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小児科医が子どもに関する話題を発信し続ける理由

こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。

今日は、「小児科医が子どもに関する話題を発信し続ける理由」というテーマでお話ししたいと思います。

あなたは、何か続けていることはありますか?毎週ランニングを続けているとか、友人と文通を続けているとか。そんな継続している何かがありますか?

例えば、僕は小児科医として子どもに関する話題を発信し続けています。子どもの心のこと、子どもに関わる教師の働き方のこと、子どもに関わる児童養護施設や児童相談所さんが頑張っていること、そんなことを発信し続けています。

それは、なんでだと思いますか?それは、声をあげにくい人たちの代弁者になれればと思うからです。

僕は小児科医として、色々な背景で過ごす子どもたちの支援にあたっています。その支援の過程で、学校の先生方とお話することもあれば、児童相談所の方や、市の子ども支援課の方ともお話しします。子どもを支援する事業所の方々と会議をすることもあります。

そんな風に、様々な支援者とつながる中で思うのは、子どもたちに関わる福祉や医療、教育の現場への支援あるいは理解が足りないということです。

子どもたちには、すくすく健康に育ってほしい。そのためには、子どもに接する大人が健康でなければならない。身体はもちろんのこと、心も健康でなければなりません。

でも、実際には、子どもに関わる大人の仕事現場には、人手が足りない、費用も足りない、あらゆる国からの支援が足りなさすぎる。そう思っています。だから当然、子どもへの支援も行き渡りにくいわけです。だからこそ、課題を抱える子どもたちは増えるでしょう。

例えば、児童養護施設や児童相談所の職員さんはとても一生懸命働いてくれています。家庭で親から辛い目に遭わされた子どもに、献身的に関わってくれています。心を痛めた子どもたちを回復させるのは、なかなか容易なことではありません。それは、その子の一生をかけて乗り越えていく課題になるのです。

そんな子どもへの支援で何かうまくいかないことがあると、そういった支援をしてくれている方々が責められることがあります。そもそも、子どもたちが心痛めた原因がその親にあるにも関わらず、職員さんが責められる。そんな現実があります。

例えば、いじめについてもそうです。いじめの加害者になる子どもを育てたのは家庭です。もっと言及するなら、その子の親が原因です。その親の価値観によって、人の心を傷つけてしまう子どもが育ったんです。つまり、いじめの原因を辿ると、親の関わりということになります。

そのいじめについて、学校を責めてしまう世の中があります。でも、考えてみてください。いじめの原因は、いじめっこを育てた親の関わりにあるのです。だからこそ、学校を責めても、いじめはなくなりません。親を正さなければ、いじめはなくならないんです。

でも、・・です。

その親自身も、幼少期には辛い経験をしていることも少なくありません。貧困の中で苦労をして育っていた経験。色々な機会に恵まれずに、人のことを信じられなかった少年時代あるいは少女時代が隠れていることもあるのです。子どもの頃にSOSを発信しても、SOSを受け取ってもらえなかった。そんな親御さんもいるんです。

そんなことを理解するからこそ、わかってくることがあります。それは、結局、社会の幸せを追求しようとすると、その出発点は子ども時代にあるということです。子どもの頃にどれだけ幸せを与えられるか。そのことが、様々な大人にとってとても重要。そんな幸せを感じられて育った大人だから、心の優しい子どもを育てられる。そういうことなのだと気づきます。

でも、さらにわかってくるのは、そんな風に子どもに幸せを届けようとすると、やはり戻ってくるのは、子どもたちに関わる大人の幸せ、ということです。子どもたちが笑顔になるためには、その子どもに関わる大人が笑顔でなければならない。

だから、学校の先生にも、児童養護施設や児童相談所の方々にも笑顔になってほしい。そのためには、働きやすさが欠かせないのです。

「では、子どもの支援に関わる大人が、自分たちの働きやすさを求めればいいじゃないか」、そんなことを思う人がいるかもしれません。でも、その支援者自身が声を上げやすいかというと、そうではないのです。「自分たちはこんなに苦労をしているんだ、だから働き方を是正しろ!」とはなかなか言えないものです。言っても、なかなか耳を傾けてくれる社会がない。

だから、本人たちに変わって社会に訴えたい、と思ってこんな風に発信しています。子どもに関わる大人の働き方改革を求めて、小児科医である僕が子どもに関する話題を発信し続けている理由には、そんなわけがあります。これまで見て見ぬふりをしてきた社会に対して、強く訴えかけたいと思ってしゃべっています。

学校の先生、児童養護施設や児童相談所の職員さんの中には、疲れ果てて道半ばで退職してしまう方も少なくありません。子どもの支援者が、結局子どもの支援現場から去っていくのです。それって、支援者にとって良いことなんでしょうか?もっというと、それって、子どもにとっても良いことなんでしょうか?

どうにか現状を変えたい。そんな思いで、今日もこんな風にしゃべっています。

今日は「小児科医が子どもに関する話題を発信し続ける理由」というテーマでお話ししました。

だいじょうぶ、
まあ、なんとかなりますよ。

湯浅正太
小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて:https://yukurite.jp/)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。

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