねの方法をご紹介します:

① 粉、砂糖、塩、イーストは一度よく混ぜて、ムラができないようにします。特にイーストは液分を加えると、だまになりやすいので、粉類とよく合わせる。

②液分を①に投入し混ぜます。粉けがなくなり、まとまったらボールから出す。

③生地がひとかたまりになるまで、作業台の上に生地をこすりつけるイメージで捏ねていく。

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④まとまった生地は、まだ表面がぶつぶつしているので、仕上げていく。
片手で生地を持ち、台にばちんと叩きつける。叩きつけたら、1回生地を奥にたたんで、また叩きつけたたんでという動きを続ける。生地に物理的な力を加え、グルテン結合と加工硬化を起こすのが、目的。

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⑤続けると、表面がなめらかになり、つやが出はじめる。生地を伸ばすと、膜ができるが、やや粗く裂けてしまう状態

⑥ここで、油脂(バター)を投入。

⑦バターを入れたら、触感がやわらかく、とろみ感がでてくるまで捏ねます。生地を伸ばすと、うすい膜ができ、さらに伸ばすと膜がすっと破ける。これが、捏ね上げOKサインです。

捏ね上げの見極め・目安:

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⑧捏ねあがった生地は、表面をきれいに張らせて整え、おしりを下にしてボールにもどします。外側の生地を中心に入れ込むイメージで行います。

3ー1.1次発酵(フロアタイム)

1次発酵とは、ミキシング後にとる最初の発酵時間のことです。

ミキシングで材料が合わさると、小麦粉内のたんぱく質とでんぷんが変化し、それにより、発酵が進みます:
①小麦粉のたんぱく質が捏ねられて、パンの骨格「グルテン」が生成され、
②小麦粉のでんぷんが、酵素の働きで、小さい糖分に分解され、
③パン酵母(イースト)が②を食べて、発酵をはじめ、発酵ガスを生成し
④パン酵母が生成した発酵ガス③は、グルテン①の網目に包み込まれて、生地が膨らむ。これが発酵。
⑤その他の酵素や乳酸菌、酢酸菌などの作用で熟成やパンの香り成分が生成されます。

このように、ミキシング後は、生地の中で様々なことが同時並行で起こります。1次発酵は、これらの変化が起こるのを待つ大切な時間です。

発酵全体像

3-2.1次発酵終了の見極め

1次発酵は、どれくら発酵すればよいのか?
見極めのポイントは2つあります。フィンガーテストと膨張率です。

★ポイント① フィンガーテスト
発酵した生地に指を入れて穴を作り、生地の戻り具合(弾力)を観察します。指を抜いた後、生地に指の跡がのこり、ほとんど戻ってこなかったら、適正な発酵と言えます。

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【発酵不足】指を抜いた際、生地が反発して戻ってくる場合は、まだ生地が緩んでいない状態、つまり、発酵が足りていない状態です。もう少し発酵を取ります。

【過発酵】逆に指で生地を押した圧力で、生地から空気が抜けしぼんでしまった場合は、発酵し過ぎた状態です。ここからのリカバリーは難しいので、思い切って平らに成形してピザにするなど、アレンジをすれば、おいしくいただけます。

★ポイント②膨張率
膨張率とは、生地の膨らみ具合のことです。生地が発効前に比べて2倍程度の大きさになればOKです。(厳密には、発酵前の生地体積の2.5倍~3倍

4.パンチ

パンチとは1次発酵の途中で、生地に力を入れる工程です。レシピによってパンチの有無があります。

パンチの正しいやり方

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パンチのポイント
パンチでは、大きなガスを抜くのがポイントです。力まかせに抜くのではなく、あくまでも不均一な大きいガスを抜き、生地内の小さいガスが均等になるイメージで行います。

★パンチの目安(図の工程⑪参照)
生地の表面がピンと張り、なめらかでツヤがある状態。さわわると、弾力も感じられる程度に生地を張らせます。

5.分割丸め

分割丸めとは、1次発酵を終えた生地を均等に分割し、丸めたりして生地をまとめる工程です。生地を丸めなおすことで、表面の凹凸やべたつきがなくなり、成形がしやすくなるという効果があります。

ポイント

①生地は正確に計量すると、最終発酵と焼き上がりが均一になります。
生地を張らせすぎない。ここでの丸めは、生地の最終形を作る「成形」の下準備なので、ぎゅうぎゅうに丸めず、自然と丸まる程度にする:

丸め方(2種類)

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6.ベンチタイム

分割丸めが終わったら、生地を緩ませる時間(ベンチタイム)を、15分~取ります。ベンチタイムを取ることで、分割丸めして引き締まった生地を再び緩めて、伸びやすい状態にし、スムーズに成形できるようにします。

★ベンチタイム終了の見極め
生地を指で押し、指の跡がほんのり残るくらい緩んだらOKです。
※緩ませすぎると、丸めた生地がどんどん横にだれていきます。結果、焼成のさいに、窯伸びしずらいダレた焼き上がりになります。

7.成形

成形は、パン生地を最終形に整える工程です。そしてこの工程が、生地に手を加えられる最後の工程となります。形を整えるのはもちろん、その後の最終発酵と焼成時の膨らみに生地が耐えられるよう、生地の力を強化させることが重要です。

★成型のポイントとコツ
①焼きあがったパンの形と大きさを想像して成形する
最終発酵と焼成を終えた生地は今の2倍以上膨らみます。

②おしり(とじ目)は必ず閉じる
どのような成形でも、とじ目はかならずしっかり閉じないと、そこから生地の力が抜けて、ダレた仕上がりになります。特に、クリームやあんこ、カレー等を包む場合は気を付ける。

★成型のバリエーション
基本となる丸めの他、バゲット成形、包餡、編み込み、ロールなどなど、成形方法は無限となります。

■基本の丸め

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■包餡

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8.ホイロ(最終発酵)

ホイロとは、焼成前の最終発酵のことです。2次発酵ともいいます。

★最終発酵終了の目安(もう焼いていいのか?の判断基準)

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①生地を触って確認
生地の表面を指で軽く押し、指の形が残っていればOKです。跳ね返ってきたらもう少し待つ。

膨張率を見る
成形終了時より、~3倍の大きさになっていればOKです。

★ホイロの注意点
①乾燥させない
生地表面の皮が乾燥すると、つっぱってしまい、発酵ガスが生成されても生地が均等にのびのび伸びません。

②放置させすぎない
ここで発酵オーバーになったら取り戻せませ

③待つのも大事
発酵が若いうちに焼成すると、ボリュームの小さいパンになってしまいます。時には待つのも大事です。

9.焼成

焼成とは、生地を焼き上げてパンにする工程です。

★ポイント
①オーブンを予熱させ、庫内温度を必ず確認する
レシピの適正温度で焼成するため、予めオーブンを予熱で温めることが重要。また、焼いている途中でパンの様子を見るために扉を開けるのは、庫内温度を下げるので、なるべく開けない。

②途中で反転させる
焼きムラ防止のため、一度鉄板の向きを入れ替える。オーブンの手前側は焼き色が付きづらく、逆に奥側の生地はこんがりし過ぎてしまいます。

③焼きあがったらショックを与える

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オーブンから出したらすぐにショックを与え、風通しの良いところで粗熱を取ります。

最後に

本記事では、パンの作り方の概要版ということで、各工程の意味と注意点を網羅的に解説しました。工程の意味や仕組みを理解することで、生地作りがより楽しくなるかと思います。それぞれの工程の詳細については、まだまだこれから随時追記していこうと思うので、あわせてご参照ください。それでは今日も、パン作り楽しんでください:)

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