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【東京大学2020年度前期入試数学(理系)第5問】図形の概略をつかんでみよう

今回は空間図形の問題です。(1) をまねて丁寧に議論すれば (2) も簡単に解けると思います。

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東京大学安田講堂
2016年12月24日、 Kakidai撮影、Wikipediaより

[問題] 座標空間において,xy 平面上の原点を中心とする半径 1 の円を考える。この円を底面とし,点 (0, 0, 2) を頂点とする円錐 (内部を含む) を S とする。また,点 (1, 0, 2) を考える。
(1) 点 P が S の底面を動くとき,線分 AP を通過する部分を T とする。平面 z = 1 による S の切り口および,平面 z = 1 による T の切り口を同一平面上に図示せよ。
(2) 点 P が S を動くとき,線分 AP が通過する部分の体積を求めよ。

この問題は直感的にはとても簡単

と思うのは私だけでしょうか?少なくとも図形が頭の中で描けるので、答えだけならすぐに出せます。

(1) については T も円錐なので、切り口も円で、中心は原点O と A を結ぶ線分で z = 1 の点なることが分かっています。今回はそれが OA の中点なので、中心は (1/2, 0, 1) で 半径は 1/2 の円となります。

S の切り口についても同様に中心が (0, 0, 1) で半径が 1/2 の円となります。

これで図形は簡単に書けます。

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(2) については、感覚的に S を x = 0 で切った三角形と A で作られる三角錐に S の円錐の半分と T の円錐の半分がくっついた図形をイメージしています。

すると、S の円錐と T の円錐は体積が一緒であるので、求める体積は 1 × 1 × π × 2 × (1/3) + 2 × 2 × (1/2) × 1 × (1/3) = (2/3) × (1 + π) となります。

あとはそれが正しいことをどのように証明するか、だけです。

では解答を書いてみますが、最初に S = { (X, Y, Z) : X^2 + Y^2 ≦ {1 - (Z/2)}^2 } を確認しておきます。

(1) では、S と z = 1 の切り口は S の条件式に X = x, Y = y, Z = 1 を代入して x^2 + y^2 ≦ 1/4 が得られます。

一方、(X, Y, 0) と A の中点を (p, q, r) とおくと、(p, q, r) = ((X+1)/2, Y/2, 1) となるので、X = 2p -1 かつ Y = 2q かつ Z = 0 を S の条件式に代入して (p - 1/2)^2 + y^2 ≦ 1/4 が得られます。

これで先ほどの直感が裏付けられたことになります。

(2) はまず、P が S を動くときの 線分 AP が通過する部分を R とおきます。

平面 z = t による R の切り口を考えます。ただし、0 ≦ t ≦ 2 とします。それ以外の t については空集合になります。

また、P(X, Y, Z) について 0 ≦ Z ≦ t だけを考えればいいことも明らかです。実際、Z > t の場合、線分 AP の点の z 座標はすべて t より大きくなります。

t ≠ 2 とします。このとき、線分AP と平面 z = t の交点をB (p, q, c) とおくと、z座標の比較から AB : BP = t - Z : 2 - t となるので、p, q は次のようになります。
・p = { (2 - t) × X + (t - Z) × 1 }/(2 - Z)
・q = (2 - t) × Y/(2 - Z)
ここで、Z ≦ t < 2 であることに注意してください。

これをX, Y について解くと、
・X = { (2 - Z) × p - (t - Z) }/(2 - t)
・Y = (2 - Z) × q/(2 - t)
となるので、これを集合 S の条件式に代入すると、

{ (2 - Z) × p - (t - Z) }^2 + { (2 - Z) × q }^2 ≦ { (1 - (Z/2)) × (2 - t) }^2

となり、この両辺を (2 - Z)^2 で割ると

{ p - (t - Z)/(2 - Z) }^2 + q^2 ≦ { 1 - (t/2) }^2

が得られます。ここで、(t - Z)/(2 - Z) = 1 - (2 - t)/(2 - Z) かつ 0 ≦ Z ≦ t であるので、(t - Z)/(2 - Z) は 0 以上 t/2 以下の全ての実数を取り得ます。

すなわち、平面 z = t による R の切り口の部分は半径 1 - (t/2) の円盤を中心が (0, 0) から (t/2, 0) まで動かしたときの軌跡となります。

この切り口の面積は半径 1 - (t/2) の円の面積と、縦 2 × { 1 - (t/2) } = 2 - t かつ横 t/2 の長方形の面積の和となるので、

{ 1 - (t/2) }^2 × π + t(2 - t)/2

が得られます。ちなみに、この式は t = 2 のときにも正しいです。

この式を f(t) とおくと、求める体積は f(t) を 0 ≦ t ≦ 2 の区間で積分すればよく、計算すると 2π/3 + 2 - 4/3 = 2/3 × (1 + π) となります。

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(1) は (2) を解くための誘導問題になっていますが、もしこれがなかった場合、私なら多分、最初に説明した図形になることを証明していたと思います。ですが、それでは証明に骨が折れます。

その意味で、(1) は時間短縮になるので大変ありがたいです。

ただし、もし時間がなかったら、円錐と三角錐の体積を出して、それらを足して答えを出していたと思います。減点覚悟ですが、0 点よりはましという判断です。

全体の難易度を考えたら、(1) を抜きにして出題しても面白かったと思います。

ちなみに、今回の問題セットを私に与えると、2時間半で全問解いてしまいそうなのでかなり簡単に感じています。もちろん、記述なので減点はそれなりにあるかもしれませんが。

それが (1) を抜きにした方がいい理由です。難易度調整。でも実際には時間的に厳しいのか…ちょっと判断に迷います。

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