【番外編】廃業してゆく温泉と再生
いつも読んで下さっている方はご存知かと思いますが私の記事は温泉ばかり。
10年前から温泉沼にハマり、先日、数えたら600以上の温泉に浸かってました。
私は特に古くて、ボロ、あ!違う、鄙びた温泉が好き。地元の方々が通う、古い共同湯も大好物です。
旅館も然り。古い旅館が好きなので、奮発して文化財の宿に泊まることもありますが、家族経営の小さな旅館に泊まることの方が多いです。
そして今、そんな古い小さな旅館や小さな共同湯が抱える問題があります。経営者の高齢化、後継者不足、施設の老朽化、お湯の温度低下や枯渇などで数多くの温泉旅館や日帰り温泉施設が廃業の危機に晒されているのです。3年前からの流行病の長期化が原因で「あきらめ廃業」なんていうのもありました。
私が今まで訪れた中で廃業した旅館は10軒以上。泊まらず、日帰り入浴のみの旅館も含まれるので残念でたまらないです。
特にこちらは悲しい。日帰り利用だけだった上に、とても濃くていいお湯だったから。
含鉄-二酸化炭素-ナトリウム•カルシウム-塩化物•硫酸塩泉。成分は12g超え。
こちらは宿泊しました。私には珍しく大型旅館でしたがお湯が素晴らしく、また行きたいと検索したら廃業してました。大好きな重炭酸土類泉でした。涙
「行きたいリスト」に入っていたのに行けないまま廃業してしまった温泉もあります。
大好きな山形県のタイル浴槽がかわいい富本温泉の富本館や、赤湯温泉の共同湯など。
また、廃業を避けるために後継者を募集している温泉旅館があります。それは去年、私が豪雨の中で泊まった青森の「古遠部温泉」
去年、泊まった時に女将が「いろいろあって疲れちゃった。もう来年には辞めたい」と言ってたけど、ホントだった。
湯量も豊富で成分も濃い素晴らしいお湯が湧く秘湯の一軒宿。廃業するのは勿体ない!あの源泉にはお金に換算できないほどの価値があります。
とてもいい試みだと思います。譲渡額は土地、建物、源泉を含めて1500万円だそう。
そんな中、温泉繋がりの知り合いから古遠部温泉の事業譲渡に手を挙げるとメールが来た。以下チャットのやりとりを抜粋。
私「じゃあご夫婦で青森に移住ですね?お金だけでなく温泉への熱意も含めて審査らしいですよ」
知り合い「移住?無理でしょう。笑。大変ですよ。雪国だし、何もないし。だからお金はあるんで、あくまでも運用」
私「へ?」
知り合い「温泉旅館をやってもよくて、1500万円持ってる人いないっしょ。しっかりとした事業計画を立てて融資を受けるが現実的」
私「融資が通ればそれで第一歩ですよね?ご主人も夫婦なら十分経営出来るって言ってますし」
知り合い「資金とオペレーションは分ける。株式会社にする感じ?儲かることが前提で、立派なものを使用すると、かなり投資しなければならないのかなーとか。ローカルで通ってくれる人が多いのであれば、組合方式で日帰り専用で存続とか」
私「運用で考えてるなら最も向かないと思いますよ。家族経営じゃないと成り立たないし、株式会社にするにしても儲けたいなら温泉マニア以外の客を呼ばないと。普通民はクチコミがキツいからトイレとか改装必須だし、温泉マニアと地元の日帰り需要だけでは採算取れないと思います」
こんなやりとりをして「あー、この方とは価値観が合わないな」と思いました。何より上から目線なのが気になる。運営を「オペレーション」、地元を「ローカル」と言う。ウチの上司もそうだけど、日本語の文章に「カタカナ英語」を散りばめてくる。笑
更に、古遠部温泉は10年前に行ったきりだそうで、現場を見ていない。まさに「机上の空論」
女将と直接話したり、現状を見たらこんな考えは浮かばないはず。
移住して自ら経営される方か、地元の方に事業譲渡してもらいたいですね。そんな成功例は先日訪れた宮城県青根温泉の名号館。
2019年10月に廃業された古い旅館です。経営を引き継がれたご夫婦がカフェ兼日帰り入浴から、そして去年の7月から宿泊も始められています。
訪れた時は地元のおじ様達がいて、オーナーのお子さん(中学生⁈)がスマホの使い方をおじ様達にレクチャーしていました。微笑ましい光景。
古遠部温泉もこんな風に再生できたら理想的。
さて、古遠部温泉がどんな風に生まれ変わるのか楽しみです。これからは廃業と言う選択ではなく、再生される温泉が増えるといいなあ。
おわり
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