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【第2章】ネットワーク⑦:メルティングポットの先へ

移民の国アメリカで、一度は耳にする「メルティングポット」という言葉。日本語では「人種のるつぼ」とも言います。

色々な民族が一つの国に集まり、溶け合って、いわゆる「アメリカ人」が形成されるという考え方ですね。


メルティングポット神話

「いずれ私も、アメリカ生活になじんできたら、メルティングポットの一部になるんだろう」と思っている方がいれば、今から声を大にしてお伝えしておきます。

「違う人種同士が溶け合う」という意味の「メルティング」を、あなたが
アメリカで体感することは、十中八九ないでしょう。

アメリカの街並みを見てもわかるかと思いますが、ヒスパニック系の住人が住む地域には、スペイン語の看板を大きく掲げたメキシコ料理レストランが立ち並んでいたり、アジア系の住人が集まる地域にはアジア系スーパーマーケットが軒を連ねていたりなど、はっきりと民族や人種に応じた、別々のコミュニティーができ上がっています。そしてアジア圏内でも、韓国・ベトナム・中華系などと、更に細分化されたコミュニティーがあるほどです。

私は本業の傍らで、テキサス大学ダラス校(The University of Texas at Dallas: 通称UTD)で客員教授として教鞭を取っているのですが、学生達のグループを見ても、インド系はインド系、中東系は中東系、アジア系はアジア系で固まる傾向にあるのが目に見て取れます。お互いを嫌って避けているというよりも、同じ人種でつるんでいた方が、楽で居心地がいいからのようです。

先日、ダラスにある、私の行きつけの美容院(日本人の美容師さんです)に行ったときのことです。どんな人種の方が来店することが多いか尋ねたところ、アジア系のお客様が一番多いとのこと。やはりアジア人同士、髪の質やヘアスタイルのトレンドなどが似ているからなんでしょうね、とのことでした。確かに、白人さんや黒人さんの髪質は、アジア人と全然違いますよね。

ある私の友人(=日本人女性)は、旦那さんが黒人さん。よって娘さんは、日本人と黒人のハーフなのですが、娘さんの髪質は、旦那さん寄りのアフロチックな感じ。でも娘さん本人は、アジア人女性特有のサラサラでストレートな黒髪に憧れているそう。そのため、どこの美容院に娘を連れていくのがいいのかいつも悩む、って言ってました。

●メルティングポットからサラダボウルへ

えーと、ヘアスタイルの話に脱線してしまったので、メルティングポットへと話を戻しましょう。

どうやら「溶け合う」という意味の「メルティング」は幻想のようだという意見が主流となった今では、「メルティングポット」という言葉はほとんど使われず、混ぜても溶け合うことのない「サラダボウル」という表現が主流になっています。

レタスはレタスのまま、トマトはトマトのままだけれど、一緒に1つのボウルでまとまってサラダを形成しているという考え方ですね。

個々がそれぞれのままで共存する「サラダボウル」


●サラダボウルからステンドグラスへ

そして、サラダボウルから更に一歩踏み込んだ、最近の進化系が「ステンドグラス」だそうです。

サラダボウルとの大きな違いは、全体が一つの大きな絵を創り上げているという点です。ステンドグラスでは、各ピースがそれぞれ独自の色や形を持っていると同時に、それらが集まることによってステキな作品を描いている点が表現されています。

最近のトレンドワードでもある、ダイバーシティー(多様性)を美しく表現していますね。


色々なピースが合わさって1つの美しい作品となるステンドグラス


私はこのステンドグラスという表現が大好きです。

確かに、様々な人種や民族や文化が完全に溶け合って混じり合うことはないかもしれない。でも何かのご縁で、同じ世界で一緒に生きていくことになった仲間なのだから、この多様性を生かして支え合いながら、一人では到底なし得ない、素晴らしい作品を共創していこうという考え方にとても共感できます。

私が勤務する会社の部署でも、実に様々な人種や国籍の社員達が共に働いています。

以前、社内イベントで「あなたの出身地や出身国にまつわる家庭料理を手作りで持ってきてください」という持ち寄りランチパーティーをしたところ、30名弱の部署で、なんとアメリカ、メキシコ、ベネズエラ、ボリビア、フィリピン、日本、中国、台湾、イスラエル、アイルランド、ジンバブエ、南アフリカ、といった、そうそうたるラインナップのお料理が。こんなに様々な国の家庭料理が一気に食べられるバイキングなんて、そうそうありません。

アメリカを代表するデザートの自家製バナナプディング
(私は作ってません。食べただけ(笑))

社員一人一人が思い思いに各国の食事を楽しみながら、部署のチーム精神を共に作り上げるという、素晴らしいイベントとなりました。

振り返って考えると、これもステンドグラスだなと思います。

ホント、そうですね。

一人でも多くのグロ女が日本から世界に羽ばたき、キラキラと美しい光を輝かせる美しいステンドグラスのピースの1つとなってくれたら、こんなに嬉しいことはありません。


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