2020年広島二軍成績を振り返る~野手編~
既に2021年に突入して10日以上経過しており、今更感は否めないようなまとめ記事になりますが、今一度2020年の各選手の二軍成績を振り返ることで、それぞれの特徴や課題を明らかにしていきたいと思います。
※対象は50打席以上に立っており、2021年も広島に在籍する選手
守備成績の数値はそのポジションを守ったイニングと、守備得点を示している
22 中村奨成
過去2年一軍昇格を果たせませんでしたが、2020年は開幕前の練習試合でOPS1.381と猛打を爆発させ、7月には自身初の一軍昇格と初出場を掴み取りました。
しかし、一軍では4打席で無安打に終わり、二軍成績も前年以下と殻を破ることができないシーズンとなってしまいました。
特にかつて甲子園で6本塁打を記録した長打力がウリなはずも、ISOが平均以下と思ったように発揮できていないのが現状です。
ただ開幕前の練習試合は33打数で3本塁打、シーズン後のフェニックスリーグは37打数で2本塁打と長打力の片鱗は見せており、これをシーズンで発揮できれば面白いのではないでしょうか。
正捕手に會澤翼、2番手に坂倉将吾、3番手を磯村嘉孝と石原貴規とこの中村奨成が争う構図となっており、4年目の今年に目立った成長が見られなければ、本格的にコンバートも考えなくてはならないかもしれません。
62 石原貴規
ドラフト5位指名と評価は決して高くありませんでしたが、思いのほか打撃面で存在感を示し、フェニックスリーグでは本塁打と打点のチーム2冠と素晴らしい活躍を見せました。
何より光るのが長打力で、ISO.190は100打席以上立った選手の中ではチームトップを誇り、打った本塁打は全て9/30以降に記録したという点も、2021年に向けて好材料です。
加えて、四球を選びながら三振は少なく、BB/Kはリーグ平均以上の0.67と高水準な数値を示しており、打撃内容は非常によいと評して問題ないでしょう。
2月の練習試合で近本光司を刺したようにスローイング能力は高く、守備面も決して悪くないため、2021年は會澤翼、坂倉将吾に次ぐ立場を確立できるかの勝負になってくるのではないでしょうか。
44 林晃汰
出場した二軍戦では全て4番を務めるなど、将来の主軸としての英才教育を受けながら、本塁打と打点でリーグ2位の好成績を収め、将来へ希望を抱かせました。
ISOは前年並みと長打力は変わらないまま、打率を.225から.266まで高めることで、大きく成績を伸ばすことに成功しました。
この選手の良さは、何といっても体格の割に高いコンタクト力を誇っていることで、事実K%はリーグ平均以下と一発を期待される打者の割には低い数値となっています。
加えて左投手にも強さを見せ、守備得点マイナスの守備力がもう少し向上すれば、一軍でも我慢して起用できる域に達することができるのではないでしょうか。
コンタクト力が案外高く、どちらかというと中距離打者のような成績を見ると、自主トレも一緒に行う師匠の松山竜平の姿が重なるため、将来的には松山の後釜のような立場に育っていくことが理想となりそうです。
45 桒原樹
ここ最近の高卒内野手の大量加入を受けて、次代のSS候補と期待されたのも過去のものとなり、代打中心と出場機会は大幅に減少してしまいました。
そんな中でも打撃成績は、BB/K1.40とアプローチの大幅改善を受けて自己最高の打率.348/OPS.890を記録し、一軍初出場も記録する記念の一年となったように思います。
様々なポジションを守り、UTとして期待されているような様子ですが、その割に守備力は決して高くなく、打撃でもこれといった特徴がないのが現状です。
ここから一軍に定着していくには、今年のようにハイアベレージ+好アプローチで突き抜けながら、長打力や元来の武器である足を磨いてそこに活路を見出していくかになっていくでしょう。
兎にも角にも、2021年はプロの舞台で生き残りを賭けた勝負の年になってくるはずです。
51 小園海斗
一軍の正SSの座の奪取も期待されて始まった1年でしたが、終わってみれば一軍出場は2試合のみと不本意なシーズンに終わってしまいました。
しかし、8月まで打率1割台と不振に苦しんでいたところから、9月以降の猛チャージでリーグ2位の打率.305を記録するところまで上げてきたのは、評価に値するのではないでしょうか。
ここまで打率を上げられたのは、兎に角ブレを減らしてコンタクトに意識を寄せたアプローチにあり、K%は前年から半減以下とコンタクト力は目覚ましく向上し、加えて盗塁成功率44.4%だった前年から64.7%まで高めるなど、盗塁技術も向上しました。
2021年は、ここに前年OP戦~フェニックスリーグで15本塁打を記録した、SSとしては指折りの長打力が加わってくれば、田中広輔超えも夢ではないでしょう。
54 韮澤雄也
U18世界大会では打率.345をマークしベストナインに選出されるなど、高卒ルーキーらしからぬ高い対応力が持ち味の選手で、実際ルーキーイヤーの昨年のK%は12.7%と大きく平均を下回る数値を残し、評判にたがわぬ能力を見せつけました。
その一方で、打球方向が左に偏っており、ISOは.046と長打も少なく、メインポジションとなった2Bでの守備得点もマイナスと課題が非常に多く出ました。
対応力は高いながら全体的な特徴のなさが、以前広島に所属した庄司隼人と被る部分があるため、韮澤といえば「これ」といった代名詞になるものを見つけたいところです。
56 中神拓都
小園海斗、林晃汰、羽月隆太郎と同期入団も、2年目の昨年も成績を伸ばすことができず、上記3名と比べ少し伸び悩んでいる様子が見て取れます。
内野全ポジションをこなせるようにUT性は高いものの、肝心の打力が前年から伸び悩み、これといった特徴のない打撃成績となってしまっています。
打球方向は各方向満遍なく、ナゴヤ球場の逆方向に放り込めるパワーは魅力的ですが、現時点ではそれが成績に反映されてきていません。
前年から三振を大幅に減らしたように、コンタクト力は向上を見せているため、あとは力強さが出てくれば、広角打法がより生かされて打撃成績も向上するのではないかと思います。
69 羽月隆太郎
一軍デビュー戦で2安打3打点を記録しお立ち台に上がるなど、飛躍の一年となりましたが、二軍でも打率.349と昨年以上のハイアベレージを残し、その成長ぶりを感じさせる成績を残しました。
打球方向がレフト方向に偏っていることから分かるように、一塁から距離のある逆方向に打球を打ち込む、持ち味の俊足を生かす打撃によって打率を稼ぐことに成功したようです。
ただこの手の打撃は、シフトや配球によってしっかり対策されると機能しなくなる側面もあり、時には思い切り引っ張って長打も打てるような姿を見せなければ、選手としての成長は見込めないように思います。
本人もそれを自覚してか、近本光司を目標に掲げてより長打力を求めているようで、僅か4長打に終わった昨年からそれだけ長打を増やせるかが、一軍で活躍するカギになるのは間違いないでしょう。
96 メヒア
開幕直前の練習試合で5本塁打15打点と大爆発を見せましたが、シーズンではさっぱりの成績に終わり、過去3年無双し続けていた二軍での成績も低水準なものに終わってしまいました。
メヒアのような大砲タイプの選手は、三振が増えようがその分長打の数を増やせば問題ないですし、前年までのメヒアはそのようなアプローチでしたが、昨年はK%が僅か9.5%と大砲タイプにしてはバットに当たりすぎています。
その結果、大きく長打力が低下してしまい、260打席で21本塁打放ったのが、74打席で1本塁打とその魅力が完全に消し飛んでしまいました。
2021年は同タイプのクロンが加入し、正念場のシーズンとなりますが、まずは一昨年までの長打力を取り戻さなければ話になりませんし、コンタクトとパワーのバランスを掴んでほしいところです。
37 野間峻祥
大盛穂や宇草孔基ら若手の台頭もあり、一軍での出番はめっきり減ってしまいましたが、二軍ではOPS.937と格の違いを見せつける成績を残しました。
一軍ではISOが.000と一本も長打が出ない寂しい結果に終わってしまいましたが、二軍ではISO.196をマークしており、本塁打は0本ながら二塁打や三塁打といった外野の間を破っていく長打が多いのが特徴的です。
野間の完成形の打撃スタイルは、外野の間を破る長打を量産していく「ギャップヒッター」でしょうし、一軍でもただ当てにいくのではなく、もっと長打を志向してもよいのではないかと思います。
また、守備得点はマイナスを記録しており、アピールしなければならない守備面も現時点では足枷となってしまっているので、この辺りも何かしらの改善が必要となってくるでしょう。
38 宇草孔基
ルーキーながら打率.281は高水準で、wRAAやwSBはプラスの数値を示すなど二軍ではまずまずの活躍を見せ、一軍でも1番打者を任されて一定の活躍を見せるなど、打撃面や走塁面では非凡なものを示せたのではないでしょうか。
やはり課題はスローイングに代表される守備面で、守備得点も案の定マイナスを記録してしまっているため、何かしらの改善は必須でしょう。
打撃面でも、パワーに対する評価も高かったものの、年間で2本塁打/ISOは平均以下の.095と決してそれが生かされたとは言えない成績に終わっています。
GO/AOが2.00とゴロ性の打球が非常に多くなっているため、もう少し打球に角度を付けられれば、長打もより増えてくるはずです。
その他にも、左投手相手だと右投手相手時よりOPSが.100以上低下したりと課題は多いですが、早打ち気味のアプローチ/俊足/一定以上のアベレージ能力と切り込み隊長向きの性質を示しており、長打力が高まれば一軍の1番打者に本格的に定着してもおかしくないと思います。
49 正隨優弥
一軍出場はなく、二軍でもOPS.609と苦しんだルーキーイヤーから一転、一軍では初本塁打も記録し、二軍でも100打席以上の選手ではチームトップのOPS.804を残すなど飛躍の一年となりました。
185打席で2本塁打という成績は、一発長打を期待される選手としては残念なものですが、しっかり打つべきボールを絞ってスイングを行うアプローチを見せることで、打率は.208から.295まで向上させ、BB/Kも0.96と好アプローチが光ります。
一発長打という点についても、フェニックスリーグでチームトップの3本塁打を放つ活躍を見せており、特に心配はいらなそうです。
守備走塁については平均的で、左投手に強いという特徴を見るに、かつての下水流昴の姿が重なる部分も大きく、2021年は鈴木誠也や長野久義に次ぐ右の外野手として大きく期待したい打者です。
50 高橋大樹
シーズン開幕前の対外試合では、4本塁打/OPS.958と好成績を収めましたが、結局一軍定着は今年もならず、二軍成績もOPS.800前後を記録した過去2年からは落とすものとなってしまいました。
9月中旬までに5本塁打を放ち、リーグトップを争っていたもののそこから失速し、打撃面でさしたる成績は残せず、その他の選手と差別化を図りたい守備面もイマイチなものに終わってしまいました。
この手の打者が、一軍定着するには特に欠かせないのが左投手攻略ですが、右投手比で.255も下回るOPS.506に止まっているようでは、一軍定着も厳しかったとみなされても仕方ないでしょう。
何度かあったチャンスも、自身の故障等もあって逃すことが続いており、2021年結果を残せなければ、いくらドラフト1位とは言っても今後の身の振り方を考えなければならないかもしれません。
59 大盛穂
二軍では開幕から好調を維持し、7月に一軍登録されて以降は一度も離脱することなくシーズンを駆け抜け、まさに飛躍の一年を過ごしました。
二軍成績を振り返ると、打席数は少ないながらBB%を前年の3.7%から7.4%まで伸ばしたことや、センター返しに徹したような打球傾向が打撃面の成長を呼び込んだのでしょう。
また一軍ではwSB-0.2、CFのUZRは-2.9でしたが、二軍では盗塁失敗0でwSBは1.3、CFの守備得点は9.0と非常に高い成績を残せていることから、守備走塁面において高い素養があるのは間違いないため、これをどれだけ一軍レベルまで引き上げられるかが課題となりそうです。
60 永井敦士
左手有鈎骨の骨折による離脱もあり、前年の190打席から60打席へと打席数は減少し、成績もかなり控えめなものに終わってしまいました。
少ない出場機会ながら守備成績はプラスでしたが、打撃面は骨折の影響もあってか前年からほぼ全ての成績が低下し、特筆すべき点も特にない寂しい成績となっています。
フェニックスリーグでは、遅ればせながらシーズン1号本塁打を放ったものの、見せ場はそこだけで打率.222/BB%2.2/K%19.6と、こちらもシーズンと大して変化のない成績となりました。
右打ちの外野手の数は多くなく、鈴木誠也の後釜を探している状況だけに、ここでアピールできれば出場機会も増えるでしょうから、まずは外野手として最低限の打力までは引き上げていきたいところです。
124 木下元秀
高卒ルーキーの育成選手ながら、本塁打の出にくい環境にあるウエスタンリーグで7本塁打を放ち、一時は本塁打王争いに食い込む活躍を見せたのが、非常に印象的でした。
打率.180/OPS.547/wRAA-11.2は決して好成績と言えませんが、ボールを思い切り引っ張って長打にする打撃は力強く、ISO.143は高卒ルーキーだと9本塁打を放った阪神・井上広大の.165に迫る成績で、この長打力は非常に魅力的です。
また、投手の左右で大きな成績の変化はなく、高校2年生まで投手を務めていた割には、守備得点を見ても決して大きな破綻のない守備力も評価できる部分です。
三振の多さや打率の低さを見ても分かる通り、何となく打撃にまだ柔らかさが足りない印象ですが、このまま一発狙いのアプローチを貫き、他の打者とは一線を画する存在感を発揮しながら突き抜けてもらいたいと思います。
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