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過去を変える仕組み

 そいつは見つかるまいと奥の方に入っていく。なので、それを語ろうとしてもより分かりにくくなっていく。そうしてそれが、形や動きや成り行きをともなっていないと、ほんの少し眼をそらせた隙に、そいつの記憶すら消えてしまう。
 立ち並ぶビルの中での一段と低いビルの屋上にて、かなり昔の自分の何かが、その作業場で変えられていたということがわかった。そういうことがとても簡単にできる時代で、ひとりがその仕組みを話してくれた。彼は汚れた骨のようなものを持っており、数名がそれを囲んで普通のことのように話していた。
 その後、その数名が以前辞めた会社の同僚達であることがわかり、彼らはいくつかの会社で作業をしているということで、本日の作業回数を自慢げに教えてくれた。
 ひとりが七十八回、ひとりが二回。
 かれらの作業は、もしかして私の会社も対象ではないかという思いがあったが、その場の背景が目まぐるしく動くため、そうした話をすることはなかった。
 その後、彼らのひとりと買い物をしており、彼は店の人となにやら話していたが、さきほどの作業の報酬として、いくつかの果物をもらっていた。我々は店を出て、別れ、それぞれの道を進んだ。

《会社や仕事が出てくる作品を紹介します》
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動物のハローワーク①《ハローワークの新たな決まり》
裁判と晩餐会①《裁判の段取り》
ボイスレコーダーの男①《拾った男》


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