見出し画像

映画:ゴールデンカムイ 奇跡的な実写化

初日にIMAX劇場に走った。そう私は原作ファン。
予告映像の端々から「これはいけるかもしれない」という予感があった。
その予感は的中した。
私は完全な実写化を目撃したのだ。
漫画実写を見るときに原作ファンとして望むのは、
原作からイメージを損なわない。原作からストーリーを変えない。
この2点である。言ってしまうとこれ以外は妥協できるのだ。
ゴールデンカムイはこの二つの高いハードルを超えていた。
高いハードルと書いたがゴールデンカムイという作品は取り扱う題材や仕掛けを考えると、どこかを間違えば崩れていくようなストーリーの繊細さがあると考えている。
ギャグやアクションや下ネタだけではなく、コンプラやレーティングも考えると、いろんなバランス感覚で成り立っている作品だろう。
それを損なわないで映像化するのはどれだけ大変か。スタッフの苦労が伺えた。

それでいて「盛って」いるところも凄い。
原作自体、迫力のある描写が見どころの作品だ。
それを実写で超えるのはなかなか難しい。
しかし素晴らしいアクションで見たかったもの、それ以上のアクションを見せてくれた。
とくに冒頭の二百三高地シーンは圧巻だ。
映像や迫力の音響も素晴らしいが、原作ファンへのサービスのように色んなキャラが登場する。
この物語は日露戦争でなにかを失った、変わってしまった男たちの物語なのだと再確認できる。
このシーンのためだけでもIMAXで見てほしいと感じる。ビスタサイズだし。

映像作品としてのクオリティーはここで決まったようなものだが、やはり役者も素晴らしい。
個性豊かなキャラクターが見どころの作品で、この点は重要だ。
二百三高地で大暴れした主人公が「俺は不死身の杉元だ」と叫ぶシーン。
ここの説得力が作品の全てを支配していた感じもする。やはり映画は冒頭が大事だ。RRRの冒頭大乱闘シーンも思い出させた。
とにかく杉元にしか見えないゴツくなった山崎賢人が居るから、どのシーンもゴールデンカムイになっているのだ。
北海道の厳しい自然の中、しっかり立っているキャラクターたちから滲み出る生命力の高さが素晴らしい。小さな身体で活発に動く山田杏奈のアシㇼパのその芯の強さがアシㇼパなのだ。(冷静に考えて全員あんな場所をよく走っている)
他のキャラクターも絶賛するしかなく、レギュラーキャラのヒグマも本当に怖くて、もう話が尽きないのであるが…。

特筆したいのは実写になることで細かく再現された明治の北海道と、アイヌのコタンの様子だ。
とくにアイヌ集落にいくと、それぞれのキャラクターがアイヌ独特の所作などを見せてくれる。
アシㇼパの祖母であるフチが漫画から切り抜いてきたような再現度でまず驚きもあるが、アシㇼパの大叔父(原作では叔父だったか)にもまたリアリティーが加わっている。大叔父に関しては実際のアイヌの方が演じているからだろう。
衣装や小物なども含め、あのシーンだけで多くのアイヌが協力したのだろうということは分かる。裏付けるようにクレジットには多くのアイヌ関係の団体などが確認できる。
ファンとしてはエンタメ作品に協力をしてくれたことに感謝であるし、生半可なものが出来上がらなくて良かったと本当にホッとしている。
今作ではアイヌ文化やコタンのシーンはまだ少ないが、今後は重要なシーンも出てくるので期待大だ。

続編はあるものとして考えているのだが、今の所正式な発表はない。
今回完璧な実写化をしたため、原作からカットしたあらすじが殆ど無い。ということはストーリーがあんまり進んでいないとも言える。
その分終盤の馬シーンを盛りに盛ったりしているのだが、このペースで実写化していくとどれ程の量の実写化になるのだろうか。
あまりにうまく行っている作品なので、あのシーンもあのシーンもこのスタッフキャスト陣で早く次が見たい。
ぜひ今後も長く応援していきたいと思える作品だ。



この記事が参加している募集

#映画感想文

66,723件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?