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ビジネスありがとう

先日、TVで夕方の情報番組を見ていたら
ありがとうを連呼する女性タレントが出てきた。
「ありがとうありがとう!」
「ありがとうありがとう!」
初めて見たタレントだったのだが
そのありがとう連呼を聞いていて
ふと、夫のありがとうを思い出した。

これ、なんか似とるな。

夫はありがとうを非常によく言ってくれる。
朝ごはんを作ったらありがとう。
片付けたらありがとう。
夕ごはんを作ったらありがとう。
片付けたらありがとう。
それを私はこっそり「ありがとう大臣」と
名付けていた。

ありがとう、と言う言葉は
とても美しい言葉だと思う。
私も実際好きな言葉だ。
ありがとうを言ってくれる夫は
とてもいい人なんだと思うし、
彼なりに感謝の気持ちを表してくれているのだと思う。

しかしながら、連呼されると
なんかモヤモヤしてくるのだ。
もちろんありがとうを言わない夫より
言ってくれる夫の方が何百万倍もいいのはわかっているが、なんだかありがとうスイッチを押したような気分になるのだ。
なぜこんなにモヤモヤするのかと
考えて、ひとつの結論が出た。

夫はありがとうとは言うが、
決して私の負担を減らしてはくれない。
ごはん作ってくれてありがとう、
(明日も明後日も作ってね)
洗濯物を畳んでくれてありがとう、
その後掃除してくれてありがとう。
(手伝わないけどね)

私は子どもではないので
ある日、手伝って欲しいと言ってみた。
「オレ、保険の更新しとるんやもん」
と返事をされたが、
保険の更新は4時間もかかるんですかい。

これはビジネスありがとうではないか。
夫はありがとうと言っておいたら
とりあえず感謝の気持ちを表現しているので、
万事OKと思っているのではないか。
そんな私の考えはひねくれているのか。

ということで、
私もビジネスありがとうをしてみることにした。
旅に行っても、決して運転を代わらないことにしたのだ。
私は運転が好きではない。
その代わり、何時間かかっても文句は言わないし、
助手席で寝たりもしない。
そして帰宅後笑ってありがとうと言うのだ。
幸いにもウチの車には自動追従機能がついているので高速ではハンドルを持っていると
とりあえず前に進む。
夫の負担は軽減されるだろう。
これや。これしかないわ。

都城に行った時も(8時間)
塩尻に行った時も(渋滞で11時間)
「よく運転してくれたね。ありがとう!」
とビジネスありがとうを繰り返してみたが、
夫はたまには運転を代われとは言わなかった。
「疲れたー」とは言うが、満足そうだ。
まるでありがとうを言われるのが嬉しいみたいに。
結局私の気持ちは伝わらないままなのか。
私はさらにモヤモヤした。
これじゃまるで夫が策士ではなく、
ちょっと抜けてるいい人みたいじゃないか。
わかるけど、
わかってはいたけれど。

ありがとうじゃなくて
私を楽にしてくれーー、
という叫びは多分届きそうにない。

作戦は変更される。

(了)
















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