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OLIVE DELLA YUKI 搾油所でのはなし

久々に、搾油所に顔を出した。

事務員のSimonettaは、いつも笑顔で迎えてくれる。
まるで、家族みたいに。
優しいけれど、きっちりしている。
世話役フランコも、そんな彼女のことを高く評価している。

「それはしていいけど、これはダメ。」

働く人たちの、手を煩わせたくなくて、
「ボトル詰めなら、私がやりましょうか?」と言ったら、
はっきりと断られた。
「ボトル詰めする環境が整っていないでしょ?」

オリーブオイルをボトル詰めする時には、
その部屋の温度や、衛生状態など、いろいろと細かい規定がある。
いい加減なように感じるイタリアだけれど、
食品関係の規定は細かい。
だから、彼女に聞くと、ハッキリとした意見を述べてくれる。
それがとても、ありがたい。
彼女の、オリーブオイル熱はかなり高いと思った。

「どう?売れ行きは。」

Simonettaが聞いてきた。

前例もないから、比較できないのだけれど、ありがたいことに順調に進んでいる…
と、私は思っている。
あまり考えたことがなかったけれど、他はどうなのだろう。
Simonettaに聞いてみた。

「今年は、どんな感じですか?」

「そうねぇ、最近、ちょっと落ち着いたかしら。」

大手のワイナリーやら、地元のレストランやら、
大きな単位で購入していくお客さんを抱えているから、
私とは全然スケールが違うのだけど、
多くの人を相手にすれば、いろいろな人がいる。

「1リットルあたり3ユーロで売ってくれ!っていう人もいるのよ。」

1リットルあたり3ユーロなんて、完全に原価割れしている。
トスカーナに限っては、今年は特に収穫量が少ない年であるから、
収穫隊に支払う金額だけで、とうに1リットルあたり5ユーロを超えている。
あまりにも少なくて、「収穫量での換算ではなく、時給で換算してほしい」と言われたほどである。
割に合わないから、収穫すらやめてしまった所もあるのだと聞いた。
そんな年の、貴重なオリーブオイルを1リットルあたり3ユーロだなんて。

「きっとね、売れなかった過去のものと合わせて売ろうと思う人もいると思うの。でもね、売るために、なんでも良くなってしまったら、搾油所の信頼も、トスカーナのオリーブオイルへの信用も落とすことになると思うの。絶対にしてはいけないことだと思うわ。」

賛成!
Simonettaに賛成。

トスカーナのオリーブオイルは、イタリアの中で生産されるオリーブオイルの中でも、値段が高い。
限られている収穫時期、機械では収穫できない立地条件、育つオリーブの種類、
いろいろな条件が備わって、その値段が決まってくるけれど、
その分、美味しいのも確か。

高いには、高いなりの理由がある。

Simonettaとのおしゃべりで、
ふと、そんな事を思うのだった。

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