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美味しいことと楽しいこと
昨年の今頃は、まだまだ良かった。
ロックダウン続行中のイタリアでは、もうかなり長いこと、外食の可能性が奪われている。
地域によって、レッド、オレンジ、イエローゾーンと色分けされて、一番緩和されているイエローゾーンのフィレンツェですら、外食は基本夕方6時まで。
通常、夜8時以降に夕食をとる習慣があるイタリアとしては、あまり実質的ではない時間帯である。
だから、多分、ランチを楽しむことに徹するのであろう。
イタリア人の食との関係は切っても切れない。
バールなんかで、一杯のカフェを楽しみながら、夢中になる話といえば、サッカーか食べ物のことである。
男性、女性に関わらず、その人ならではのレシピ自慢なんかを小耳に挟んだ事もある。
それぞれにこだわりがあり、それぞれが、自分の言うレシピが一番だと思っているけれど、聞いているこちらは、ただただ楽しい。
食べる事ももちろん、大好きだから、これを食べるならこの店がいいとか、よく知っている。
以前、乗り合わせたタクシーのオッちゃんと美味しいビステッカのお店談義になった事もある。
そんなことさえ、今は、懐かしく感じる。
楽しいことには目がないイタリア人は、働きながらも次のバカンスのことを考えているし、どうせ行くのなら、美味しいところが良いと思っている。
そんなイタリア人が、ロックダウンになって、買い漁ったのは、小麦粉とイースト菌。
外に出られず、家にいなきゃいけないのならと、皆が皆、目指せピザ職人の如く、せっせ、せっせと粉を捏ねている。
時々、香ばしいピザの香りがどこからか漂ってきて、ああ、いいなぁと思い、自分もピザを作ってみたりしたけれど、なかなかうまくはいかないもので、やっぱり、外に食べに行きたいなとか思う。
オンラインで飲み会とかもあるけれど、慣れ親しんだ人と、美味しいレストランで食事をする楽しさは、きっと足元にも及ばないだろうと思う。
あぁ、早く、自由に外に出られる日が来ますように…
今はただ、そう願うしかない。
美味しいことと楽しいこと
なんだか、イタリア人の原点みたいだと思う。
そして、私にとっても、元気の素かと思ったりする。
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