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香港、サイバーパンクを求めて

子供のころから映画が大好きだ。
そんな私が幼少の頃に何故かどハマりして何度も繰り返し見た映画がある。

「JM」だ。

キアヌ・リーブスと北野武が近未来を舞台にドンパチやる内容なのだが、正直そんなメジャーな映画ではないし、どういう経緯でその映画を知ったのかは全くの謎なのだが、とにかく背景の世界観にすっかり魅了されてしまい民放やWOWOWで放送がある度に幼い私はテレビに齧り付いていた。

しかしこれまた謎な事にそんなにどハマりしていたにも関わらず、何故か大人になった頃にはその部分の記憶がまるごとスッポリと抜け落ちていて、20年以上をそのまま過ごしていた。
まるで映画のように丸ごとその部分の記憶を持ち去られていたような不思議な気分である。
※映画の詳細はこちらから


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因みに「JM」とほぼ同時期の作品であるアニメ映画「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」に関しては、「JM」と同様にどハマりしたものの記憶を維持し続けその後発表される関連作品も全てどっぷりと堪能していたので私の「サイバーパンクが好き」という気持ちはどうやら上書き保存というシステムが作用していたのかもしれない。
(ブレードランナーに関しては成人後に手を出した作品なので記憶の欠損には至らなかった模様)

ところがある日、急に、それこそ本当に突然仕事中に「JMという映画が好きだった」ということをハッキリと思い出したのだ。脳に電流が走ったような衝撃だった。

丁度「冬に3連休が取れるぞ、香港でも行くか〜」なんて考えていたところに急にテレビに噛り付いていた記憶が舞い戻ってきたので完全に旅のコンセプトが「サイバーパンクを求める」で決定された訳である。


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だがいざ訪れてみると、実際の香港は私が幼少の頃に憧れていた様子からはすっかり様変わりし洗練されたオシャレシティになっていた。


そういや街のすぐ上、ギリギリの高度で飛行機が飛んだりしなくなったんだもんなあ、九龍城ももう無いし…。なんて思いながら街をうろついていると
急にまばゆいネオン、新旧入り混じる建物、混沌とした空間が洗練された街の一角にヒョッコリ現れたりするので面食らってしまった。
表裏一体、と言えばいいのだろうか。


旺角。尖沙咀からそう遠くはないこの地区は夜になると色とりどりのネオンが輝き始める。
だが、何かが違う。雰囲気、色彩。微妙に思い描いていたサイバーパンクとは何かが違っていた。
電飾もLED化が進み、なんだか妙に清潔感が溢れている。漢字のフォントも味気ないゴシック体が多い。
聞けば、近代化が進むにつれ年々電飾の数も減少傾向にあるとのこと。

そんな中からこれは、と思う風景を部分的に切り取る行為を繰り返していくにつれ一つの真実にたどり着いた。

「サイバーパンクの世界は自分の脳内に存在する」

結局のところ、香港の街並みも「限りなくサイバーパンクに近い現実世界」
な訳であって100%ではない。残りの部分は脳で補完をすることで初めて完成するのではなかろうか。
写真で表現するのであれば街並みの雰囲気で6割、残りの4割は撮影時の切り取り方と設定、それに後処理での雰囲気作りでようやく完成されるのだ。

考えなしにシャッターを切ると普通の観光写真が出来上がってくる感がある。

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そこに気づくと俄然やる気が出るもので、頭の中には撮影の構想がみるみると浮かび、ようやくエンジンがかかった私は香港の夜に急ぎ足で溶けていったのであった。


〜続く〜

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