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「かき氷の赤井さん🍧」第2章 「夏の花火はどこにある?」

高3の夏休みが始まった✨

今年の夏は全国的に暑い🥵元太と伊予は図書館に来ていた。受験勉強という名目。本当はクーラーがきいていて無料で、2人でいても違和感がない所がここぐらいしかなかった😅

強いて言えば話ができないが、スマホがあればLINEで会話は出来る。向かい合って座って、早速LINEを開いた。

「花火大会🎆行きたいなぁ」

伊予がニコニコしながら、こっちを見ている。

「?」

「付き合って一年たつのにさぁ、花火大会行ったことないじゃん☹️」

「だってコロナだし、花火大会自体もやってないだろ」

伊予の表情が曇った。チッチッチッと指を振りながら

「そんなこと、言われなくたってわかってるよ!」

すごい速さで返信が来た😳正直、そんなこと言われたって困る。なんて返そうか考えていると、ふと去年のことを思い出した。

僕と伊予が付き合い始めたのは去年のゴールデンウィーク明けから。分散登校で同じグループになり、1ヶ月ぐらいなんとなく話しているうちに彼女が

「元太!私と付き合わない⁉️」

突然の逆告白。かなり動揺しながら、なんで?と聞くと

「元太と話していると、すっごい幸せな気分になるんだよ。好きだから一緒にいたいって言うより、一緒にいると幸せになるっていう感じ✨わかる?」

この時も今と変わらず、両手をパタパタさせながら、ものすごい早口で一気に話したもんだから、何言ってるかさっぱりわからなかったんだけど笑

「一緒にいると幸せ」

ここだけが妙に引っかかった😳一緒にいて幸せかあとぼんやりしてると、伊予は顔を真っ赤にしながら

「女子に告白させといて、ボーッとしてるなんて、ひどいよ!どっちでもいいから、ハッキリさせて!」

いやいや、勝手に告白してきて、それはないだろうよと思った😅でも、ふっと

「一緒に幸せになりたいかも」

心がフワッとした。目の前の彼女に視線を戻すと、手をグーにして、ものすごい眼力でジッと僕を見ている。

「いやいやいや、そんな目で見られたら100年の恋も覚めてしまうぞ😅」

思わず、クスッと笑ってしまった。笑ったのがそんなに不思議だったのかキョトンとしてしまった伊予の頭をポンポンってして

「うん。一緒に幸せになろ」

めっちゃ恥ずかしかった。絶対、顔は赤かったし、汗も出ていたと思う。

「本当に⁉️」

僕の手をギュッとつかんで、自分のおでこを触らせて

「嬉し過ぎて、熱上がった!絶対、37.5℃以上ある!どこに行っても、来店拒否される!」

ブッと吹き出した🤣どれだけ、緊張してたんだよ。 笑い過ぎて泣きながら、心がフワッから、ふわ〜んとあったかくなった。

「懐かしいなあ」

ハッとした。😅プラスチックの衝立に両手をついて、こっちをギリギリと見つめている伊予の視線に気づく😳

「また、ボーッとしてる!」

「ごめん。で、なんだっけ?」

衝立から手を離し、ガックリうなだれる。でも、急にスマホを持ち

「どうせ、花火大会かぁって思ってたんでしょ?」

違う。でも、違うとは言えないオーラが彼女の周りに漂っていた。

「わかりました。花火大会は宿題にします。期限は明日まで。じゃあ、私、帰るから!」

あっという間にいなくなる😳あ〜また、やってしまった😖こんなことはしょっちゅう。伊予は怒っても次の日まで引きずることがないので、そんなに危機感は感じていない。だけど

「コロナ禍における花火大会🎆」

討論会でも始まるような課題を与えられて、ハタと困る。ま、とりあえず帰るかと家路についた。

「さあ、どうしたらいいもんかな🤔」

Googleで「花火大会」と入れてみる。中止になった花火大会がズラズラ出てきた。まあ、そりゃそうだよねと思いながら、しばらく見ていたがキリがないのでスマホを閉じた。

花火大会はない。そう考えると、自分で花火を買って上げるという手段しかないような気がしたけど、それじゃ伊予は納得しないのもよくわかっていた。

「元太、ご飯だよ〜」

母の声がする。腹が減っては戦はできぬと言うしなと思いながらテーブルにつく。

今日、父は仕事が遅い。母と2人でカレーライスを食べていると

「そうそう。サプライズ花火大会って知ってる?」

え😳何を唐突に😳

「さっき、新聞で見たのよね。告知を全くしない花火大会のことなんだって。今回は町の有志の方がコロナで疲れている人達に見てもらって元気になって欲しいって企画したみたいよ」

なるほど!その手があったか!残りのカレーライスを一気に食べて、部屋に戻る。Google検索で「サプライズ 花火大会」入れる。何件かヒットしたけれど終わったのばかりだった。

「まあ、サプライズだから、そうだよな…」

困った時はまず、現場から。母が教えてくれた新聞を電子版で見つけた。記事を読み進めていくと、こんな言葉が。

「新成人には事前にSNSで配信日時を告知。サプライズで映像を届けた。」

「これだよっ‼️」

思わず机から立ち上がる。Twitterを開くと

「新成人で市や町から、SNSで何か発信しますって連絡来た方、いませんか?」

確定を押す。ほどなく、一件のリプライが。

ここから1時間ぐらい離れた町の方で明後日、SNS発信するとメールが来たという。もし、花火があるとしたら河川敷。場所はなんとなく、目星がついた。

「一か八か、賭けてみるしかないな。」

LINEを開き

「伊予!宿題できた!明後日、夜7時にイオンのフードコート、集合!」

正直、花火大会はどうでも良くなっていた😅でも、彼女の喜ぶ姿は見たい。買った花火をやるという堅実さより、例えやらなかったにしても、本当の花火大会をやる可能性に賭けたかった。

「なんで、花火大会に行くぐらいでこんなに苦労しなくちゃいけないんだよ…」

1年半前、花火大会は夏に普通にあって、夏祭りも当たり前だった。コロナがなければ「花火大会楽しみだねー」と2人で盛り上がっている所だったのに。でも、仕方ない。伊予がよく言う

「絶対、これも意味があるんだよ。どうせなら、ワクワクしながら乗り越えたいじゃない?」

そうだ。ワクワクしながら行こう。だって、今年の夏はもう来ない。後悔だけはしたくない。花火が上がらなくて、カッコ悪くてもそのために動いた自分をスゲーなって褒めてあげたい。

当日。ニヤニヤしながら彼女は現れた。目的の河川敷までは1時間ちょっとかかりそうだ。もし、やるとするならすぐに出ないと間に合わない。

「伊予、いいから来て!」

手を引っ張りながら、バスに乗り込む🚌彼女はジッとしていた。いつもなら、どこでもベラベラ喋っているのに、今日は妙におとなしい。それもまた、可愛い。

バスから降りて、河川敷までは10分ほど。握った手をもう一度強く握り直して歩き出す。2人とも無言で黙々と歩いた。心臓はバクバク。もし、上がらなかったらと言い訳ばかり考えていたその時

一発目の花火が上がった🎇


「よっしゃあ〜‼️」

思わず叫ぶ。目を丸くしながら、伊予も横で

「よっしゃあ〜‼️」

ピョンピョン飛び跳ねている。なんなんだ、これ。花火ってこんなに感動するものだっけ。涙が止まらない。花火そっちのけで泣いていると、急に彼女は僕の頭をクシャクシャってして

「元太!ありがとう!ありがとう!ありがとう!」

ありがとうしか言わないなと思って、見上げると伊予も泣いていた。花火を見ているはずなのに、2人とも号泣。打ち上げ花火の音を聞きながら、汗と涙でぐしゃぐしゃな高3の夏が過ぎていく。








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