トスカーナ・オリーブの夢 「OLIVE DELLA YUKI」の誕生
8月半ば。
少しずつオリーブは、その実を膨らませているけれど、まだまだ青い。
オリーブオイルに貼り付けるラベルを作ろうと、必要な要項を読み解いていく。
そういえば、ロゴも決めていなければ、ホームページに使うドメインも取っていない。
どんなロゴにしようか、
どんな名前にしようか。
スケッチブックには、撮った写真から描き起こしたオリーブの絵が乱雑に並ぶ。
こんな感じかな、
あんな感じかな。
思いはすれど、それを現実化させることも出来ず、時だけが流れていった。
独立申請した時の個人事業名は、本名になっているから、会社名には自分の名前が入ってくるけれど、自分の姓名すべてを前面に表記するのは、どうも気がひける。
ラベル表記の要項を読んでいたら、土地名を記すことが出来ないことを知った。
例えば、オリーブ畑があるのは、Gavorrano だから、それを表記しようと思ったら、販売責任者の住所以外は書き記すことが出来ない。
もちろん、Toscana というのもダメ。
それというのも、エキストラバージンオリーブオイルの格付けとして、トスカーナI.G.P や D.O.P という、品質保証の取れた製品とハッキリ区分けするためで、紛らわしいものは、コントロールが入った時のチェック項目となる。
ラベル表記が正しくなければ、もちろんだけど、販売することが出来ない。
普段、いい加減なようなイタリアだけれど、食品に関する決め事は、日本より厳しいような気がした。
事業内容がオリーブの栽培だから、私のオリーブ。
「YUKIのオリーブ」というのは、どうだろう。
イタリア人から言わせれば、YUKIって誰?っていう話だけれども、個人名を挙げている事業主は、案外、多い。
長いこと、フィレンツェの中央市場で働いていた私は、周りのイタリア人から
「La YUKI」と呼ばれていた。
イタリア語の文法的にいえば、「La」はつかないのだけれど、フィレンツェ辺りの人たちは、私の名前に「La」をつけて呼んでいた。
「あぁ、それ、トスカーナの方言なんだよね。」
心の友が教えてくれた。
「Olive della Yuki」ってのは、どうだろう。
「La YUKI のオリーブ」
私が手掛けるオリーブを「La」を使うことで、トスカーナを表す。
「OTA」が存在するトスカーナでも、さすがに、「YUKI」は存在しないだろう。
試しに、ドメインを取得する事にしてみた。
当たり前だけど、あっさりと取得出来た。
「OLIVE DELLA YUKI」
新しい称号の誕生である。
オリーブオイルを販売するためのイメージネームが、その時、生まれたのである。
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