「短歌人」2022年8月号掲載作品
記憶
記憶の中に一樹はありていつも夏 陽ざしを浴びて青葉広げて
かなしみてこころの森を歩むとき占星術は役に立たない
おほぞらが乳白色に染まるころ折れた翼でわたくしは飛ぶ
新緑の道にボサノヴァ歌はれてきれいなみづを飲むやうに聴く
ぬばたまのオペラケーキに寄り添はれあしびきのモンブランそびゆる
あんなにもあかるい私語に満ちてゐたカフェにアクリル板の林立
ゆふがたにひつそりとあるものの影まご引きされた詩歌のやうに
(同人1欄 冨樫由美子)
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