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秘密結社

産直市に行った。

もう前に来たのがいつか思い出せないねと
言いながら建屋の中に入り、
野菜やら果物やら豆腐やらを
見ていた時にふとある看板が目に止まった。

秘密結社◯◯

秘密結社。
なんでこんな山奥の産直市に
秘密結社があるのか。
いや、山奥だからこそ
秘密な結社ができるのか。
私の胸は高鳴った。

秘密結社はどうもパン屋のようであった。
木の棚に並べられたアルミのトレイには
チーズやら
ハムやら
クロワッサンダマンドやらの
パンが種類ごとに置かれていた。
見た目は普通のパンにしか見えないが
秘密結社なので中になにか仕込んであるのか。

「…秘密結社」
「さっきから5回秘密結社言うたぞ」

夫に指摘された。
しまった、聴こえていたのか。

「秘密結社のパン買いたい」
「明日の朝食べるか」

夫も秘密結社に興味があったのかもしれない。
秘密結社のパンを買うことが決まった。
どのパンにしようか。

秘密結社はパンだけでなく
スコーンも作っていた。
完璧な三角のスコーンは
しかしながらチーズのパンより高かった。
店主はもしかしたらパン作りよりスコーン作りの方が得意なのかもしれない。

結局私たちはミート&ポテトパンと
オレンジとチョコチップのパンを2個ずつ買った。
レジを済ませ、車に乗るまで、
私の頭の中では秘密結社がぐるぐると回っていた。「秘密結社」は私のパワーワードかもしれないとさえ思った。
一瞬で私の心を掴んだこの店名をつけた店主は
間違いなくセンスのある方だ。

翌朝、
私たちは秘密結社のパンを食べた。
昨年、徳島県鳴門市の道の駅(くるくるなると)
で買ってきたれんこんのポタージュも添えたので
月曜日の朝が楽になった。
秘密結社のパンは
店名の怪しげな印象を見事に裏切り、
優しい味だがしっかりした重さがあり、
とても丁寧に作られていて、
朝食にはもってこいのパンである。
ミート&ポテトパンにも
角切りのホクホクとしたポテトが沢山入っていた。
夫も「秘密結社なのに優しいパンやな」
と言って満足そうに食べていた。
美味しかったので
また秘密結社のパンを見つけたら
買おうと思う。

秘密結社のパンで朝食。ちょっと焦がしてしまった。


ごちそうさまでした。

(了)


















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