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きしむばかりののこのおと

ひきノコひけば

ぎいぎいぎい

汗にまみれて

ぎいぎいぎい

杉の木、松の木、檜の木

倒れるまで引いたとて

倒れなければ

役立たず。

倒れた者も

役立たず。

つらいかなしは言うても無意味。

いきるいきるでぎいぎいぎい。

きしむ音がぎいぎいぎい。

祭囃子はどんひゃらどん

遠くに聞こえる

子守唄。

どうせそこに向かえても、

迎えるものはありはせぬ。

きしむ音が体から

聞こえてきたら

その日が終わり。

谷に落とそか、山に捨てよか

それとも海に流そうか。

きしむ音が聞こえたら

すれ違うのは人と人。

大きな木を倒さねば、

今日も明日も生きられぬ。

大きな木を倒したら、

ぐいぐいぐいと引いて行く。

生きることはきしむこと。

きしんできしんで、すりへって

さすってさすってやり過ごす。

今日が終われば明日が来ると

今日がずっと終わらずに

さするときだけ、

すらすらすら。

夜が明けないことだけが

ほんとはのぞみ。


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