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神宮外苑の“今” 進むスクラップ アンド ビルドを現地から

10月31日(火)、衆議院議員会館内で『「神宮外苑再開発を止め、自然と歴史・文化を守る」東京都議会議員連盟 』の会合が開催。「神宮外苑の自然と歴史・文化を守る国会議員連盟」との懇談とこの間、同計画の見直しを訴えられている石川幹子氏(東京大学名誉教授/日本イコモス理事)によるレクチャーが行われた。
国政・都政と徐々にその動きは変わりつつある中、今外苑がどうなっているのか、現地の様子も合わせて紹介する。


改めてこの計画はどのようなことか

10月5日、外苑再開発計画の見直しを求めて、6会派40人の都議が『「神宮外苑再開発を止め、自然と歴史・文化を守る」東京都議会議員連盟 』を発足された。
同発足会見では、市民団体(明治神宮外苑を子どもたちの未来につなぐ有志の会)からの要請もあり、これまで国会議員による超党派議連やそこに所属する議員らが委員会質疑で本件について問題提起してきたが、都政の中で、このような動きが出てきたことは非常に大きいと言える。
今回は、都議会議連主催での会合。国会議員はOBも参加され、会場は資料が足りなくなるほど、多くの方が参加し、注目度の高さは明らか。
様子は、以下より視聴できるので、じっくりご覧になりたい方はこちらから

懇談では、国会議員団・都議団とともに、視察を実施したこと。
第2球場の解体が進み、今にも建国記念文庫の森の伐採が始まる。
東京都と事業者は、市民の声をどう受け止めているか。
国会での委員会質疑では、「参考人質疑」のため都庁関係者を要請したが、叶わなかったこと。
名勝指定への働きがけを!
など、多くの意見が出た。
そして、今後の活動においては、両議連連携して活動していくことなどが確認された。

約30名以上の各議員、マスコミ等も参加。

石川先生による“徹底検証「ヘリテージ・アラートへの事業者見解」”

筆者撮影;石川幹子氏。

2部は、石川幹子先生によるレクチャー。
9月7日に国際NGOイコモス(国際記念物遺跡会議)からヘリテージアラートが出されたことを受けて、今一度この計画の問題点が“徹底検証”された。
世界に類を見ない都市のコモンズとは何か?ということを軸に、80枚以上にわたるスライドでご講演。その一部(ご本人提供資料)を紹介するが、結論から。

1.そもそもの歴史過程等を蔑ろにすべきでない
2.事業者の目指す「複合市街地の実現」は誤り
3.同様に環境アセスのあり方も問題
4.手続きがおかしい
事業者は、住民向け説明会を開催さた一方、ヘリテージアラート発出に対しては、イコモスの視点を批判。では、事業者側にはそこまで反論できる要素があったのか?
ここで改めてどんなことが起きようとしているかは、外苑フューチャーにも詳細があるが、こちらのスライドの通りだ。
開発計画を見ると、銀杏並木だけでは様々な環境問題が生じようとしている。
生態系の破壊、騒音、歩道橋の安全対策他…
時系列で見るとこのようになる。
超党派国会議連の設立が、昨年11月30日なので、間も無く1年が経過するが、ことは着々と進められていたのである。
事業者による環境アセスはそもそも手法がおかしいとのご指摘
こちらも同様に
樹齢の推定すらできないのはどうかと
外苑といえば、イチョウ並木であるが、その評価もおかしいと
一本一本、それぞれの“いのち”が危惧される
枯れてきてるイチョウも
東京新聞でも指摘されていたが、新球場建築によりその景観は失われる恐れが
東京都心部の限られた自然
今、日比谷公園でも同様のことが起きようとしている
公園まちづくり制度によって計画が進められようとしている
住民を追い出し、“人工物”で溢れさせること自体、広義の自然に反していないだろうか

他に、国外諸都市(イギリス・フランス・アメリカ)を例に、都市が緑地(コモンズ)となったことをご紹介。
また、公開討論会の開催なども提案された。
本計画は、政治“闘争”という指摘もあるが、それ以前に、市民の憩いの場であり、そこに暮らす人がいることを忘れてはならない。そうしたことを石川氏のレクチャーから改めて気づかされた。

現地の状況は?国立競技場空の杜に行ってみた

議連勉強会に先立ち、国立競技場に行ってみた。
実は、競技場の5階は空の杜という一般開放されているスペースがある。
イベント等が被らない限り、自由に出入りでき、外苑エリアはもちろん、新宿他近隣の都内ビル群、新宿御苑等を一望できる。お散歩やデートにもおすすめなところだ。
そして、ここから何が見えるかというと、すでに解体が始まっている明治神宮第2球場や建築機材等が置かれ、いかにも伐採が始まろうとしている建国記念文庫の森等だ。以下、写真とともに見ていただいきたい。

5Fには、1Fからエレベーターか階段で行ける
出るとすぐに競技場の屋根の部分が圧巻
歩いていくと、聖徳記念絵画館も見える。外苑銀杏並木を歩くと正面に見える建物だ。そして、通りを挟んで写真真ん中の森が、建国記念文庫の森だ。すでに白い矢板で覆われているが、周辺と合わせえ300本近くが伐採される恐れが。
解体が進んでいる神宮第二球場。この日は、六大学野球の早慶戦が行われており、賑やかであったが隣では、この状態。計画によれば、正面奥から高いビル群が建設され、筆者側になるにつれ、ビル風等も懸念されている。
同様に、都心中心部が伐採中。
事務棟だろうか?こちらも解体が進む。遠く先には、国会(永田町)や東京駅界隈も見える。
銀杏並木の先端部分も徐々に紅葉しつつあるのがわかるが、新しい球場では、銀杏並木の横まで球場が近接し、日照の問題だけでなく、壊死の恐れも。
自然がスペースにあるとはいえ、本来の“自然”は?
新宿方面。手前には新宿御苑も見えるが、東京電力福島第一原発事故後に福島県内の除染で回収された放射性物質を含む汚染土再利用について、環境省による実証事業が計画が判明し、反対運動もあった。ここでも環境問題が起きている。

スクラップ&ビルドで歴史を蔑ろにしていいのか

筆者はこの問題を知ってから間も無く1年が経とうとしている。“見直し”を求める方を中心に様々なご縁が広がっているが、今一度、開発ありきで話を進めることは違うのではないか?と言いたい。
確かに、国内外各地で開発は進んでいる。とはいえ、プラスになっているかどうか?である。
外苑は、(繰り返しになるが)100年かけて、全国からの献木、市民による営みの中で作られた場所であることは大前提。
自然生態系への影響・景観、騒音、そして歴史ある名所を破壊してまでも再開発が必要なのか?同エリアを、これからの100年にどう残していくか。
子どもたち、保護者、市民、…多様な声を受け止めて、改めて本件を見ていくべきだ。
再開発は、見直すべき。
これが筆者の現在の着地点だ。

会合に参加された各議連の皆さん。

(参考)
・東京都議会神宮外苑議連YouTube

・Tokyo 2020 venues YouTube「国立競技場の「空の杜」からの眺め。天空にある秘密の散歩道。」


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