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2023年5月 読書記録


この勢いで5月も更新するぞ〜!と入力してから2週間…
5月は文学フリマという最高のイベントに参加したので、良い刺激があったな〜。
なので、今回は文学フリマで買ったもので5月に読んだ中で、好きだった本の感想もいれてゆくう!


『侍女の物語』マーガレット・アトウッド/斎藤英治

面白かった!オーウェルの1984年のようなディストピア小説として、ガツンとくる衝撃を受けたし、今の世界は一歩間違えたらこうなるんだよ、と、この世界は現実の世界と地続きなんだよ、と、ひしひしと感じさせられた。
1984年とこの作品が違うのは、救いがあること。1984年は全く救いのない終わり方をしたからね...

物語の社会は完全に家父長制。女性が男性の付属物として管理される存在となり、主人公は侍女という、地位ある男性の家族に入り、子どもを産むこと"だけ"の役割を与えられる。侍女に、健康的なバランスのよい食事が与えられるのも、酒やタバコが禁じられているのも、全ては子を産むため。その役割を果たせないときや、役割を終えた侍女はコロニーと呼ばれる収容施設に送られる。そんな社会における侍女の一人語りで物語は進んでいく。
中盤あたりまで、これは面白いのかな?と思いながら読み進めていた。侍女の主観で語られているから、記憶が曖昧で話が掴みにくいし、過去と現在がごちゃまぜに語られているし。誰にどういう場面で語られているかも分からなかったけど、急に読者に向けて語りかける場面があり、そこから一気に惹きこまれた。
しかも、彼女はこの話を、覚悟をもって、語りかけていることが読み取れる。
勇敢で、この社会を憎み、侍女から脱却した女友達に比べて、主人公は、こんな社会に侍女として溶け込んでいたし、反乱分子であるオブフレッドに見限られていたし、流されていた人間だ。侍女という立場に疑問を強くもつわけではなく、社会を変えようという意思もなく、逃げようという希望も失った主人公が、最後は亡命できたこと(仄めかされており、確定した事実ではないが)が、私としては救いになった。このようにさらさらと社会を渡った人間が逃げられるのであれば、同じ境遇に陥った時、私も逃げられるかもしれないからね。

『ウォーク・イン・クローゼット』綿矢りさ

はいはい、またきました綿矢りさ作品。完全にブームが来ている。
この作品も相変わらずサクサク読めた。しかし、個人的には綿矢りさ作品の中ではそんなに、、、という感想。私の中では「かわいそうだね?」が最高峰。短編2編が収録されていたので、以下それぞれの感想。

・いなか、の、すとーかー
新進気鋭若手男性陶芸家が主人公。彼が故郷の田舎で陶芸の拠点を移してから、元々ついていたストーカーと、幼馴染で思いを寄せられている女性(後にストーカーと判明)に追いかけ回される話。
主人公がストーカーから学びを得て、面倒そうな人との関わりを避けるのではなく、しっかり対峙すること、自分一人の力でここまで成功したのではないことに自覚的になり、感謝するようになったことは良かった。
ただ、話が、サスペンス展開でハラハラさせられるわけでもなく、主人公とその周りの関係性を深く追求するわけでもなく、一体何に重きをおいた作品なんだろうか、、、と思った次第。
綿矢りさ作品で、男性主人公の話なら、「嫌いなら呼ぶなよ」の不倫しまくる男の話の方が好き。

・ウォーク・イン・クローゼット
こっちの方が好きな話だった!話の内容というよりは、節々に出てくる服の描写や扱い方が好き。
特に、主人公の早希の服に対する考え方や服のメンテナンスが好きなところから、服に対する愛情が窺えてキュンとした。自分の好きな服は持ってない、デートなどの相手に合わせた服しか持ち合わせてない、と思いながらも、自らの手で服をメンテナンスしていること(しかも素材ごとに分けて丁寧に!)、それに喜びを見出していることから、服への愛情と信頼が感じられる。
服のブランド名が出てきたらもっと具体的に想像出来たかな!解像度が高ければ高いほど好き!


=====ここから文学フリマ作品=====

『宵越しの銭は持たずして、今!』あそ

タイトルの英訳がThe Serious Shopping Lifeというのも好き…


人のお買い物の話ってやたらと胸が踊るよね。(私だけ?)
そんな胸躍る感情を思い起こさせてくれる作品で、うわああお買い物したい〜〜〜と奮い立たされた。笑
買ったものに愛情をもっているのが伝わるし、買うまでの過程で悩んだことや、買ってから、その物を身につけて経た思い出などなど赤裸々に語ってくれて、人のお買い物話が大好きな自分としてテンションが上がった。そうそう!こういう話が聞きたかったんだ〜!
作者の”あそ”さん、たくさんお買い物をされているからか審美眼が備わっていてかっこよい。
ジル・スチュアートの赤いヒールを履いてすっ転んだ話が好きです。

『旅ノートのススメ』にしうら染

可愛い装丁

まず、表紙が可愛い。キラキラの加工が施されてて素敵だし、装丁へのこだわりが見られる・・・
肝心の中身も、最近自分がトラベラーズノートを買って自分用旅行記録を作ろうとしているので、とても参考になった!漫画なのでサクサク読めるのもポイント。
作者の”にしうら染”さんは、旅行中に見た素敵な光景から自分の感情をしっかりメモしているらしい。すごい・・・
できるかわからないけど、自分の感情を適切に言語化したいので、マネしたくなったな〜
あと、旅先で買ったお菓子の包み紙や紅茶の包装までスクラップしてるのは目からウロコだった。そのノートの可愛いこと!


『今だから話せること』はてなブログ

会場に入って速攻で貰いに行った

匿名で、不特定多数に向けてだから、話せること。知っている人に向けてじゃないからこそ打ち明けられることって、なんだか読みたくなる。
そんな話が集まっていて、とても読み応えがあった。
「今だから」と名がつくだけあって、学生時代の自身を振り返る話が多く、自分の学生自分のイタさも思い起こした・・・けど皆様も同じように、イタかったり、恥ずかしかったり、と言えない経験をしてて安心できた。
これを無料で配布って、はてなブログすごい。


『友達以外にハマらない。』エッセイを書きたい。

サイズが可愛い

タイトル買いとは、まさにこのこと。
作者の”エッセイを書きたい”さんとブースで話し、リトルトゥースという共通点からちょっぴり盛り上がって嬉しかった〜!隣に座ってた人を指して、「職場の後輩(だったと思う・・・)を連れてきたんですよ〜!わっはっは!」と言ってて、あっけらかんとした明るい人だな〜と思っていたけど、それが文章にも表れている。
一つ一つのエピソードが、(笑いながら)なんだよ〜!、と肘で小突きたくなるような話で、好きです。絶妙に生活感があるし面白い友達の話を聞いている感覚だった。
春風亭一之輔師匠の「まくらの森の満開の下」、ぜひ読もうと思います。


『死ぬまでに消したい10のこと』野中淳

黒々としてて分厚い

読んだ後、面白すぎてびっくりした。一人の男性の人生を歩んだような、没入感があった。才能があるとは、まさにこういうことを言うんだな。
全てが、おそらく作者の”野中淳”さんの実体験なんだろうけど、まあ濃ゆい。中々ハードな話もあったので、実際に経験されたら大変だろうな・・・
いわゆる「黒歴史」を面白おかしく書いたコミカルな内容かと予想していたが、いい意味で裏切られた!
どのお話も、カッコ悪さやダサさを全く取り繕うことなく書かれていて、こういう人間臭い話が読みたい自分としてはとても満足感があった。
自分を大きく見せようとしたり、どこかに被害者意識があったりする文章って苦手なんだが、そんな節が1ミリもなくて、ただ淡々としているのも、好きなポイントの一つです。



以上!
文学フリマの本の感想を記録していなかったので書くのが大変だった・・・
こうして見ると、私は、人の恥ずかしい打ち明け話が大好きなんだという気づきを得た。

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