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カメレオン精神科医x発達障害の女の子 「うさぎのおやこ」 映画感想文

観てから改めて調べると映画の公式サイトもないぐらいのマイナー映画だったようなのだが、観て良かった。

発達障害の子供と精神科医とデリヘル嬢の物語とか、なかなかのレアなシチュエーションだ。

決して障害というテーマで堅苦しくなりすぎず物語としてシンプルに楽しめた。

・こども

あるシングルマザーの家庭に子供がいる。どう見ても子供に見えるが22歳らしい。名前はあきら。

彼女には発達障害がある。あとは体の成長も遅いのか大人なのにほとんど子供なのだ。

母は娘の社会保障費的なものをパチンコに使い込んで家賃も滞納する毒親だ。

・舞台は大阪

割とみんなエセ関西弁で喋る。大阪が舞台ならネイティブ大阪人を役者に構えることは出来ないんだろうか。

ちゃんとした大阪弁で喋る映画って本当に見たことがない気がする。

・風俗

あまりにお金のない家庭のために、あきらは風俗の仕事に申し込んで事務社を訪ねる。

そこでAVのビデオ撮影をするという契約書を書かされてしまうのだ。

あくまで彼女は大人で本人の意思で事務所を訪ねたことは確かなのだが、知能障害を持っていることは明らかに周りの大人にも分かり、だがそこに付け込まれて食い物にされようとする。

あきらは本当に自分のしようとしていることを理解しているのだろうか?

万引き犯と間違われて事務所で詰められるだけで深く傷ついてしまう子なのに、AVの撮影なんてとても耐えられるはずがない。

案の定、他の人間に「何するか分かってる?」「裸になるんだよ?」と諭されるとパニックになり、裸になるのは絶対に嫌だと泣き出してしまう。

彼女は自分のしようとしていることを全く分かっていなかったのだ。

・レオン先生

あきらには最近新しい精神科医の主治医がついた。カメレオンのレオン先生というらしい。


彼は人の心を開くためにカメレオンの帽子をつけながら話すのだ。彼はあきらの心を開き、彼と話している時に、本当に楽しそうなあきらの表情が見える。

精神科医なので一瞬で人の本質を見抜くことが出来る人物。いや現実の精神科医は人間に対する洞察よりも薬学と薬の処方がメインなので、幻想の中にある精神科医、心理学者のようなイメージなのかもしれない。

彼はあきら以外の人間にも「本当の君はそうじゃない」「君は幸せになって良いんだよ」というような文章にすれば歯の浮くような言葉を投げかけるのだが、彼の人柄もあってか決して浮いていない。真実の深いところから発せられた言葉だというような感じがするのだ。

このレオン先生の存在感、そしてあきらとの関係性はこの映画の1番の見どころだと思う。

・デリヘル嬢

おそらくホストに風俗に落とされたであろうデリヘル嬢も出てくる。佐々木希レベルぐらいの美人。


彼女はあきらを風俗の危機から助け出し、一緒に逃避行を企てるのだ。

あきらとこのデリヘル嬢の関係性も一瞬のものではあったが、美しかった。

・最後まで毒親

娘のお金をパチンコに注ぎ込んでいたにも関わらず、家を出て行こうとするあきらに「お前がいたからお金を苦労した」とか「お前が父親を殺した」とかのたまう母親。

「ひねくれてはいるけれど実は娘に対する愛情もあった」なんて思えない。そんな言い訳は通じない。毒親は毒親である。道場の余地なし。

・重箱の隅

劇中で何度か「どんっつか、どんっつか」みたいな打楽器系のBGMが流れる。コメディチックな雰囲気の。

サザエさんとかちびまる子ちゃんのノリみたいな。

映画は音楽の使い方ひとつでシーンの印象が変わってしまうが、このBGMの合わせ方は本来のニュアンスを邪魔してしまっている気がした。

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