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金額と価値

11月6日。
今年の搾りたてエキストラヴァージンオリーブオイルの販売を開始した。
いつもより、遅めの収穫だったから、オリーブオイルを搾り取ってから販売まで1週間に満たないという最短の販売開始だった。

自然から出来るオリーブオイルは、当たり前だけど、機械で生産するようにはいかない。
「いつ頃、できますか?」の問いに、きちんと応えられなかったのには、そういう事情がある。
だから、毎年、その味も微妙に違うし、出来る量も変わってくる。当然ながら、値段も変わる。
幸いなことに、今年は、昨年より収穫率はアップしたけれど、かかった人件費は半端なかった。どこもかしこも、値上げ、値上げだから。
「好きでないとやってられない仕事だね。」周りの人はそう言う。要は、儲からない仕事。

イタリアで、毎年、どれだけの畑が放置されつつあるのか分からない。
自然に恵まれ、市場に出ているものより、はるかに美味しいものができても、それが放置されてしまう現実。お金にならなければ、手をつける人など、いないに等しい。
勿体無いなぁと思ってしまう。私から見たら、「宝の山」なのに。
やっぱり、好きでないと、やってられない仕事なのかもしれない。

最近のユーロ高はすごく、日に日に上がっていく。
販売を開始してから、その返答が真っ二つに別れた。
「ユーロが高くて…今年は諦めます。」
いただいたメールを読んでいて、切なくなった。

お金の価値って、なんだろうと思う時がある。
数字として見ていたら、沢山ある方が良いと思われているその価値が、決して満足度に比例しているとは思わないと、私は思っている。
例えば、食事に行って、3000円を使うのと、5000円かかるのとでは、数字だけでいったら3000円の方がお得なことは確か。でも、3000円で、冷凍食品を温めたような味で提供されるのと、きちんと下ごしらえをした新鮮な食材で料理された5000円と、どちらが本当に安いと言えるのだろうか。

お金の価値は、時間や質と掛け合わせることによって、その答えが変わってくると思う。

どれもこれも値上げしている中、それでも「今年も待っていました。」と、早速注文してくれる方々がいるということ。
ありがたく思い、なにか、自分が認められたような気がして、嬉しくもある。

金額ではない、なにか。
お金も大事だけど、その「なにか」も大事なんじゃないかと、改めて思う。

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