PFAS/環境省への要請はどうなるか。自衛隊下総基地の現況もみてきた。
9月25日、立憲民主党環境部会所属議員を中心に、環境省に対し「国の主導による抜本的なPFAS汚染対策を求める要請」が行われた。
全国各地で高濃度汚染が発覚しているPFASだが、今後の対策はどのようになっていくか。
予防原則の立場での対策、省庁横断で対策にあたること
国会閉会後、立憲民主党環境部会はほぼ毎週のペースでPFASに関するヒアリングを実施してきた。
各省庁へのヒアリングだけでなく、有識者など、党内での議論が進んだことは大きな一歩であった。
一時、閉会中審査が行われるという話も出てはいたが、現在に至った。
なお、岡山吉備中央町へ衆議院環境委員会が7月9日に視察に行っている。
与野党問わず、PFAS対策をどうするかという流れが出ていることは間違いない。
環境部会でのヒアリング・議論をもとにして作成された「要請書」は環境省審議官に手交された。
要請には、近藤昭一環境部会長をはじめ、7名の国会議員が参加。
手交後、約45分意見交換を行った。
主な要請事項は、以下の通り。
見出しにも書いたように、各省庁が独立してではなく、横断的に対策にあたること、予防原則に立つこと。これは、市民団体の皆さんが要望されている、国主導の血液検査の実施・拡充とも言える。
環境省もこれに対し、今後も前向きに対策にあたるとの回答を得られたが、汚染は各地で次々と発生している。次国会でも議論は必須だ。
(政府への要望事項抜粋;太字筆者)
1. PFAS汚染対策は、複数にまたがる所管省庁の横断的な取組が求められており、公害問題を設置の原点とする環境省のリーダシップの下、防衛省や外務省などと連携し、PFAS汚染対策に取り組む関係省庁連絡会議といった組織を設置し、政府が一体となって必要な措置を講ずること
2. 安全な水は国民一人一人にとって重要であることから、汚染が報告された地域の問題として捉えることなく、暫定ではなく法的根拠のある指針値(環境基準)を決定するとともに、最大限の情報公開と調査を実施し、国民の不安解消を図ること
3. PFAS等による水の汚染が疑われる地域において、国が汚染源を特定し、健康調査をすることを義務付け、飲み水の安全を確保すること。また、水や農作物等は人の命と健康に関わることから、不確実なリスクであっても汚染の拡大を未然に防止するために、予防原則に基づく取組を実現するための法整備について検討すること
この他にも最近問題となったペットボトルのミネラルウォーター内にPFASがどれくらい含まれているかということや、人工芝についても同様、皮肉にも“身近な”PFAS曝露から守る対策は急務だ。
これまでも、静岡をはじめとした各地の汚染を見てきたが、経口での体内曝露はかなり高濃度になるという研究もある。
食の安全という観点からも、PFAS問題を見ていくべきである。
以下は、参考だが「PFAS対策に関する政府の担当一覧」だ。(8月21日付)
これだけの省庁・部局がまばらだと、責任所在を問うことも容易ではない…。
外務省;北米局
厚生労働省;健康・生活衛生局、医薬局、労働基準局
農林水産省;消費・安全局
経済産業省;商務情報政策局、大臣官房産業保安・安全グループ、製造産業局
国土交通省;水管理・国土保全局
環境省;水・大気環境局、大臣官房環境保健部、環境再生・資源循環局
防衛省;地方協力局
消費者庁;食品衛生基準審査課
消防庁;予防課、消防・救急課
自衛隊基地内の消火剤関連水槽がなぜ高濃度なのか
27日、急遽自衛隊下総基地へ行く機会を頂いた。
先日も基地周辺(鎌ヶ谷市)については視察してきたところだが、この時から疑問に思っていたことは、本来、ただの水しか入っていない水槽(泡消火設備専用水槽水)の高濃度汚染だ。
これは、泡消化剤を使用する際、消火剤そのものと混ぜて使用されるが、水槽にはそもそも流入されないはず。下総基地の場合、2つの調査対象水槽からは、11と3.4ng/Lとなっている(令和5年10月6日)が、なぜこのようなことが起こるのか、原因はまだわかっていないというが、PFAS全廃にはまだまだ道半ばだ。
以下は、消火剤使用時のイメージ。(防衛省提供資料)こう見ても決して混ざらないはずだ。
基地内を歩くー汚染は土壌にも染み渡っているのか
基地では、冒頭30分ほど当日の予定と周辺でPFAS汚染が発覚していることについてレクを受けた。今回は、基地内3箇所を見ることができたが、基地内の写真撮影は不可だったので、図などで想像いただきたい。
ここで改めて基地周辺で発覚した値を確認していただきたい。図で見る基地右側あたりの方が土地は低く、今回見たB・Cの雨水排水路(後述)は、高濃度汚染が計測された水路につながっていた。
上記図右側では、赤い矢印で水の流れを示したが、口頭ベースなので確定とは言い難いことをご了承いただきたい。
一方、青い矢印は、雨水排水路の流れだが、基地外になるにつれ、標高が下がっており、自然と敷地外に排出されることになる。
初めに、滑走路近くに設置されているA「消火訓練設備」を見学した。
14年間使用しているというが、大きなトラブルはこれまでもなかったとのこと。
大きな円形の枠内に訓練用の液体に火をつけ、消火訓練を実施する。訓練後は、円形内ある17箇所の穴をあけ、それらを抜く。その後、4つの装置で濾過して、排水するとのことであった。
では、この時にPFAS含む消火剤を使用していたかというと、昨今はもちろんないが、2010年3月以前については詳細不明という。当時を知っている人が少ないとは言っていたが、記録は残っているのではないだろうかと疑問が残る。
次にBの雨水排水路へ。
こちらは、基地外で1,000〜3,300ng/Lが検出されたことがある水路とつながっている。
排水路自体は、コンクリートで整備されていて綺麗で、水の流れも少ない。ただ、基地との高低差はかなりあるが、先述したAの消火設備とはつながっていないとされる。しかしなぜ高い値が周辺で出ているのか。それまで使用されていたものが環境中で分解されることなく、土壌に染み渡ってしまった結果なのかもしれない。
基地正門近くのCの排水路へ向かった。ここは、2,100or33ng/Lが検出された水路Bのほぼ上と言えるような立地だ。水の流れは皆無。基地内の貯水池の近くでもあるが、A消火訓練設備の水はここにやってくるという。
ちなみに、平成5年(1993年)に基地内で燃料タンク爆発炎上事故が起きている。仮にその時にPFAS含む消火剤が使用されていたとしても、31年前。そして、そこから2010年までの17年間、“記録が残っていない訓練詳細”の時期を考えると、土壌環境への汚染は蓄積されていてもおかしくない。
やはり土壌・水質の基準を厳格に
土壌に染み渡っているPFAS汚染については、沖縄の小学校の周辺で発覚したことが報道されたこともあるが、日本国内での基準値はまだない。
ボーリング調査など、莫大な費用はかかることは承知としても、現在使用されていないとはいえ、蓄積されたものをどうするかが今後の課題ではないだろうか。
また、適切に処分をしていく際、それに従事する方の健康管理も重要だ。
環境を生かすことも殺すことも、私たち人間の宿命ではないだろうか。ちょうどこのタイミングで自民党新総裁が誕生し、野党代表も変わった。
与野党ともに、次代の環境を考えることを少しでも議論に盛り込んでいただきたいと切に望む。
<謝辞>
自衛隊基地関係者の皆様、また今回の視察でも、宮川伸前衆議院議員、藤代政夫氏らにお世話になった。
そして、本庄知史衆議院議員及び事務所の皆様に調整いただいた。お忙しい中貴重な機会をいただき、心より御礼申し上げる。
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