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緒方カープの将来設計~野手編~

2014年オフに野村謙二郎より監督の座を引き継いで、はや5年となる緒方孝市ですが、就任初年度こそ4位という順位に終わったものの、翌年からセリーグでは巨人以外の球団では初となる3連覇を成し遂げるなど、長らく低迷の続いたチームに燦然たる栄光をもたらしました。

しかし、監督5年目を迎えた今季は、チームの真のコアであった丸佳浩の巨人への移籍や、主力選手の不振が相次いだ影響からか、前半戦は借金5の4位でターンすることとなりました。

今後も3連覇を支えた主力選手が、FA権を取得し他球団へ流出したり経年劣化を迎えたりすることは容易に想像がつき、何かしらの対策を打っていかなければならない状況でしょう。

そんな大きな変化の狭間にいる今季の緒方カープは、4連覇を目指しながらも将来設計をどのように考えているのか、について以下にて確認していこうと思います。

※成績は全て2019年前半戦終了時のもの

1.現状整理

将来設計を見ていく前に、まず各ポジションの現状を整理していきます。

内野手の現状を整理したものが表①となりますが、レギュラー格は30歳前後の年齢の脂の乗り切った選手が務めていることが分かります。

二遊間を担うタナキクはほぼフル出場を続ける一方、負担の大きい捕手だけでなく一塁手や三塁手といったコーナーポジションは、はっきりレギュラーが確立されているわけではなく、出場機会を分け合っています。

次点の選手を見ると、緒方政権中は二遊間をタナキクにほぼ委ねてきたためか、二塁手は24歳の曽根海成、遊撃手は19歳の小園海斗と一軍での実績は皆無な両名が該当しており、心許ないのが現状です。

そのためか、楽天から二遊間をこなせる三好匠をトレードで緊急補強するなど、田中広輔の急激な劣化や菊池涼介のMLB志向に伴って発生した、小園や曽根がレギュラー格に成長するまでの繋ぎの存在は、編成的にも課題と感じているようです。

続いて外野手の現状を整理したものが表②となりますが、いずれも20代中盤の年齢層で、非常に若いレギュラー陣となっています。

その次点には、西川龍馬・鈴木誠也と同級生で、一軍への適応を見せ始めた高橋大樹や、巨人から移籍してきて実績十分の長野久義が控えるような構図です。

しかし、各外野手のWARを見ると、NPBを通じてNo.1を誇る鈴木以外はマイナスの選手が多く、戦力的には非常に物足りない陣容と評されても仕方がないでしょう。

※各年度ごとの主要外野手のWAR
 2016年‥LF:エルドレッド(1.9) CF:丸佳浩(6.5) RF:鈴木誠也(7.4)
 2017年‥LF:松山竜平(3.7) CF:丸佳浩(8.6) RF:鈴木誠也(5.5)
 2018年‥LF:野間峻祥(1.1) CF:丸佳浩(7.0) RF:鈴木誠也(5.6)

2.将来設計

現状を把握したところで、将来設計はどのように行われているのかについて、以下にて検討していきます。

現所属選手を内野手と外野手に分けて、デプスを表したものが表②③となります。

内野手を見ると、30~31歳の世代に會澤翼・安部友裕・菊池・田中といった3連覇の中心を担った実力者が固まっており、この世代がチームのコアとなっていたことが分かります。

外野手を見ると、丸の移籍もあって中堅層が空洞化している問題点があるものの、25歳の世代である鈴木や西川が中心となり、若い外野陣が形成されていることで、その問題があまり明るみになっていないことが分かります。

以上より、簡単にデプスを見ていきましたが、とりわけ内野手については、チームのコアとなっていた世代が今後流出や劣化が避けられない中、次のコアとなる世代への移行を考えていかなくてはなりません

その次のコアとなる世代は、高卒3年目の捕手ながら打撃面で出色ぶりを見せつけている坂倉将吾の21歳の世代であり、小園を筆頭に二軍でも積極起用が進められている今季4名が加入した19歳の世代ではないでしょうか。

坂倉・小園はセンターラインのポジションをメインとする選手であり、センターラインのポジション自体が攻守両面で非常に差が付きやすいため、コアと呼べるほどの実力が付けば、他球団と比較し大きな強みと成り得ます。

ここに球界の中でも屈指のプロスペクトを抱えているのは、将来への明るい材料です。

しかし、まだ年齢的に若く、実力面を勘案しても、今の主力世代と次世代のコア世代との間にもう1世代噛ませて、両世代の橋渡しを行う必要があるのではないでしょうか。

実力面の追い付かないまま、見込みがあるという理由のみで選手を抜擢し起用したところで、一軍での結果を求めるあまり小手先に走り、本来その選手が持っているポテンシャルを引き出せないことが往々にしてあるように思います。

広島で言うと、かつての東出輝裕や堂林翔太なんかはその典型でしょう。

そのような事態を防ぐためにも、実力以上のものを求められる環境下に置かないことが重要になってきますし、若手をプロテクトするような存在が必要になってきます。

しかし、デプスを確認すると、橋渡しを行うべき20代中盤辺りの内野手で次世代のコアをプロテクトできそうな存在の選手が、現状いないことが分かります。

西川や堂林など期待をかけていた選手が、内野手として当初想定した通りにハマっていないという側面があるのは間違いないでしょう。

しかし、このようなデプスの穴は、緒方政権になってからの野手運用の問題もあるのではないでしょうか。

緒方政権の野手運用の特徴としては、柔軟に選手を動かすというよりは、「タナキクマル」に代表されるように、ある程度型に嵌め、選手の役割を分かりやすくすることで動きやすくさせるような点が挙げられます。

型に嵌めるということで、選手が固定されやすくなり、流動性を欠くという欠点も内包するのがこの運用の問題点ですが、田中のフルイニング出場に代表されるように、この問題点に対して、特に何もアプローチを行わなかったために、このような問題が生じているのではないでしょうか。

田中の劣化や菊池のMLB挑戦意向という、この問題へアプローチを行う絶好の機会を迎えているにも関わらず、この両者の出場割合の多さを見ても分かる通り、今だに大した取り組みを行えていません。

今後の広島を占う分岐点を迎える今こそ、三好や曽根を積極的に起用し、デプスの穴を少しでも小さくする作業に動くべきです。

4連覇がかかっている中で結果が求められるため、ある程度実力主義に走るのは仕方ないですが、チームの将来を考えたプロスペクトの積極起用も欠かしてはなりません

最後に外野手についても触れておくと、暫くは27歳の野間峻祥と25歳の世代でメインの外野陣を担っていくことになるでしょう。

ですので、内野手のように次世代への移行が差し迫っているわけではなく、まだ将来については猶予のある状況です。

将来設計としては、桒原樹のように内野の争いからこぼれた選手を外野手に回していくことで補充を行うとともに、25歳以下の世代の選手が少ないため、鈴木のMLB挑戦までにドラフト等である程度のプロスペクトを用意しておきたいところです。

3.まとめ

・現状整理
内野陣は年齢的に脂の乗り切った選手がレギュラー格だが、次点の選手に危うさを感じさせる
外野陣は25歳前後の選手で構成されており、かなり若い布陣となっているが、WARで見た時にはまだまだ実力不足で、鈴木以外強みとはなっていない
・将来設計
次世代のコアとなりそうなのは、坂倉や小園といったセンターラインのプロスペクトを抱える19〜21歳の世代
現レギュラーと次世代コアとの間にデプスの穴があり、この間を埋められる選手が不足
緒方政権での野手運用の問題点もデプスの穴を生んだ一因であるため、要改善

以上が本noteのまとめとなります。

将来設計という点では、非常に危ういことが上記より分かっていただけたと思います。

せっかく勝てるチームへと変貌を遂げ、有望な選手も多くいる中で、このままではあまり良い未来とは成り得ないように感じます。

シーズンもここから後半戦ですが、勝利のみに目を向けるのではなく、少しでも将来へ向けた投資も行ってほしいですね。

#野球 #プロ野球 #広島 #カープ #将来 #若手

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