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2020年広島 注目野手をピックアップ

本日6/19、3か月遅れながらようやくプロ野球が開幕することとなります。

2年ぶりのリーグ制覇を目指す広島は横浜との開幕カードをこなし、そこからしばらく関東への遠征が続くこととなりますが、ひたすら6連戦が続いていく日程のため投手の疲労が溜まりやすい状況が続くことが想定されます。

そこで重要となってくるのは、投手の登板/球数管理はもちろんのこと、野手陣による援護もその一つです。
多く得点を奪ったり守備面で盛り立てることで、投手が楽に投げられる環境作りが出来るかは、中長期的にも影響を及ぼすものと推測されます。

そこで本稿では2020年広島野手陣の中で、飛躍の予兆を見せる選手や復活を目指す選手について、活躍のカギはどこにあるのか分析していきたいと思います。

1.メヒア

まずはこの開幕までの間に最も評価を高めたと言っても過言ではない、メヒアについて触れていきます。

・対外試合成績まとめ

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キャンプ中の二軍降格を味わいましたが、3/24から一軍に合流。
6/2からの練習試合では、バットを捕手側に寝かせるフォーム改造が見事にハマり、15打点を挙げる活躍で同期間での12球団打点王に輝きました。

2週間で5本塁打を量産した長打力が注目されがちですが、BB%が13.2と前年の6.4から大きく向上させており、ボールの見極めという点も大きく向上させていることが分かります。

実戦での打席を見ていると、苦手だったファストボール系を捉えられるようになり、その余裕からか徐々に変化球の見極めも向上していき、打撃に柔らかさも出てきた印象です。

松山竜平が一軍合流を果たせていない中、このメヒアがまずは5番に入ることになるでしょうが、練習試合後半のような打撃が出来れば、十二分に機能してくれることでしょう。

・活躍のポイント

①ファストボールへの対応力

昨年は一定以上のスピードのファストボールを引っ張り切ることが出来ず、差し込まれるシーンも目立ちました。
昨年の本塁打集を見ると、140㎞後半のストレートを捉えたものもありますがいずれも逆方向で、差し込まれたフライが上がるケースも珍しくありません。
実際、フライの内49.0%が逆方向に上がりながら、そのHard%は34.6%と通常時のHard%である41.4%を下回る形となっており、差し込まれるケースが多かったことが窺えます。

それが練習試合での5本塁打を確認すると、4本はファストボールを捉えたものであり、阪神の小川一平、藤川球児から放ったものはいずれも140㎞後半の球速帯のものをセンターから引っ張り方向に運べています
まだ期間的には短期ですが、ここからファストボールへの対応は劇的に向上したと言えると思います。
変化球攻めを受けて余程崩されない限りは、向上したファストボール対応は維持されるはずです。

②打球角度

メヒアというと二軍で2年連続本塁打王に輝いているように、そのパワーが魅力的な選手ですが、一軍では打球に角度が付かず、昨年のGB/FBが1.08とゴロ性の打球の方が多くなっていました。
昨年までの本塁打動画を見ても、弾丸ライナーのような軌道を描くものが散見され、打球に角度を付けるのが得意なタイプではなかったと言えましょう。

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それが今年はここまでGB/FBが0.45と、フライ性の打球が非常に増えています
フォーム改造が功を奏して、よりボールの下にバットを通せるようになったのだと推測されます。
これにより、持ち前のパワーが長打という形で打席結果に反映されやすくなりました

③ボール球への対応

またその他の大きな変化として、ボール球への対応の変化という点も挙げられます。
昨年はボール球スイング率が42.2%と非常に高く、ボール球に手を出して凡退するケースが目立ち、一軍レベルの選球眼は持ち合わせていない状態でした。

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今年のボール球スイング率を確認してみると、25.2%と17.0%も低下させており、劇的に選球眼が向上したことが分かります。
練習試合当初は変化球を見切れず、ボール球に手を出すケースも多くありましたが、オリックス戦で2本塁打放ったあたりから余裕が出てきたのか、ボール球に手を出すケースが減少し、6/7以降は20.0%まで抑えています

ですので、打席内で焦りさえなければボール球に手を出すことはなさそうです。
まずは打席内で余裕を生むためにも、開幕から一定以上の活躍を出来るかがカギとなるでしょうか。

2.堂林翔太

続いて取り上げるのが、近年低迷が続きながらも、鈴木誠也に師事した今年は少々違う姿を見せる堂林翔太です。

・対外試合成績まとめ

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対外試合当初からコンスタントに安打を量産し、チーム内50打席以上の選手では最高のOPS.994を記録するなど、一皮むけた姿を見せてくれました。
中でも毎年一軍では20%を超えていたK%が、ここまでは16.9%と自身のキャリアでも最低の数値となっています。
低めの落ちる系や外のスライダーに対応できず、あっさり三振を繰り返していた堂林の姿は、もはや過去の遺物と呼べるところまで来ているのかもしれません。

・活躍のポイント

①コンタクト力とフライ率

これまでの堂林はK%の高さから分かる通り、コンタクト力に難があり、低いコンタクト力の割には長打が出るわけでもないという中途半端な状態で、ここ数年は一軍レベルの打者とは決して言えない状態でした。

加えて、右肘が背中からはみ出すほど大きく捻るフォームのために、「割れ」の状態を作ることができず、力のない内野ゴロを量産してしまうことも多くありました。
数値で見ても、GB/FBは毎年1を大きく超えるなど、長打力を期待される割にゴロが多く打球に角度が付かない部分も課題でした。

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それが今年ここまでの数値を見ると、どちらも劇的に改善されており、コンタクト率は前年の61.6%から82.7%まで上昇しています。
これは2014年以降の堂林のキャリアでは最高値となっており、課題であったコンタクト能力に改善の様子が見て取れます。

GB/FBも1を超えており依然ゴロが多めですが、それでも前年からは格段に角度が付くようになっていますし、練習試合期間に限ればGB/FBは0.92とフライ性の打球の方が多くなっています。
この期間中に3本塁打飛び出したのも、偶然ではないということでしょう。

②捻りすぎの打撃フォーム

堂林の課題というと、2012年に球団記録の150三振を喫したように、三振の多さやボールになる変化球の見極めと言った点が挙げられるかと思います。
その温床となっていたのは、前々から指摘されていたような、左肩が捕手側に入りすぎる打撃フォームでした。

この打撃フォームにより、「割れ」の状態が作りにくくなっていたために、ボールの見極めができず変化球をあえなく空振りするケースが目立っていました。

堂林打撃フォーム

そんな状態であったのが、ここまでは右ひじが背中から見えることはなく、以前より捻りを抑えられた打撃フォームとなっていることで、以前にも増して「割れ」の状態をしっかり作れるようになり、ボール球の見極めも向上しているのではないかと考えられます。
実際ボール球スイング率は19.8%と、昨年の32.8%から大きく低下させており、数値でもその成果が出ていることが分かります。
コンタクト力上昇には、このような事実も後押ししているのです。

以上より、過去数年に渡って挙げられていた課題を、解決しつつあることが分かるかと思います。
3月の練習試合から2ヶ月以上期間が空いたにも関わらず、状態をキープできているあたり、今年の堂林は一味違う姿を見せてくれそうです。

3.ピレラ

野手ではほぼ唯一の補強となったピレラについても、ここまでの成績から活躍が見込めるか分析していきます。

・対外試合成績まとめ

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OP戦途中で死球を受けた影響で欠場した試合も数試合ありましたが、コンスタントに安打を重ね、対外試合通算では打率.308をマークしました。
ただBB%が1.2と非常に低く積極的に振っていくタイプなので、フリーに打てる1番に据えるのも手でしょうが、個人的にはメヒアの負荷を減らす意味でも5番に入り、昨年の西川龍馬のような役割を担うべきではないかと考えます。

・活躍のポイント

①ファストボールへの対応

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昨年までプレーしていたMLBのデータを見ると、ここ2年wFAがマイナスを記録するなど、ファストボールへの対応の弱さが危惧されるポイントでした。
ただここまではファストボール系に対して、山本由伸の150kmオーバーのストレートを力負けせず右中間まで運ぶなど、打率.364(33−12)と好成績を収めています。
ですので、NPBレベルのファストボールなら対応は問題ないということなのでしょう。

その他の球種も見ておくと、曲がる系も.304(23−7)と高打率を残しており、ここも特に問題ないことが分かります。
ただ唯一落ちる系は.167(12−2)で空振り率35.0%と苦戦しています。
特に低めボールゾーンの落ちる系のボールに、バットが止まらないことが多く、ここは時間をかけて慣れていくしかないのかもしれません。

②外のボールへの対応

ピレラ

ピレラのMLB成績を見ると、2017年のOPS.837という好成績から、2018年は一転して.645と不振に陥りましたが、その際に課題となっていたのが外のボールへの対応でした。(左が2017年、右が2018年)

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実戦ここまでの外のボールへの対応を見ると、ベルトから高めのゾーンは高い打撃成績を残していますが、低めは打率.000と現時点では全く対応が出来ていない状態です。
ここを追いかけだすと、他のゾーンを捉えることにも悪影響が出てきそうなので、ひとまず外のボールはベルトより高めに絞っていくのが最善なのかもしれません。

以上より、既にNPBに適応を見せつつあることが分かるかと思います。
メインで守るであろう、1B/LFとしては総合的な打力がイマイチかもしれませんが、確実に一定以上の活躍は見込めそうな予感がします。

4.田中広輔

昨年は右膝の故障もあって、大不振に陥ってしまった田中広輔は、今年復活できるのでしょうか?

・対外試合成績まとめ

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右膝の状態も良好そうで、コンスタントに出場を続けましたが、肝心の打撃成績は伸び悩み、OPS.630という成績に終わっています。
不安に思われる方も多いと思いますが、昨年激増したK%が12.8と落ち着いているあたりを見るに、そこまで心配する必要はないと思います。
シーズンに照準を合わせ、そこでは確実に結果を残してくれることでしょう。

・復活のポイント

①アプローチ面の復活

田中の復活のポイントは、何と言っても昨年故障の影響で崩壊した打撃アプローチを取り戻せるかどうかにかかっています。

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一昨年と昨年の打撃アプローチを比較すると一目瞭然ですが、コンタクト率が大幅悪化すると同時にK%も悪化し、右膝を痛めていた影響がモロに出てしまっていたことが分かります。
ですので、コンタクト力を2018年水準までに戻せるかどうかが、一つ復活のカギとなることは間違いなそうです。

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という観点から2020年ここまでの成績を見ると、K%は上述の通り12.8と2018年よりも高水準の数値となっており、コンタクト率も2018年の水準に戻っていることが確認できます。
ということから、アプローチ面は特に問題ないため、あとは引っ張り偏重になっていた打球方向が広角に散るようになれば、自然と打撃成績も伸びてくるはずです。

②脚力の復活

昨年は走塁力を示す指標であるUBRが、前年の4.8→0.5と大きく低迷しており、打撃だけでなく走塁面でも貢献することが出来ませんでした。

・6/9 一塁走者時に會澤の左飛で二塁進塁
・6/10 一塁走者時に暴投で一挙に三塁進塁
・6/14 二塁走者時にピレラの左安で本塁生還

しかし、今年ここまでは盗塁数こそ0ですが、練習試合2週目には上記のように積極的な走塁を見せており、走塁時の不安は払しょくされている状態と言えそうです。

以上より、右膝の故障が癒えた今年は、打撃/守備両面で一定水準以上の成績は収めてくれそうです。

データ参照:1.02-Essence of Baseball(https://1point02.jp/op/index.aspx)

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