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スマホ依存の特効薬。依存症研究の第一人者が書いた「ドーパミン中毒」の感想・レビュー

誰もがなんらかの依存症である現代人にとってものすごく重要な書だと思った。

特別版カバーの本書の帯には「スマホ脳」の著者が絶賛していると書かれている。

仮に読者がアルコール依存症のような分かりやすい依存症ではなくても、たとえばスマホに依存しているというだけでも読む価値はあるはずだ。

デジタルドラックはまだまだ世の中で認知されていないドラックだけに、

知らず知らずに日常生活が蝕まれていることも多いだろう。この本はそんなスマホ漬けの我々にも効く特効薬になり得る。

比較するとベストセラー「スマホ脳」は簡易な言葉で書かれていたが、こちらはより専門的でなおかつ洞察に溢れた言葉で書かれているので、インテリジェントな部分での読み応えがある。

HOW TO として何をどうしたら良いかではなくて、

原理原則的な事柄についての洞察が書かれているからだ。それと同時に人間の神経系統の複雑さを単純化しすぎず、ありのままの複雑さも残して書かれているように思う。これが他の自己啓発系の本と違うところで、だからこそよろ真実に近いことが書かれていると思うし、誠実さが感じられる。

本書を読み終わってからプロフィールを読むと、依存症研究の第一人者らしい。

どおりで。洞察の深さに納得した。

ちなみに本書では、苦痛と快楽をシーソーの両端に例えている。

たとてば飲酒やSNSなどでジャンクに快楽を得るほど後の苦痛が増す。逆にたとえば運動などで最初にシーソーを苦痛に倒すことで、その逆の現象が起こるのだと。

本書はこのシーソーモデルが基本原理として書かれている。

もちろんこれは単純化されすぎたモデルではあるのだが、人間というものを理解するのにすごく本質的な例えだと思った。

それと同時に何でもかんでも個人的な幸福追求の道具にしようとする

昨今のアメリカの風潮にも多少の苦言を呈している。誰もが人間として求めるものは幸福であるというのは真実ではあるものの、確かに「人への親切」さえ自分の幸福追求のために使い、ホルモン系統をハックしてプログラミングのように幸福になろうとする姿勢には、自分も多少辟易する。と言いながら本書を読む目的もやはり根本的なところでは「快楽を求め苦痛を避ける」というものではあると思うので、この命題は難しいところだ。

ひとつ残念なのは翻訳が悪いのか、原文が悪いのか、もしかしたら日本語版として編集するにあたって内容が省略されているせいなのかは分からないが、かなり読みづらく意図が分からない部分も多々ある。ただそれを差し引いても本書の趣旨の価値自体は損なわれない。

ところで本書のエッセンスではないが、エピソードとして冷水浴の効用についても書かれている。最近自分もサウナ通いを始めたので、やはり冷水欲は良いのだと確信を深められたのも収穫だった。

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