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バゲット100本ノック(文字通り)32本目

アメリカに永住するということは、いろんなことを諦めていかなければならない。普段から当たり前のように食べているものが食べられなくなる、というのもそのひとつ。私はもともとそんなに和食に固執してない上に、最近は魚沼産でなくても炊き方や炊飯器によってお米が本当に美味しく感じるので、要するに、道具さえきちんと揃えれば美味しい白ごはんと漬け物は、アメリカでも食べられる、と考えてる。

そこで、日本で美味しいものは何?恋しくなるのは何?と聞かれたら、きっと私は真っ先に、ヤマザキのパン。と言う(井村屋の肉まんと東急ストアの塩ジャケが後に続く)。

アメリカに住んだことのある人なら知ってると思う。アメリカのスーパーではおいしいパンは見つからない。サンドイッチを食べる文化にも関わらず、あの程度のパンで良いのか、と不思議になる。

小さい時からヤマザキのしっとりふわふわの真っ白な食パンや味わい深いフランスパンで育ってきたので、あれらが食べられなくなる、と思い始めたときから私のパン作り修行が始まった。

去年パン教室に通った。先生はある会社の研究員でパン製造を担当されていたらしく、イーストの働きやグルテンの構造、温度と湿度の管理を理論から教え込む。原理原則に従えばパン作りは必ず上手になる!と信じてやまない方で、来ている生徒さんはなぜかほとんど経験者だった。みんな学び直しをしに来ている、という感じ。初心者は私だけでちょっと居心地悪かった。なにしろ捏ねたり丸めたり、最後の成形作業などでちょっとでもその理論から外れてしまうやり方(故意にでなくても)をすると、焼き上がりまでの3時間ねちねち言われ、オーブンから出した後も私のパンを指差しながら、ほら、でしょ、原理原則がわかってないとこうなるのよ、とみんなの前で公開処刑をされる。

半年間、これまで経験したことないような苦痛に耐えた後もしばらく自宅で毎日パンを捏ねていたのだけど、室温や湿度の管理、電気オーブンの仕様など原理原則を守ろうとすればするほど、家にあるもので守ろうとすること自体、大体無理なわけで、その後スランプを口実に半年くらいパン焼き作業から離れ、その間にホームベーカリーを新調した(笑)。またこのホームベーカリーで作る食パンが美味しい。これでいいじゃないの、と食パン問題はとりあえず解決。

さて、食パン問題は解決したので、次はバケット。ちなみにバケットとフランスパンって同じもの?私が好きなのはフランスパンなの?バケットなの?という疑問があがったのでちょっとググってみた。

バケットとフランスパンは基本的に同じもの。『フランスパン』というのは総称で、その中にいろんな種類のフランスパンがあるってことらしい。

実際こんなにたくさん種類がある。

≪出典 macaroni≫

バゲットって美味しい。スライスしたバゲットにクリチや生ハムのせたらもちろん美味しいし、でもうちでは焼かずにそのままもぐもぐ食べることが主流。食パンよりも実は好き。

そしてバゲット作りの修行が始まった。バゲットは小麦粉と水と塩とイーストだけで作る。イーストが発酵するためには糖分が必要となる。バゲット作りにはその所謂イーストの『ごはん』となる糖分はつかわない。小麦粉は後々糖分になるという反応を使い発酵させることになるので、イーストの発酵に大切な工程である、一次発酵は時間をかけることになる。それが長時間低温発酵。長時間低温発酵は①冷蔵庫の野菜かごで10-14時間もしくは室温(20℃-24℃)で4-6時間って書いてあるレシピが多い。長い時間かけて発酵させ、二倍の大きさになった生地をまず②ベンチタイム、その後③成形し、④35℃で30分二次発酵させる。その後⑤クープを入れ、⑦250℃に温度をあげておいたオーブンに入れ、15分-18分。⑥オーブンに入れる超直前に霧吹きで湿気を入れる。

①は焼く前の日にする作業。いろんなレシピをやってみたけどこの本で紹介されているような四角いタッパーでやるのが一番簡単で掃除が楽なのでおすすめ。ちなみにグルテンが残っている小麦粉は排水溝にこびりついてしまうこともあるので、流さず、まず乾かしてカリカリして捨てるのが一番よい。

この本掲載の作り方は参考にさせてもらうけど、レシピは採用しない。ここのレシピに忠実になるとアメリカでコントレックスとかリスドォルとかモルトを探しまわることになるので、別のレシピを使う。いろんなレシピで試してきて、今日の私の配合はこれ。

バケット≪小さめ2本≫

  • 薄力粉   80g

  • 強力粉   120g

  • 塩           4.0g

  • 水   140g

  • ドライイースト 1.0g

いつもと違うやり方してみた32本目

  • ①【一次発酵】室温で発酵させてから冷蔵庫に入れるより、最初から最後まで冷蔵庫で発酵させたほうが安定していた。

  • ②【ベンチタイム】打ち粉を生地と手に充分につけてゆるく巻く。きれいな形にしておく。オーブン250℃に設定、予熱(鉄板も入れておく)。2段設定にして高温が得られる上段で焼くことにしてみる。

  • ③【成形】ひっぱる、張らす、伸ばす、の作業は迷わずに一気にやる!②の工程でキレイな形にしたので今回は両手で転がしたとき、とてもきれいな棒の形になった。

  • ④【二次発酵】だれないように段ボールで作った台にのせ、45Lのごみ袋に入れて霧吹きで湿気を入れ、お湯をわかしたプライパンの上に乗せた。いい感じであったかい。

  • ⑤生地に粉をふりかけてクープナイフで一気に切り込みを入れる。かなりザクっと思い切りナイフを入れる感じで。

  • ⑥予熱した鉄板に霧吹きで水分を入れ蒸気を発生させ、⑦オーブンシートをかぶせた生地を急いでオーブンに入れる。250℃で5分、230℃で20分。

32本目にしてやっと生焼き問題が解決。工程②での工夫が功を成した。やっぱり高温で焼く、というのは重要らしい。うちのオーブンは250℃までしか上がらず、しかも2003年製、ということに今日気が付く。。。20年も使ってるのか!! そりゃ焼きムラもでるし庫内の温度だって不安定になるよな、と。それにしてもよく働いてくれているよ、このオーブンは。


32本目。240℃で20分。ちょっと焼きすぎちゃった。
生焼き脱出。

ところでクープを入れるときは棒状に生地を丸めた方向を意識しないとうまく開かないらしい。なので工程④での生地の向きを覚えておくことが大切なんだけど、左利きの場合はどうしたらいいかは、書いてくれてないので、だれか教えてもらえると嬉しいです。


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