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「自然農」に辿り着くまで

香川県の小豆島で農業を営んでいる私たち。
川口由一さんが提唱された、自然農という農法を実践しています。

「耕さない」
「草や虫を敵としない」
「肥料や農薬を持ち込まない」
をベースとする自然農。
(最近よく耳にする、福岡正信さんが提唱された「自然農法」は、より自然の中で、自然に委ねる農法で、自然農とはまた異なるものと考えています)

草刈機以外は機械を使わないという、一見無謀に思えるような方法で
木が生い茂る場所を手作業で開墾するところから始め、
鎌と鍬で、できる限り自然の営みに沿い、お野菜やお米、果樹を育てています。

ここでは、私がこの自然農に辿り着くまでを綴っていこうと思います。



「自己紹介」の投稿でも書いたように、
数年前、思うように身体を動かせない、歩き回れない日々が続いていました。

新卒で入った会社を退職し、その後も特にこれといってやりたい事もなく、派遣会社に登録して仕事に就くも、やりがいを見出せなかったり、人間関係で悩んだり、、、の繰り返し。

夫の初めての転勤で見知らぬ土地へ引っ越し、環境の変化や、パート先でのストレスで生理が止まったり。
やっと新しい土地での生活にも慣れてきたと思ったら、突然の激痛で、動けなくなったのです。

今となっては、身体からの、魂からの、「もっとわたしをみて!大切にして!」というサインだったんだと思うのですが、
当時は、社会に出ることもできない、何も生み出せない、そして身体さえも動かなくなった自分に絶望していて。
思うように動けないので、この頃は専業主婦として家にいましたが、
でも、どこか、絶対に治るし大丈夫だっていう確信はあって、
必死に、情報を探し求めていたのでした。


身体のことを調べていくうちに、自然と、マスメディアには出てこない社会システムを知るようになり、消費社会への嫌悪感や、そのシステムに組み込まれた生活を続けることの罪悪感のようなものが芽生えてきていました。

いわゆる、外側のせいにして、意識を外部に向けて、自分に向き合うことを避けていたんですよね。
夫にも「気づいて」ほしくて、情報や価値観を押し付けることも多々ありました。。。


「何もない」と思っていた自分自身に焦り、失望し、一向に収まらない痛みに苦しむ中、
SNSを見ていると、家庭菜園をはじめたり、農的暮らしをする人たちの姿が目に留まりました。
「地に足のついた生活をしている」感じがとっても魅力的に思えたのです。



そうこうしているうちに、異動が決まり、次の赴任先、岐阜へ。

広島での生活を経て、自然に癒しを感じ、畑に興味を持ち始めていた私。
夫も、元々プランター菜園や盆栽をしていて、自然に近い暮らしに強い関心を持っていました。
2020年、丁度コロナ渦が始まった頃で、夫も時間ができたのをきっかけに、市民農園で畑を借り、家庭菜園を始めることになりました。

まだ身体の痛みや強張りもあって、しゃがむことも出来なかったのに、
多分、なんとかして、人生を変えるきっかけを掴みたかったのでしょう。痛みがありながらも、週末は夫と畑に通っていました。

そんな日々を送るうちに、少しずつですが、痛みも和らぎ、身体の可動域も広がっていったのでした。

この頃には、普段使う食材もできる限りオーガニックのものを取り入れていたので、自分たちで作る野菜も、もちろん無農薬で、と考えていましたが、
手に取った家庭菜園の本を参考に、はじめは市販の鶏糞や牛糞などを畑に入れたり、黒マルチを使ったりもしていました。
でも、自分たちで、ゼロから生み出している、生み出せている、ということがただただ嬉しかったのです。


そんな中、YouTubeや書籍で、無農薬での栽培方法について調べていると、
農薬はもちろん、肥料も、そして草も敵としない、「自然農」という方法が
あると知りました。

必要不可欠なものだと思っていた肥料を使わなくてもよくて、
その場に生きる草や虫を、「循環」の一部と捉える自然農。
こんなにシンプルな農の在り方があるのかと、衝撃を受けました。

動画や本のなかに映る、自然農の畑の、清々しく、凛とした様子にも心を奪われたのを覚えています。
川口さんや自然農を発信されている方の、畑に対する向き合い方にも強く惹かれて、
畑をするなら、これ以外ない、と確信したのです。

同じくらいのタイミングで、夫もYouTubeで自然農の情報を受け取っていて、自分たちの畑でも、少しずつ、自然農のあり方を実践するようになっていきました。



そこから約4年が経ちました。
現在は小豆島に移住し、就農して丸2年。

こうして振り返ってみると、私は、人生や暮らしをかけて、どこまでもゼロに向かっていこうとしていたんだなと思うのです。

夫も金融機関で勤めていましたが、その充分な収入、ステータスを手放すことに、私自身は全く不安がありませんでした。

家賃補助があったマンション暮らしから、田舎へ移住、古民家暮らしへ。
収入も比べ物にならないほど下がり、今は農業の補助金を頂いています。
そして、農に関しても、自然農という、出来る限りシンプルで、自然を信頼して寄り添おうとする在り方へ。


今思うと、「農業」がしたかったわけではなく、
根源的で、本質的な暮らし、在り方を求めていたんだろうと思います。

そして、これからも、ずっと、そこを探求していくのだろうと。



農園Instagram

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