ピレラの最適配置について考える
開幕から8試合経過し、各球団の好不調ぶりが見え始めた頃合いですが、広島は4勝3敗1分と貯金を作り出すことに成功し、まずまずのスタートを切りました。
その原動力は、防御率2.11とリーグでも随一の質の高さを見せ付ける先発陣と、三冠王を見据える鈴木誠也を筆頭に、両リーグ最多の12本塁打と破壊力を見せ付ける野手陣の力が大きいところです。
その野手陣の中でも、昨年は後半戦から西川龍馬を配置するまで固定できなかった1番に座り、コンスタントの安打を重ねるピレラの存在は、チャンスメイクの部分で大きな役割を担っていることは言うまでもないでしょう。
一方で、鈴木の後ろを打つメヒアの不振もあって、今後は鈴木が勝負を避けられるケースも増えてくるように思います。
と考えると、ピレラを5番に配置して鈴木と勝負させるのも手だと思いますが、果たしてどのようにピレラを配置するのが、広島にとって最適なのでしょうか?
以下にて検討していこうと思います。
1.ここまでの起用
まずはここまでの起用について振り返り、首脳陣の起用意図を探っていきましょう。
OP戦からの打順別の起用回数とその成績について、まとめた表が上記のようなものとなります。
OP戦では、6番に座ることもあれば2番に座ることもあり、ピレラのNPBへの適応やほかの選手の状態も見ながら打順を試行錯誤していたことが窺えます。
6月の練習試合では、当初5番候補筆頭の松山竜平の離脱を受け、西川が5番に回った場合のトライとして3番に入りましたが、最後の数試合は1番に入りそこで安打を続けて適性を見せつける形となりました。
公式戦に入ると、練習試合の結果を受けてか全て1番として起用され、7試合連続安打を記録するなど、1番打者として一定の活躍を見せていると言っても過言ではないでしょう。
打順別の打撃成績では、重圧なく振れる6番で好結果を残していますが、1番でも打率.302/OPS.762とまずまずの成績を収めています。
ただ1番起用時に四死球による出塁は皆無で、出塁率は打率と同率と出塁能力はイマイチと言えましょう。
長打力はあり、下位打線で作ったチャンスをその長打で返すような役割は果たせますが、出塁能力が低いためにチャンスメイク能力は低いといったことが読み取れます。
その他表に出ているニュース等から、ピレラに対する首脳陣の期待を読み取ると、佐々岡監督と金本知憲氏の対談記事に様々読み取れる部分があります。
>金本 打順は(1番から)田中広―菊池涼―西川―誠也―ピレラですか?>佐々岡 できれば野間を1番に固定したかったんだけどね。ピレラが外野に入るなら、(1・2番は)広輔―キクで収まるのかな…と。攻撃型にする場合は2番・ピレラもある。
このやり取りから、プレシーズンでも起用していたように2番ピレラも選択肢にあるようです。
>佐々岡 誠也の後の5番を打つ打者がポイントになる。誠也は相当にマークされる。となれば、誠也を歩かせて5番勝負というケースが出てくる。
>金本 投手の右、左にもよると思いますけどね。左腕の場合、5番に左打者がいたら誠也を歩かせて左対左勝負が濃くなる。
>佐々岡 候補は左の松山、西川あたりなんだけど、松山が3軍調整になったので…。左投手(が先発)の時はピレラの5番もある。
また、上記から場合によっては5番起用という筋も残していることが分かります。
ここまでをまとめると、起用としては当初配置打順は定まらなかったものの、1番打者としてコンスタントに安打を重ねたことから、練習試合終盤から定着。
ただ1番として四死球獲得は0と出塁能力は低く、チャンスメイク能力に課題はあると言えます。
表に出ていない起用の想定としては、2番起用や鈴木と勝負させるための5番起用もあるといったところです。
2.それぞれの打順に必要な要素
ピレラのここまでの起用を振り返っていきましたが、ここまで様々な打順で起用され、かつこれまで起用のない打順も想定されるところですが、そもそもそれぞれの打順に必要な要素とは何になるのでしょうか?
練習試合から起用の続く1番、今後の起用も想定される2番と5番という打順に求めれらるものを、整理しておこうと思います。
2-1.1番
1番いうと出塁能力の高さや俊足が最重要項目として挙がってくるでしょうが、それプラスで必要なのは一定以上の長打力やコンタクト力だと考えます。
出塁して打線の山となるクリーンアップに、いい形で繋いでいくことも確かに重要です。
ただ下位打線が作ったチャンスが巡ってくることも多いため、そこで確実に打点を稼げるような長打力やインプレーを起こすようなコンタクト力があると、よりチームの得点力の向上に繋がるはずです。
加えて一定以上の長打力があると、先頭打者本塁打という形でチームに勢いをもたらすという無形の効果を与えることも出来ます。
昨年までに西武に在籍していた秋山翔吾や、昨年の後半に1番を務めた西川はまさにこのタイプに当たります。
ピレラは出塁能力が低すぎるという点以外では、俊足で二桁本塁打は期待できる長打力や平均以上のコンタクト力はあるため、適性はあると言えます。
2-2.2番
2番というと、俊足で小技がきく打者が配置されたり、「2番最強打者論」があるように強打者が配置されたりと各チームによって様々ですが、どれだけ低くともOPS.700以上の打力は必要だと思います。
前後の打者が強力なら2番には、最低限の打力を持ち器用に何でもできる打者でも良いでしょうし、打力の高い打者がチーム内に少ない場合は、相対的に打力の高い打者を据えるのも良いといったところでしょうか。
1番打者に求めれらる能力+状況に応じた打撃が出来る器用さが求めれらるポジションでしょう。
更に右方向に打てると走者を進めやすくなるため、右打者なら広角に打てる打者、左打者ならプルヒッターが適任と言えます。
ピレラをこれに当てはめると、最低限の打力と足は持ち合わせていますが、右のプルヒッターでゴロの多い打者という点では走者の進塁にマイナスに働きそうですし、併殺も増えそうです。
こちらも悪い選択肢ではないと思いますが、バッチリ適性があるとは言えないように思います。
2-3.5番
5番は前の3番、4番にチーム内での強打者が座ることが多いため、塁上に走者を置いて回ってくるケースが多い打順です。
そのため、その走者をいかに得点に繋げる打撃が出来るかがカギとなる打順と言えると思います。
得点に繋げるためには、長打ももちろんですが前に打球を飛ばしてインプレーを起こさなければ得点にならないため、コンタクト力も求められてきます。
イメージとしては1番打者から出塁能力を落として、より長打力を増した選手が理想的と言えるように思います。
この例に当てはまる打者というと、かつて阪神で活躍した今岡誠はここに該当し、1番打者で首位打者を獲得しながら、5番打者に配置転換されると率を落としながら打点を重視し、シーズン147打点を挙げる活躍を見せました。
ピレラの打者としてのタイプを考えると、四球を選ばない打撃スタイルで本塁打を量産するタイプではありませんが、MLBで二桁本塁打を放ったこともあるように一定以上の長打力を持ち合わせており、ゴロが多くインプレーを多く起こすこともできます。
若干長打力不足感は残しますが、それ以外は5番打者としての要件は備えており、1番とともにこちらも適任なのではないでしょうか?
3.5番に配置できるのか?
ピレラは1番と5番に適任とは述べましたが、実際にピレラを今の1番から動かして5番に配置できるかは、当然チーム状況も加味しなくてはなりません。
ということで、現在のチーム状況を踏まえて5番に配置できるのかを論じていこうと思います。
3-1.現在の5番事情
練習試合で12球団トップの15打点をマークしたメヒアが、開幕から5番に座り続けています。
ただその成績はというと、OPS.511と低迷しているのもそうですが、打点はソロ本塁打による1のみで、得点圏打率は.000と5番としての役割を果たしているとは到底言えない状況です。
加えてチームトップの得点圏打席数を誇っているため、チームの得点力を落とす大きな要因となってしまっています。
>「5番のところがね…」と悩ましげな表情を浮かべ、開幕から低調な5番・メヒアのスタメン継続に含みを持たせた
6/25の試合後には、メヒアの5番起用に上記のような発言をするなど、今後は別の選手の起用も考えていることが分かります。
6/27には一軍昇格してきた松山が5番に入りましたが、好調の堂林の存在もあり、松山で終始固定する形となるかは不透明なところがあります。
3-2.代替1番の存在
ピレラを5番に据えるとなると、代替の選手を1番に据える必要があるでしょうが、ピレラの代替となる選手がいるかどうかも、ピレラの打順を動かせるかにとっては重要な要素でしょう。
その代替1番の最有力候補は、3連覇時の不動の1番打者であった田中広輔でしょう。
昨年は右膝の故障の影響で不振に陥りましたが、ここまでOPS.925と申し分のない活躍を見せています。
また打順によって打撃スタイルを変えられる選手なので、今は三振が多く四球が少ない状態ですが、そこもコンタクト寄りの打撃スタイルに変えてくるでしょう。
その他には好調の堂林翔太も選択肢の一つに挙がります。
プレシーズンでは3本塁打と一定以上の長打力を持ち、昨年は二軍で14盗塁と足を使うこともできます。
課題のコンタクト力も向上しており、三振も減っていることから、ありえなくはない選択肢のように思います。
上位打線となると負荷が重くなり大丈夫かという声もあるでしょうが、1番は上位打線の中では制約なく打てる打順なので、その心配もあまり必要ないように思います。
以上より、5番の打撃不振が顕著で、代替1番に据えられそうな選手もいるとなると、ピレラを5番に配置しても問題ないと言えそうです。
ただ1番打者としても既に機能しており、当初の構想では松山が5番だったため、松山が5番に入るケースが増えそうですが、松山もフルで出られる選手でもないため、松山がスタメンから外れる際には5番に配置すべきでしょう。
4.まとめ
・ここまでの起用
練習試合から1番としての起用は続き、好成績を収めている。
ただ四球0と出塁能力には欠け、チャンスメイク能力はイマイチ。
・打順別に必要な要素
出塁能力以外の部分では1番適性、長打力以外の部分では5番適性ありだが、どちらかといえば5番寄り。
・5番に配置できるのか
5番を打つメヒアの低調ぶり、田中、堂林という代替1番候補の存在もあるため、チーム事情的にも5番起用は十分アリ。
ここまで両リーグ2位の得点力を発揮しているとはいえ、その安打数や本塁打数の割には得点数は伸びていないという現状もあります。
そんな中、今後は鈴木が勝負されないケースの増加が予想されるため、5番打者の良し悪しが得点力に直結してくるはずです。
ですので、ここにどのようにテコ入れを行うか、佐々岡監督の決断に注目です。
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