今、必要な学習とは。

ずっと前から読みたかった『〆切本』(左右社/初版 2016)を、ようやく手にして読んでいる。この本は小説家や文筆家と呼ばれる人たちが、締め切りについて書いた文章を集めた、ちょっと変わったアンソロジー?というか、エッセイ集的な形式の本である。まだ冒頭と言える部分くらいしか読んでいないのだが、夏目漱石が執筆について語っている部分が、すごく納得というか共感できたので紹介したい。

『執筆する時間は別にきまりが無い。朝の事もあるし、午後や晩の事もある。新聞の小説は毎日一回づゝ書く。書き溜めて置くと、どうもよく出来ぬ。矢張一日一回で筆を止めて、後は明日まで頭を休めて置いた方が、よく出来さうに思ふ。一気呵成と云ふやうな書き方はしない。一回書くのに大抵三四時間もかゝる。然し時に依ると、朝から夜までかゝつて、それでも一回の出来上らぬ事もある。時間が十分にあると思ふと、矢張り長時間がかゝる。午前中きり時間が無いと思ってかゝる時には、又其の切り詰めた時間で出来る。』(『〆切本』p.16)

小説(新聞に載せる小説)の話と思って考えるとちょっと難しいけれど、日常生活に当てはめてみると、すごく自分にも当てはまる部分があるのではないかな?

・溜めておくと、どうもよく出来ない。
・朝から夜までかかってやっても、成果が上がらないこともある。
・時間が十分にあると思うと、やはり長時間かかってしまう。
・出来る時間が限られている場合、その切り詰めた時間で成果が上がる。

勉強は、まさにこれにぴったり当てはまるだろう。

・宿題や課題は溜めておくとうまく行かない。(ひどい場合は、期限直前に慌てて答えを写して終わりという場合さえある)
・朝から夜まで頑張ってやっても、なーんか今一つ成果が上がっている気がしない。(一夜漬けで試験をやっつけようとしても上手く行かないし、意味がないとかいうのもここに当てはまりそうだ)
・時間に余裕があると思って勉強を始めると、ダラダラと夜遅くまでやってしまう。(そして、成果もあまり上がらない)
・逆に、家を出るまでの朝1時間とか、朝礼が始まるまでの30分とか限られた時間に集中してやると、ものすごく成果が上がる。(ダラダラの3時間より、中身のある1時間とはまさにこのこと)

高校1・2年生にとっては、この冬休みは自分の勉強スタイルを見直す大きなチャンスである。特に2年生の場合は、受験勉強に向けてリズムを整えていく時期にある。

入試を直前に控えた高校3年生は、どうしても不安が先に立ってしまいダラダラと長時間の学習をしてしまいがちだが、それが本当に自分のためになっているかについては、復習問題や演習に取り組むなどして、十分に検証する必要があるだろう。

付け加えておくと、受験まであと1か月となった段階なので焦る気持ちはよく分かるが、今こそ基礎基本に立ち返り、万が一不十分な部分があれば、そのヌケやモレを丁寧に補っていくのが今後の勉強になる。今さら突拍子もなく新しいことを始めることは全くオススメできない。今必要なのは、とにかく丁寧な確認と復習と調整である。だからこそ学校で行われる課外授業や補習授業などを十分に利用しよう。「学校の課外や補習に行くと、自分のやりたいことが勉強できないから」とかいう声を聞くこともあるが、「学校の課外や補習というのは、学校の先生が生徒の状況を見て、そのタイミングに必要な問題や解説および予備知識を与えてくれる」ものだ。それを利用しない手はない。そして、可能であれば先生に個人的に質問などをして課題を出してもらうとかいうのもいい方法だろう。その時は「自分はここまで理解している」という自己分析を先生に伝えると尚のこと良い。

(※ちなみに厳しい言い方だが、与えられた課題を、やる前から「意味がない」なんて決めつけるのは、ただ「やりたくない」だけに過ぎないことも多いのではないかと思う。)

直前期になると、
・高額の教材や、家庭教師や予備校の特別講習にハマってしまう生徒 
  (それでうまく行くんなら、みんなそれを買ったり受けたりするわ)
・自暴自棄になってしまい、やる気を完全に失う生徒
  (これが一番怖い)
・急に弱気な志望変更をする生徒
 (偏差値表だけに頼った、ミスマッチを起こしやすい進路変更)
・独学に走り失敗する生徒
 (独学でやれるんなら、追い込まれるような成績にはなっていないハズ)

等々が必ず出現します。
焦っても仕方がない時期です。
体調不良に気を付けながら、日々当たり前のことを、効率よく、しっかりと丁寧にクリアしていこう。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?