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『頑張ってね』と『頑張ってるね』

それまでこの言葉にそんな大きな違いがある事を考えた事もなかった。


私には重度の障害を持つ子がいる。


産まれてすぐに一生寝たきりだと宣告され、
少しでも奇跡が起こるように願い
毎日毎日、手足をマッサージしていた。

   
親、身内、友人達に会う度に

     『頑張ってね』

と励まされた。

特に産まれてから1歳になるまでに
何回、何十回、言われただろう。
時には涙ながらに励ましてくれるから
「私は大丈夫」アピールをするようになっていた。

テレビでは障害を持つ我が子の将来を悲観し
心中を図るニュースが流れた。

母「あんたは強い子で良かったわ。」 

その頃の私はもう泣けなくなっていた。
そして何度も言われる『頑張ってね』に

私、頑張ってないの?
頑張りが足りないの?
これ以上、どうしたらいいの?

と苛立つようになっていた。
 
そんな時に言われた一言。 

『頑張ってるね』

涙が止まらなかった。

この人だけが世界中で私の事を理解してくれてると本気で思った。

たった一文字『る』が入るか入らないだけで
こんなに違うんだ。
こんな少しの事で気持ちが浮き沈みするのは
かなり精神的に参ってたのだろう。

でもあの時の私は確実に救われた。

大袈裟かも知れないけど今、生きているのも
この『頑張ってるね』のおかげだ。
今、私は障害を持つ若いお母さんと話す時には『頑張ってね』は言わず『頑張ってるね』
と言うようにしている。

それだけで涙が溢れそうなのがわかる。
たぶん、周りの『頑張ってね』に翻弄されているのだろう。

周りが悪いのではない。誰も悪くない。
人はいつも同じテンションではないから
時にそれが重荷にもなる。

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あれから20年。  

子供は今年22歳。

『頑張ってるね』を言ってくれた人は
今私の主人となり、

未来について語る毎日を楽しんでいる。

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