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夢想家

「するなと命じるのか、……ああ!!!」
やった、やってしまったのだ……。

……突拍子もなく窶れた鳩に呟いた。
「君はいいなあ。それを理由に堕ち続けられてさ。
なんて羨ましい、僕は全てが全て言い訳できないんだ。若しも僕が君に哀れんでくれって言われても、見た目だけで判断するのは良くない。本当に惨めなのはどっちだろうな。僕を唾吐くように嗤ってよ。
僕の根なんか、鳥の糞なんだよ。」
「なら昇ってみせようか。お前の思い込みを裏切ってやるよ。」
鳩は柄にもなく楯突いてきた。
すると抜山蓋世、その女々しい襤褸を羽撃かせて飛んでみせ、手負いながら大鳥のようだった。
「どういう風の吹き回しなんだ。なあ鳥よ、何処へ行くんだよ。僕を置いていくなよ。僕を濁酒から出してくれよ。君は何なんだ。なあ待てよ、待てって……。」


…………何やらゴツンと鈍い音がした。
目を覚まして見てみると、鳥を喰らう犬だった。「痛てぇな、頭割ったらどうすんだよ。お前の骨身は悪魔的だ。無理な主張を叶えようと鍛え上げやがって。俺はこんなにも非力で主張も出来ねえ。俺はお前に一寸も抵抗できねえ。俺は置き土産に糞でも出す胆力はねえよ。」
「なら鳴いてみせようか。お前の買い被りを正してやるよ。」
犬は虚誕の体を脱ぎ捨てた。
すると豈に計らむ、その錆びたる鍍金をして戦慄き、喊声は瀕する蚊虻のようだった。
「嘘だ。嘘だ………想像できぬ怪奇なる態。剛健たる王はどこへ行ったのだ。俺を置いていくなよ。俺を愚昧から救ってくれよ。お前は何なんだ。おい待て、待てって…………。」



………………天地の硲に瓜二つ。
だけれど似ても似つかない。
そこはかとなく理知的で、スノッブだとは思えない。
トンスラ頭にモジャモジャ髭、首に曲玉腰に六角。左手天秤右手鳴杖、終いに背には耿々と。
全てを統べる大王だ。
あまりに見目好い様体で、ついつい借問したくなる。
「おめえはいってえ何もんだ。悪魔か天使の化生かい。」
すると鵺が嘯いた。
「何を勘違いしているのだ。上辺がよければ畏まり、けれども杜撰な言葉は抜けきれず、見栄を張ろうと傲岸不遜。挙句の果てに見誤る。」
「では一体全体なんだ!教えやがってくれたまえ!!」
「振り返れ。その面後ろにして見ろ。よく凝視しろ。見えてきたか、なあ。」
ぼんやりと現れ、床が覆る…………………………。




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