トスカーナ・オリーブの夢 スタートライン
11月の終わり。
相変わらず雨が続いていて、時折、晴れ間が見えると、嬉しい気持ちになる。
ドタバタのラベル作りを終えて、すぐに搾油所へと向かった。
同時進行で、支払いリンクの設定やら、販売用リストの作成やら、
コンピューターに向かうことが多かった日々。
たまにゆっくりと、外の空気を吸うのは気持ちよかった。
搾油所に着くと、みんな笑顔で迎えてくれた。
どの人も、今年出会ったばかりだというのに、
まるで家族のように出迎えてくれる。
イタリアの田舎町が良いなと、こういう時、いつも思う。
日本へ送ることも想定して、ボトルは全て缶。
気圧や衝撃に強そうな、筒型の缶を選んだ。
搾油所へ向かう朝に出来上がったラベルも、一緒に持って行き、
ひと通りの説明をする。
「ねぇ、これ素敵ね。」
言葉に長けない事を、さすがに20年もイタリアに居て、自覚はしているから、
こんな感じにしてほしいと、サンプルも持っていったのを見て、
事務員のお姉さんが、そう言ってくれた。
「本当は、デザインもプロの方にお願いしたかったのだけど、どこに頼んで良いのかわからなくて、試行錯誤で作ったんです。」
褒められて、嬉しくて、つい興奮気味に喋る時、
多分、絶対、イタリア人には何を私が言っているのか伝わらないはずなのに、
笑顔でウンウンと頷いてくれる。
トスカーナには、いろんな搾油所があるけれど、
ココと出会えて良かった…と改めて思う。
思えば、全てが、人との繋がりで、
オリーブ畑と出会うことができたのも、不動産屋のステファノのおかげであり、
搾油所との縁は、オリーブ畑にある2件分のアパートの改修工事担当であるフランコのおかげであり、
そうして、右も左もわからずに始めたオリーブオイル作りに繋がっている。
昨年には思いもしなかったこと。
トスカーナでのオリーブオイルづくりの夢は、
この不思議な縁の中で、
現実化していることに驚きを隠せないけれど、
今私は、ようやくスタートラインに立っている。
「よーし。これからだ!」
雨が続く最中の、久しぶりの青空に向かって、
心の中で呟いてみる。
いろいろな人との出会いで、ここまで辿り着き、
でも、ここからが始まりである。
OLIVE DELLA YUKI
初めてのオリーブオイルが旅立とうとしている。
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